大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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グランドファーザー&マザー

第483話、祖父母たちの村巡り

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 宴会翌日。
 俺は、おじい様と一緒に村の鍛冶場へやってきた。
 壊れたおじい様の籠手をラードバンさんに見せると、だいぶ呆れていた。

「こいつはダマスカス鋼で作られたやつだな。ふむ……装飾デザインを見ると、二百年前くらいに流行した模様じゃな。それに、この彫りの深さと造形……こいつはドワーフじゃない。エルダードワーフの仕事じゃ」
「え、そんなこともわかるんですか?」
「当然じゃ。だが、だいぶ酷使されちょる」
「がっはっは! まぁ手入れはあまりしなかったからのぉ」

 おじい様らしいな。
 ラードバンさんが籠手をテーブルに置き、小さなハンマーでコツンと叩くと、籠手は綺麗にパックリと割れてしまった。

「どうやら、ここにきて役目を果たしたようじゃな。完全な寿命じゃ……よくやったわい」
「…………そうかい」
「新しい武具の依頼じゃな? ほれ、手を出せ。腕の長さとサイズを測る」
「おお。よろしく頼むぜ。それと……こいつの供養もな」
「うむ」

 ラードバンさんはおじい様の腕の長さやサイズを測る。
 そして、テーブルに羊皮紙を広げ、図面を書き始めた。

「素材はオリハルコン製にしてやる。ダマスカス鋼の何倍も強い金属じゃ。お前さんの腕力にも十分耐えられる。それと、拳の大きさでわかったが、お前さんの拳は鈍器のような重さがある。少し重量を増すだけで攻撃力も相当上がるはずじゃ。どうする?」
「任せる。あんたはワシが見た中でも最強最高の職人のようじゃ。信頼しておるぞ」
「ふん。ガキめ。なまっちょろいこと言いいおって」

 おじい様をガキとは……確かに、エルダードワーフは長寿だし、俺やおじい様なんて子供みたいなモノだ。
 ラードバンさんは何の迷いもなく羊皮紙に籠手をデザインする。

「こんなもんかの。どうじゃ?」
「……あんた、最高の職人だぜ!」

 デザインされた籠手は、拳部分が少し大きくなった鈍器のような籠手だった。
 『轟拳アドゥレセンス』はエストレイヤ家の家宝。だが、こちらは実戦をより重視したデザインで、おじい様にピッタリの武器だ。

「名はお前さんが付けな。文句ねぇなら仕事を始める」
「名か。そうだな……よし決めた!! そいつの名は『岩窟拳アールマティ』だ!!」

 こうして。おじい様の新しい武器が完成した。

 ◇◇◇◇◇◇

 おじい様の武器は二日で完成した。
 ラードバンさんもノリノリで、不眠不休で仕上げたらしい。
 おじい様の拳には『岩窟拳アールマティ』が装備され、おじい様は子供のように拳を振っている。

「試し打ちしてぇ。アシュト、頼みがある」
「え、お、俺ですか!? あの、俺は殴られると死んじゃいますけど」
「馬鹿。おめぇみたいな虚弱を殴るつもりねぇよ。ここに強いのいるだろ? そいつと戦いてぇ。肌が黒い、頭にツノ生えた男たち」
「…………ああ、デーモンオーガですね」

 虚弱という言葉が地味にショックだった。
 デーモンオーガと模擬戦か。
 とりあえず、バルギルドさんたちがいる解体場へ。

「む……村長と、祖父殿か」

 ちょうど、バルギルドさんが魔獣の骨を運んでいた。
 ディアムドさん一家も揃ってる。いいタイミングだ。
 俺はおじい様を改めて紹介し、さっそくお願いしてみた。

「───ってわけで、おじい様と軽く戦って欲しいんですが……」
「頼むぜ。兄ちゃんたち、すげえ強いんだろ? ワシも疼いてのぉ」
「……オレは構わんが、手加減は苦手だ」
「いらねぇよ。手加減が必要な相手に見えるか?」

 おじい様、なんか言葉遣いが若々しくなってる気がする。
 二の腕の筋肉が盛り上がり、血管が浮いている。丸太並みに太い腕……この人、もう六十超えた人間だよな。どういう身体の構造してるんだ。
 すると、バルギルドさんの肩をディアムドさんが掴んだ。

「オレがやろう。祖父殿、いいか?」
「いいぜ。本気で来な」
「あ、あの。あまり無茶は」
「村長、下がってた方がいいです。父さん、本気ですよ」

 キリンジくんに押され、俺はその場を離れる。
 おじい様は首をコキコキ慣らし、ディアムドさんは指をバキバキ鳴らす。
 バルギルドさん、ちょっとウズウズしてる気がした。

「父さん、合図はオレが」
「任せる」
「はい。では……始め!!」

 その後、俺が見たのは……とんでもない殴り合いだったとだけ言っておこう。

 ◇◇◇◇◇◇

 その日の夜。
 俺は、ボロボロになったおじい様の背中を流していた。
 場所は村長湯。
「いい汗掻いたぜ!」と言うおじい様を連れて二人でやってきたのだ。

「くぅ~……ひっさしぶりにブン殴られたぜ。いやぁここに来てから随分と若返った気がするわい」
「おじい様……デーモンオーガと殴り合いした人間は、たぶんおじい様が初かと」
「そうか? がっはっは! オーベルシュタインは面白れぇなぁ!」

 身体を流し湯船へ。
 今日もいい温度だ。温泉もいいけど、やっぱり浴場は最高だ。

「おじい様、明日はどうします?」
「そうだな。今日はアシュトと遊んだし、明日はセレスティーヌと遊ぶかぁ……」
「じゃあ、妖狐族の温泉とかどうです? 村にある転移魔法陣で一瞬で行けますよ」
「ほお、そりゃいいな」

 おじい様たち、明日は温泉巡りをするそうだ。
 妖狐族の里は観光地だし、様々な種類の温泉がたくさんある。飲食店やお土産屋もあるし、のんびり過ごすにはいいところだろう。
 おばあ様、今日はシェリーやミュディと一緒に読書して過ごしたって聞いたし、明日はおじい様とデートってのも悪くない。
 と、なんとなくおじい様に聞いてみた。

「あの、おじい様。おじい様はどうして旅に出たんですか?」
「ああ~……まぁ、見てのとおりよ。ワシは貴族のしがらみとか大っ嫌いでな。戦場で暴れたり、強くなるために修行したりするのが大好きだったのよ。セレスティーヌに惚れて結婚しアイゼンが生まれて、しばらくはエストレイヤ家にいたけどよ、アイゼンがそこそこ強くなって使えるようになったから全部くれてやったのよ。んで、若いころできなかった世界中を巡る旅に出たってわけだ。まぁ、セレスティーヌまで付いてくるとは思わんかったけどな。がっはっは!」
「ご、豪快すぎる……」

 一体誰に似たのか……少なくとも、父上は似なかったようだ。
 おじい様は湯を掬い、顔を洗う。

「ここはいいところだ。未開の地って言われたオーベルシュタインに村を作るとはなぁ……アシュト、おめーも相当にぶっ飛んだ奴だぜ」
「あ、あはは……」

 俺は苦笑した……いや、俺はそこまでぶっ飛んでないと思いたい。
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