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常夏の村
第578話、大事なお話
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ある日。常夏セミの鳴き声を聞きながら、家の裏庭でミュディとスイカを食べていた。
裏庭には、シェリーが出した氷柱があり、日陰と合わさってかなり涼しい。
スイカも甘くておいしい。夏は暑いけど、過ごし方でこんなにも変わった。
ミュディは、薄手のワンピースを着ている。これがまたよく似合っている。
「スイカ、おいしいね」
「ああ。塩、もっとかけるか?」
「ううん、大丈夫」
『ミーンミンミンミンミー……』
夏の風が吹く。
風は氷柱に当たり、冷たい風となって俺とミュディに触れた。
常夏セミだけが鳴いている。今はこの静けさがいい。
スイカを食べ終わり、アイスカーフィーを飲む。
「はぁ~……うまい」
「ん……そうだね」
会話は、そんなに重要じゃない。
大事なのは雰囲気。夏の暑さ、常夏セミの鳴き声、スイカ、アイスカーフィー……全てが調和し、この雰囲気を作りだしていた。この場に、不必要な会話はいらない。ミュディも同じことを思っているだろう。
のんびり風を浴びていると、人の気配が。
「お休みのところ申し訳ございません、村長」
「ん、ディアーナ? どうしたの」
ディアーナだった。
村の文官で、夏用なのか薄手のローブを纏っている。しかも、日差しをモロに浴びているのに、汗の一滴すら流していない……たぶん、魔法を使ってるんだろうな。
ディアーナは、分厚い書類の束を俺の元へ。
「こちら、夏祭りの要項です。ご確認を」
「夏祭り……」
「はい。ドラゴンロード王国での調査をもとに、作りました」
「なるほど。よし、確認するよ。ミュディ、悪いけどディアーナにアイスカーフィーを」
「は~い」
「いえ、私は……」
「いいからいいから。ほら、座ってね」
ミュディがディアーナの背を押し、俺の隣に座らせた。
ディアーナは少し照れくさそうにしていたのが、なんとも可愛いかった。
◇◇◇◇◇◇
夏祭りの要項を確認する。
いつの間にか用意されていたアイスカーフィーのお代わりを飲む。
「ん、なるほど……」
「ご確認いただけましたか?」
「ああ。よくできてる」
緑龍の村、初めての祭りは、夏祭りだった。
妖狐族がメインで露店を出店、村の中央にエルダードワーフたちが櫓を作り、そこで天使族が祭りにピッタリな音楽を演奏する。
露店での食事は有料。他にも、出店したい人は申請すればお店を開ける。
取引をしている種族に、祭りの開催を伝える。当日、村の出入りは自由とする。
祭りは、三日間かけて開催する。
夜は、イベントを開催する……と、こんな感じだ。
「これ、いいな。面白そうだ」
「ありがとうございます。それと、ミュディ様にお願いが」
「え、わたし?」
「はい。できる範囲で構いませんので、夏祭りの夜に、ミュディ様の魔法で空を彩っていただけないでしょうか?」
「あ、『華火』だね。もちろん!」
ミュディの魔法適性は『爆破』だ。
殺傷力の高い攻撃用の魔法だが、心優しいミュディは攻撃魔法を使えない。そこで編み出したのが、空を彩る爆発魔法、通称『華火』だ。
カラフルな炎が空で弾ける光景は、もう美しいとしか言いようがない。
「よーし!! 久しぶりに魔法を改良しちゃおうかな」
「でしたら、妖狐族に相談するといいでしょう。彼らは魔法のプロですので」
「あ、そっか。妖狐族さんって、料理上手だけじゃなかったんだ」
緑龍の村での妖狐族は『料理人』のイメージ強いからな。本当は魔法のプロなんだよ。
「あと、出店関係の建物は」
「申請式にします。基本的にはエルダードワーフたちに出店を建ててもらいますが、自分で用意するという方もいるでしょうしね」
「わかった。ディアーナ、世話をかける」
「いえ。それと現在、ハイエルフの方々に、この夏がいつまで続くかを詳細に調べていただいております。知っての通り、夏の次は秋が来ますので……秋祭りの開催も視野にいれています」
「あ、秋祭りか」
「はい。仕込んだワインや清酒の試飲会や、秋の山菜等が採れますので」
「いやー、忙しいな」
「そうですね」
ディアーナは、メガネをくいっと上げた。
◇◇◇◇◇◇
薬院に戻ると、ココロが勉強をしていた。
「あ、先生」
「お疲れ、ココロ。勉強か?」
「はい」
今日は仕事が休みのはず。勤勉で何よりだ。
「毎日暑いですね、先生」
「ああ、これが夏……いいところもあるけど、暑いのは苦手だよ」
「あはは。わたしもです」
俺は自分の席に座り、大きく伸びをする。
ココロをチラッと見て、俺も勉強しようと引き出しを開けた。
「先生も勉強ですか?」
「ああ。論文の続きでも書こうかなって」
「え!? せ、先生の論文ですか!?」
「そ、そうだけど……」
な、なんだろう。すっごく食いついてきたぞ?
ココロは勉強の手を止め、前のめりに聞いてきた。
「あ、あの。先生って、まだ論文を書いてるんですか?」
「まぁね。オーベルシュタインで見つけた植物とか、薬草関係の効能とかをまとめてるんだ。まぁ、表じゃ発表できない論文が二十以上はあるよ」
「ぶっ!? ほ、ほんとですか!?」
「う、うん」
ココロ、前のめりになってるから、胸の谷間とかめっちゃ見えてるんだけど……夏で薄着だとこういうのけっこうあるよな。しかも、デカい。
「あ、アシュト先生の論文、わたし全部読みました!! その、薬学、医学関係の論文だけで……その、魔法学園では、先生の論文をまとめた書籍は、いつも貸し出し中で」
「書籍?……ああ、そういえばシャヘル先生が言ってたっけ。俺の論文をまとめて本にするって。あはは、なんか恥ずかしいね」
「ええええええええええええっ!?」
ココロ、声デカい。なんとなくフレキくんを思い出す。
「そんなに気になるなら見る?」
「ッッッ!! み、未発表の、論文……ごくり」
「まぁ、論文って言っても書きなぐりで、思い付きをまとめただけだし」
「……だ、ダメです!!」
「うおっ」
「ひ、人の研究成果を、発表前に見るなんてダメです!! ウゥゥゥゥゥゥ!!」
「お、落ち着けよ……ど、どうした?」
「うう、あんだか興奮しちゃって……あつい」
「と、とりあえず、冷たいお茶でも飲みに行くか」
「はい……」
ココロ、汗だくだ……お茶を飲んだら着替えるように言うか。
裏庭には、シェリーが出した氷柱があり、日陰と合わさってかなり涼しい。
スイカも甘くておいしい。夏は暑いけど、過ごし方でこんなにも変わった。
ミュディは、薄手のワンピースを着ている。これがまたよく似合っている。
「スイカ、おいしいね」
「ああ。塩、もっとかけるか?」
「ううん、大丈夫」
『ミーンミンミンミンミー……』
夏の風が吹く。
風は氷柱に当たり、冷たい風となって俺とミュディに触れた。
常夏セミだけが鳴いている。今はこの静けさがいい。
スイカを食べ終わり、アイスカーフィーを飲む。
「はぁ~……うまい」
「ん……そうだね」
会話は、そんなに重要じゃない。
大事なのは雰囲気。夏の暑さ、常夏セミの鳴き声、スイカ、アイスカーフィー……全てが調和し、この雰囲気を作りだしていた。この場に、不必要な会話はいらない。ミュディも同じことを思っているだろう。
のんびり風を浴びていると、人の気配が。
「お休みのところ申し訳ございません、村長」
「ん、ディアーナ? どうしたの」
ディアーナだった。
村の文官で、夏用なのか薄手のローブを纏っている。しかも、日差しをモロに浴びているのに、汗の一滴すら流していない……たぶん、魔法を使ってるんだろうな。
ディアーナは、分厚い書類の束を俺の元へ。
「こちら、夏祭りの要項です。ご確認を」
「夏祭り……」
「はい。ドラゴンロード王国での調査をもとに、作りました」
「なるほど。よし、確認するよ。ミュディ、悪いけどディアーナにアイスカーフィーを」
「は~い」
「いえ、私は……」
「いいからいいから。ほら、座ってね」
ミュディがディアーナの背を押し、俺の隣に座らせた。
ディアーナは少し照れくさそうにしていたのが、なんとも可愛いかった。
◇◇◇◇◇◇
夏祭りの要項を確認する。
いつの間にか用意されていたアイスカーフィーのお代わりを飲む。
「ん、なるほど……」
「ご確認いただけましたか?」
「ああ。よくできてる」
緑龍の村、初めての祭りは、夏祭りだった。
妖狐族がメインで露店を出店、村の中央にエルダードワーフたちが櫓を作り、そこで天使族が祭りにピッタリな音楽を演奏する。
露店での食事は有料。他にも、出店したい人は申請すればお店を開ける。
取引をしている種族に、祭りの開催を伝える。当日、村の出入りは自由とする。
祭りは、三日間かけて開催する。
夜は、イベントを開催する……と、こんな感じだ。
「これ、いいな。面白そうだ」
「ありがとうございます。それと、ミュディ様にお願いが」
「え、わたし?」
「はい。できる範囲で構いませんので、夏祭りの夜に、ミュディ様の魔法で空を彩っていただけないでしょうか?」
「あ、『華火』だね。もちろん!」
ミュディの魔法適性は『爆破』だ。
殺傷力の高い攻撃用の魔法だが、心優しいミュディは攻撃魔法を使えない。そこで編み出したのが、空を彩る爆発魔法、通称『華火』だ。
カラフルな炎が空で弾ける光景は、もう美しいとしか言いようがない。
「よーし!! 久しぶりに魔法を改良しちゃおうかな」
「でしたら、妖狐族に相談するといいでしょう。彼らは魔法のプロですので」
「あ、そっか。妖狐族さんって、料理上手だけじゃなかったんだ」
緑龍の村での妖狐族は『料理人』のイメージ強いからな。本当は魔法のプロなんだよ。
「あと、出店関係の建物は」
「申請式にします。基本的にはエルダードワーフたちに出店を建ててもらいますが、自分で用意するという方もいるでしょうしね」
「わかった。ディアーナ、世話をかける」
「いえ。それと現在、ハイエルフの方々に、この夏がいつまで続くかを詳細に調べていただいております。知っての通り、夏の次は秋が来ますので……秋祭りの開催も視野にいれています」
「あ、秋祭りか」
「はい。仕込んだワインや清酒の試飲会や、秋の山菜等が採れますので」
「いやー、忙しいな」
「そうですね」
ディアーナは、メガネをくいっと上げた。
◇◇◇◇◇◇
薬院に戻ると、ココロが勉強をしていた。
「あ、先生」
「お疲れ、ココロ。勉強か?」
「はい」
今日は仕事が休みのはず。勤勉で何よりだ。
「毎日暑いですね、先生」
「ああ、これが夏……いいところもあるけど、暑いのは苦手だよ」
「あはは。わたしもです」
俺は自分の席に座り、大きく伸びをする。
ココロをチラッと見て、俺も勉強しようと引き出しを開けた。
「先生も勉強ですか?」
「ああ。論文の続きでも書こうかなって」
「え!? せ、先生の論文ですか!?」
「そ、そうだけど……」
な、なんだろう。すっごく食いついてきたぞ?
ココロは勉強の手を止め、前のめりに聞いてきた。
「あ、あの。先生って、まだ論文を書いてるんですか?」
「まぁね。オーベルシュタインで見つけた植物とか、薬草関係の効能とかをまとめてるんだ。まぁ、表じゃ発表できない論文が二十以上はあるよ」
「ぶっ!? ほ、ほんとですか!?」
「う、うん」
ココロ、前のめりになってるから、胸の谷間とかめっちゃ見えてるんだけど……夏で薄着だとこういうのけっこうあるよな。しかも、デカい。
「あ、アシュト先生の論文、わたし全部読みました!! その、薬学、医学関係の論文だけで……その、魔法学園では、先生の論文をまとめた書籍は、いつも貸し出し中で」
「書籍?……ああ、そういえばシャヘル先生が言ってたっけ。俺の論文をまとめて本にするって。あはは、なんか恥ずかしいね」
「ええええええええええええっ!?」
ココロ、声デカい。なんとなくフレキくんを思い出す。
「そんなに気になるなら見る?」
「ッッッ!! み、未発表の、論文……ごくり」
「まぁ、論文って言っても書きなぐりで、思い付きをまとめただけだし」
「……だ、ダメです!!」
「うおっ」
「ひ、人の研究成果を、発表前に見るなんてダメです!! ウゥゥゥゥゥゥ!!」
「お、落ち着けよ……ど、どうした?」
「うう、あんだか興奮しちゃって……あつい」
「と、とりあえず、冷たいお茶でも飲みに行くか」
「はい……」
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