472 / 492
ビッグバロッグ祭り
第648話、最後はやっぱりみんなで
しおりを挟む
さて、ビッグバロッグ祭り初日も終わりを迎え、宿に戻ったのだが。
「にゃぅぅ……」
「にゃ……」「にゃぁう」
ルリとメノウが疲れて眠ってしまい、ミュアちゃんも一緒に寝てしまった。
ミュアちゃんはともかく、ルリとメノウは屋敷に返さなくちゃいけないんだよな。でも、かわいらしくスヤスヤ寝ている二人を起こすのもなあ。
俺はフレキくんに言う。
「ごめんフレキくん。ちょっと屋敷に顔出して来るから、子供たちのことお願いしていい?」
「わかりました。お任せください!!」
胸をドンと叩くフレキくん……なんて頼りになる。
日が傾き、そろそろ夜になる。
俺は転移魔法で屋敷へ向かうと、到着したのは俺の部屋だった。
部屋を出て、メイド長のミルコを探す。
「アシュト様、お帰りでしたか。申し訳ございません、お出迎えもせずに」
転移魔法で帰る俺を出迎えるのは不可能だろう。
父上の執事であるセバッサンにミルコのことを聞く。
「今の時間ですと、厨房ですな」
「わかった」
さっそく厨房へ。テンポよく行くぞ。
厨房にミルコがいた。
「ミルコ、ちょっといい?」
「アシュト様? お帰りでしたか」
「うん。あのさ……ルリとメノウなんだけど」
事情説明。
町で遊んで疲れて寝ちゃったこと、今は宿にいることを言う。
ミルコは苦笑した。
「子供ですから仕方ないですね……わかりました。今日明日は仕事休みにしますので、明日までにお返しくださいね」
「うん、ごめん……」
「いえいえ。たまには子供らしく過ごすのも大事ですよ」
ミルコはにっこり笑い、スープの仕込みを続ける。
よし、これであの子たちはゆっくり寝れるな。
屋敷の外で転移魔法を使おうとすると、一台の馬車が止まった。
エストレイヤ家の紋章が刻まれた馬車だ。降りてきたのは、エクレールとスサノオだ。
「おじ様!!」「おじ上!!」
「エクレール、スサノオ。久しぶりだね」
駆け寄ってくるエクレール、姿勢よく歩いてくるスサノオ。
俺は抱きついてくるエクレールの頭を撫で、じっと見るスサノオも撫でた。
この二人に会うのも久しぶりだ。少し背が大きくなったような気もする。
おっと、この二人にも伝えておかないとな。
「二人とも、ルリとメノウのことなんだけど」
「「?」」
今日はお休みで、祭りに誘ったこと、そしてそのまま寝てしまったことを説明する。
すると、エクレールがムスッとした。
「むぅぅ……お祭り、あたしも行きたいな」
「姉上。その気持ちはわかりますけど、ぼくたちにも貴族のせきむが」
スサノオ、難しいこと知ってるな。
以前、獣大国サファリで王女のペルシャちゃんに使った『擬態の木』を使えば遊びに出掛けられるだろうけど……あれはある意味、周囲を欺くための魔法だ。兄さんたちの子供に対して使っていい物か。
「まあ、そうよね……エストレイヤ家の子として、恥ずかしくないようにお勉強してるんだもん。ちゃんと我慢するもん」
「そのとおりです」
あれ。
エクレール、もっと騒ぐかと思ったけど……聞き分けいいな。
とりあえず、二人を連れて屋敷へ。
その後、俺は宿に転移してフレキくんと合流。俺の部屋で話をする。
「師匠、せっかく故郷へ帰って来たんですし、ご家族と過ごされては? 子供たちはボクが見ていますので!!」
何この子、聖人?
挨拶くらいはしに行こうと思ってた。今回は『思い思いに過ごす』って感じの帰省だったし。そりゃあ、兄さんやヒュンケル兄と飲みに行こうかなーとは思ってたけど、子供たちもいるし。
それに、明日はシャヘル先生とフレキくん、ルミナと過ごす予定だ。ミュアちゃんはミュディが連れて行ってくれる手はずになっている。
フレキくんはニコニコしながら言う。
「師匠。ボクは師匠の故郷に来れて、明日は師匠の師匠と一緒に見回れるんです。なので、師匠……少しくらい、ボクにもお返しさせてください」
「ふ、フレキくん……」
マジで聖人だよフレキくん……!!
嬉しさに浸っていると、黒柴犬の子を抱いたルミナがベッドから出てきた。
「ふみゃぁぁ……うるさいぞ」
『くーん』
「あ、悪い」
『アシュト……シズカニシテー』
「あ、ウッドも起きちゃった。悪い悪い」
この場をフレキくんに任せ、俺は転移魔法で屋敷に戻った。
◇◇◇◇◇◇
屋敷に戻ると、なぜかエルミナたち、ミュディ、シェリーにラクシュミ、ドラゴン一家が勢揃いしていた。
しかも、屋敷のエントランスホールで。
兄さん、ヒュンケル兄、ルナマリア義姉さんもいる。
「……え、なんで?」
いきなり登場した俺に視線が注目する。
すると、入口のドアが開いた。
「戻ったぞ。って、おお!? なんだなんだ、すごい来客だな!! ん? アシュトではないか」
「ち、父上? ですよね……?」
「ははは、父を忘れたか?」
俺の父に、筋骨隆々で真っ黒に日焼けした角刈り男性はいなかったような。
前よりも筋量が増えてる。しかも日焼けもすごい。
とりあえず、俺は言う。
「ヒュンケル兄、なんでこんな人がいっぱい?」
「ここでオレに聞くのがお前らしいぜ……えーと、いろいろ情報を整理するとだな」
まず、エルミナたち幼馴染メンバーが兄さんの部下と豪遊。そのまま兄さんと合流した。
ヒュンケル兄はシェリーとラクシュミに会い、そのまま一緒に飲む流れになった。
ルナマリア義姉さんがミュディと偶然出会い、一緒に飲むことに。ライラちゃんはミュディが転移魔法で村まで送ったそうだ。
で、兄さん、ヒュンケル兄、ルナマリア義姉さんが合流した。
そのまま屋敷へ向かおうとすると、大食い王者となり高笑いしているガーランド王を発見、大騒ぎになりそうだったので、家族全員エストレイヤ家へ……そしてエントランスホールに入ったところで、俺が転移してきた。
「───……ってわけだ」
「な、なるほど……なんというか、すごい巡り合わせだな」
「同感」
「なんかすっごく盛り上がってきたわね!! アシュトのパパ、早く飲みましょうよ!!」
「おお? 久しぶりだなエルミナ嬢。よーし、よくわからんが我が家のバーに全員を招待しよう。セバッサン、みなの案内を頼む。ワシは着替えてくる」
「かしこまりました」
セバッサン、いつの間に。
とりあえず……みんなで飲むことになりました。
◇◇◇◇◇◇
バーは満員。エストレイヤ家専属のバーテンダーでもあるセバッサンと、手が足りないのでバーテンダーを増員、料理人まで入り、バーは宴会状態だった。
「はーっはっはっは!! いやあ、やはり家族と飲む酒はうまい!! なあアシュトくん!!」
「は、はい」
ガーランド王がすごい飲む。
まあドラゴンだし、人間形態でも相当食べるって話だし。
ずっとガーランド王と話しているわけにもいかないのでローレライに助けを求めた。
「お父様、そろそろ私の相手もしてくださらない?」
「おお、愛しの娘よ~!!」
「さ、今のうちに。あの人は私とローレライで相手するから」
「アルメリア様、申し訳ございません」
「いいの。ふふ、でもあんな楽しそうなガーランド、久しぶり」
その場から離れ、シェリーたちの元へ。
「へぇ~、クララベルちゃんのツノ、すっごくつやつやして触り心地いいわねぇ」
「ん~、くすぐったいぃ」
「ラクシュミ、やめなさいよ」
「いいじゃん。ね、ね、クララベルちゃんの髪すっごくサラサラだね~……」
───……行こうと思ったけどやめた。
なんか女の子空間だ。俺はすすーっとミュディがいるところへ。
「リュドガさん、お姉様とはどんな感じですか?」
「ど、どんな感じとは?」
「デートしてます? お仕事ばかりじゃダメですよ!! 昔からリュドガさんは仕事仕事で……すっごく鈍感で、でもカッコいい頼れるお兄さんで、でもでも、女心をわかってなくて!!」
「みゅ、ミュディ? その、手にある酒はすごく強い酒だが……大丈夫か?」
「大丈夫です!! それより、お姉様のことをですね」
───……離れよう。
ミュディ、珍しく悪酔いしてるな。
やっぱり無難なのは、ヒュンケル兄のところかなあ。
「ヒュンケル、農業に興味はないか?」
「え、ええっと……」
「ははは。畑はいいぞぉ? 体調もすっかり良くなったし、隠居後の趣味には最適だ!! お前も農地を持たないか? エストレイヤ家で管理している農地があるんだが」
「あ、あはは……その、まあ」
こっちも無理だ。
混ざったら俺もエストレイヤ家の農地を耕すことになりそう。
どうしたもんかと迷っていると。
「アシュト、こっちに来ないか?」
「ルナマリア義姉さん」
ルナマリア義姉さんが、カウンターで一人飲んでいた。
俺は隣に座ると、セバッサンがフルーツカクテルを出してくれた。
グラスを合わせ、ルナマリア義姉さんは言う。
「お前とこうして飲むのは初めてかもな」
「ですね。いつもはヒュンケル兄とかいるし」
「はは。懐かしいな……お前は、ヒュンケルには懐いていたが、私の方には来なかった」
「いやあ……」
だって、恥ずかしい。
友達の姉。ましてや、ルナマリア義姉さんだぞ。
ミュディやシェリーは懐いてたけど、俺は恥ずかしかった。
まぁ、正直に言うと……けっこう、憧れてたんだよな。
「ふふ、ミュディとは上手くやっているのか?」
「はい。仲良く過ごしています」
「その、子供とかは……?」
「え、あー……ま、まあなんとか、そのうち」
頑張ってはいる、俺が言えるのはそれだけだ。
人数も多いし、けっこう大変なんだよね。
「子供はいいぞ。エクレール、スサノオ……二人の成長が、私の楽しみだ」
「ですよね。さっき会った時にも思ったけど、大きくなりました」
「だろう!! ふふふ、実はエクレールの剣なんだが、才能があるようでな」
「あ、ああはい」
やばい、ルナマリア義姉さんも酔ってるかも。
そう気づいた時、すでに遅かった……兄さんもミュディに捕まってるし、俺もルナマリア義姉さんの熱烈トークから逃げられそうにない。
この日、俺は深夜を過ぎてもルナマリア義姉さんから解放されることはなかった……うう、助けてくれえ。
「にゃぅぅ……」
「にゃ……」「にゃぁう」
ルリとメノウが疲れて眠ってしまい、ミュアちゃんも一緒に寝てしまった。
ミュアちゃんはともかく、ルリとメノウは屋敷に返さなくちゃいけないんだよな。でも、かわいらしくスヤスヤ寝ている二人を起こすのもなあ。
俺はフレキくんに言う。
「ごめんフレキくん。ちょっと屋敷に顔出して来るから、子供たちのことお願いしていい?」
「わかりました。お任せください!!」
胸をドンと叩くフレキくん……なんて頼りになる。
日が傾き、そろそろ夜になる。
俺は転移魔法で屋敷へ向かうと、到着したのは俺の部屋だった。
部屋を出て、メイド長のミルコを探す。
「アシュト様、お帰りでしたか。申し訳ございません、お出迎えもせずに」
転移魔法で帰る俺を出迎えるのは不可能だろう。
父上の執事であるセバッサンにミルコのことを聞く。
「今の時間ですと、厨房ですな」
「わかった」
さっそく厨房へ。テンポよく行くぞ。
厨房にミルコがいた。
「ミルコ、ちょっといい?」
「アシュト様? お帰りでしたか」
「うん。あのさ……ルリとメノウなんだけど」
事情説明。
町で遊んで疲れて寝ちゃったこと、今は宿にいることを言う。
ミルコは苦笑した。
「子供ですから仕方ないですね……わかりました。今日明日は仕事休みにしますので、明日までにお返しくださいね」
「うん、ごめん……」
「いえいえ。たまには子供らしく過ごすのも大事ですよ」
ミルコはにっこり笑い、スープの仕込みを続ける。
よし、これであの子たちはゆっくり寝れるな。
屋敷の外で転移魔法を使おうとすると、一台の馬車が止まった。
エストレイヤ家の紋章が刻まれた馬車だ。降りてきたのは、エクレールとスサノオだ。
「おじ様!!」「おじ上!!」
「エクレール、スサノオ。久しぶりだね」
駆け寄ってくるエクレール、姿勢よく歩いてくるスサノオ。
俺は抱きついてくるエクレールの頭を撫で、じっと見るスサノオも撫でた。
この二人に会うのも久しぶりだ。少し背が大きくなったような気もする。
おっと、この二人にも伝えておかないとな。
「二人とも、ルリとメノウのことなんだけど」
「「?」」
今日はお休みで、祭りに誘ったこと、そしてそのまま寝てしまったことを説明する。
すると、エクレールがムスッとした。
「むぅぅ……お祭り、あたしも行きたいな」
「姉上。その気持ちはわかりますけど、ぼくたちにも貴族のせきむが」
スサノオ、難しいこと知ってるな。
以前、獣大国サファリで王女のペルシャちゃんに使った『擬態の木』を使えば遊びに出掛けられるだろうけど……あれはある意味、周囲を欺くための魔法だ。兄さんたちの子供に対して使っていい物か。
「まあ、そうよね……エストレイヤ家の子として、恥ずかしくないようにお勉強してるんだもん。ちゃんと我慢するもん」
「そのとおりです」
あれ。
エクレール、もっと騒ぐかと思ったけど……聞き分けいいな。
とりあえず、二人を連れて屋敷へ。
その後、俺は宿に転移してフレキくんと合流。俺の部屋で話をする。
「師匠、せっかく故郷へ帰って来たんですし、ご家族と過ごされては? 子供たちはボクが見ていますので!!」
何この子、聖人?
挨拶くらいはしに行こうと思ってた。今回は『思い思いに過ごす』って感じの帰省だったし。そりゃあ、兄さんやヒュンケル兄と飲みに行こうかなーとは思ってたけど、子供たちもいるし。
それに、明日はシャヘル先生とフレキくん、ルミナと過ごす予定だ。ミュアちゃんはミュディが連れて行ってくれる手はずになっている。
フレキくんはニコニコしながら言う。
「師匠。ボクは師匠の故郷に来れて、明日は師匠の師匠と一緒に見回れるんです。なので、師匠……少しくらい、ボクにもお返しさせてください」
「ふ、フレキくん……」
マジで聖人だよフレキくん……!!
嬉しさに浸っていると、黒柴犬の子を抱いたルミナがベッドから出てきた。
「ふみゃぁぁ……うるさいぞ」
『くーん』
「あ、悪い」
『アシュト……シズカニシテー』
「あ、ウッドも起きちゃった。悪い悪い」
この場をフレキくんに任せ、俺は転移魔法で屋敷に戻った。
◇◇◇◇◇◇
屋敷に戻ると、なぜかエルミナたち、ミュディ、シェリーにラクシュミ、ドラゴン一家が勢揃いしていた。
しかも、屋敷のエントランスホールで。
兄さん、ヒュンケル兄、ルナマリア義姉さんもいる。
「……え、なんで?」
いきなり登場した俺に視線が注目する。
すると、入口のドアが開いた。
「戻ったぞ。って、おお!? なんだなんだ、すごい来客だな!! ん? アシュトではないか」
「ち、父上? ですよね……?」
「ははは、父を忘れたか?」
俺の父に、筋骨隆々で真っ黒に日焼けした角刈り男性はいなかったような。
前よりも筋量が増えてる。しかも日焼けもすごい。
とりあえず、俺は言う。
「ヒュンケル兄、なんでこんな人がいっぱい?」
「ここでオレに聞くのがお前らしいぜ……えーと、いろいろ情報を整理するとだな」
まず、エルミナたち幼馴染メンバーが兄さんの部下と豪遊。そのまま兄さんと合流した。
ヒュンケル兄はシェリーとラクシュミに会い、そのまま一緒に飲む流れになった。
ルナマリア義姉さんがミュディと偶然出会い、一緒に飲むことに。ライラちゃんはミュディが転移魔法で村まで送ったそうだ。
で、兄さん、ヒュンケル兄、ルナマリア義姉さんが合流した。
そのまま屋敷へ向かおうとすると、大食い王者となり高笑いしているガーランド王を発見、大騒ぎになりそうだったので、家族全員エストレイヤ家へ……そしてエントランスホールに入ったところで、俺が転移してきた。
「───……ってわけだ」
「な、なるほど……なんというか、すごい巡り合わせだな」
「同感」
「なんかすっごく盛り上がってきたわね!! アシュトのパパ、早く飲みましょうよ!!」
「おお? 久しぶりだなエルミナ嬢。よーし、よくわからんが我が家のバーに全員を招待しよう。セバッサン、みなの案内を頼む。ワシは着替えてくる」
「かしこまりました」
セバッサン、いつの間に。
とりあえず……みんなで飲むことになりました。
◇◇◇◇◇◇
バーは満員。エストレイヤ家専属のバーテンダーでもあるセバッサンと、手が足りないのでバーテンダーを増員、料理人まで入り、バーは宴会状態だった。
「はーっはっはっは!! いやあ、やはり家族と飲む酒はうまい!! なあアシュトくん!!」
「は、はい」
ガーランド王がすごい飲む。
まあドラゴンだし、人間形態でも相当食べるって話だし。
ずっとガーランド王と話しているわけにもいかないのでローレライに助けを求めた。
「お父様、そろそろ私の相手もしてくださらない?」
「おお、愛しの娘よ~!!」
「さ、今のうちに。あの人は私とローレライで相手するから」
「アルメリア様、申し訳ございません」
「いいの。ふふ、でもあんな楽しそうなガーランド、久しぶり」
その場から離れ、シェリーたちの元へ。
「へぇ~、クララベルちゃんのツノ、すっごくつやつやして触り心地いいわねぇ」
「ん~、くすぐったいぃ」
「ラクシュミ、やめなさいよ」
「いいじゃん。ね、ね、クララベルちゃんの髪すっごくサラサラだね~……」
───……行こうと思ったけどやめた。
なんか女の子空間だ。俺はすすーっとミュディがいるところへ。
「リュドガさん、お姉様とはどんな感じですか?」
「ど、どんな感じとは?」
「デートしてます? お仕事ばかりじゃダメですよ!! 昔からリュドガさんは仕事仕事で……すっごく鈍感で、でもカッコいい頼れるお兄さんで、でもでも、女心をわかってなくて!!」
「みゅ、ミュディ? その、手にある酒はすごく強い酒だが……大丈夫か?」
「大丈夫です!! それより、お姉様のことをですね」
───……離れよう。
ミュディ、珍しく悪酔いしてるな。
やっぱり無難なのは、ヒュンケル兄のところかなあ。
「ヒュンケル、農業に興味はないか?」
「え、ええっと……」
「ははは。畑はいいぞぉ? 体調もすっかり良くなったし、隠居後の趣味には最適だ!! お前も農地を持たないか? エストレイヤ家で管理している農地があるんだが」
「あ、あはは……その、まあ」
こっちも無理だ。
混ざったら俺もエストレイヤ家の農地を耕すことになりそう。
どうしたもんかと迷っていると。
「アシュト、こっちに来ないか?」
「ルナマリア義姉さん」
ルナマリア義姉さんが、カウンターで一人飲んでいた。
俺は隣に座ると、セバッサンがフルーツカクテルを出してくれた。
グラスを合わせ、ルナマリア義姉さんは言う。
「お前とこうして飲むのは初めてかもな」
「ですね。いつもはヒュンケル兄とかいるし」
「はは。懐かしいな……お前は、ヒュンケルには懐いていたが、私の方には来なかった」
「いやあ……」
だって、恥ずかしい。
友達の姉。ましてや、ルナマリア義姉さんだぞ。
ミュディやシェリーは懐いてたけど、俺は恥ずかしかった。
まぁ、正直に言うと……けっこう、憧れてたんだよな。
「ふふ、ミュディとは上手くやっているのか?」
「はい。仲良く過ごしています」
「その、子供とかは……?」
「え、あー……ま、まあなんとか、そのうち」
頑張ってはいる、俺が言えるのはそれだけだ。
人数も多いし、けっこう大変なんだよね。
「子供はいいぞ。エクレール、スサノオ……二人の成長が、私の楽しみだ」
「ですよね。さっき会った時にも思ったけど、大きくなりました」
「だろう!! ふふふ、実はエクレールの剣なんだが、才能があるようでな」
「あ、ああはい」
やばい、ルナマリア義姉さんも酔ってるかも。
そう気づいた時、すでに遅かった……兄さんもミュディに捕まってるし、俺もルナマリア義姉さんの熱烈トークから逃げられそうにない。
この日、俺は深夜を過ぎてもルナマリア義姉さんから解放されることはなかった……うう、助けてくれえ。
115
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。