大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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新たな開拓

第654話、まずはどんな種族か④

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 シロネちゃんの両親が畑から戻り、移住の件を話すと了解してくれた。
 まず、緑龍の村で何組か過ごしてもらう。そこで移住に関しての要望などを聞き、村づくりを開始する。
 小人族、巨人族も何名か村に向かってもらった。白猫族からはシロネちゃん一家と、高齢夫婦の二組向かってもらう……高齢夫婦らしいんだけど、どう見ても二十代後半くらいだ。
 白猫族も長寿種で、外見は二十代後半くらいで止まり、そのまま静かに老いていくらしい。
 シロネちゃんの両親、そしてハルベさんと話を終え、シロネちゃんの家に戻ってきた。
 家の中に入ると……なんと、子供たちがお昼寝中。

「アシュト、しーっ……」
「あ、ああ」
「見て……かわいい」

 ミュディ曰く。
 話が長引くので、ミュディが持参したおやつを食べることに。
 子供たち三人でお菓子を食べると、まずルミナが昼寝を開始、そしてシロネちゃんがルミナにくっついて昼寝をはじめ、ミュアちゃんがシロネちゃんを包むように寝てしまった。
 ミュディがそんな三人に毛布をかけ、三人を交互に撫でてたようだ。

「にゃ……」
「みゃう……」
「ふにゃ……」

 かわいい。
 ルミナも、シロネちゃんが胸元でスピスピ寝ているのに、ふわりと抱きしめている。
 シロネちゃんの両親も驚いていた。

「この子が、こんなに懐くなんて……」
「同じ猫族でも、この子はあまり人に懐かなくて……」

 とりあえず、このまま寝かせておくことに。
 外に出て、ディアーナと話しをする。

「えーっと、夜に『幽鬼族』のところに行くんだよな?」
「はい。幽鬼族は日中は『実体化』できないので、基本的に夜間しか活動できないそうです」
「……実体化」

 なんか怖いな。
 ワイトさんに話を聞こうとしたが、いなかった。
 すると、集落の入口で歓声が上がり、ディアーナと向かう。
 そこにいたのは、巨大なイノシシを狩ったグラッドさんと、ワイトさんだった。

「叔父貴、晩飯を狩ってきやした」
「おお、ありがとうございます」
「ははハ、白猫族の皆さんもゼヒ」

 ワイトさんが骨をカタカタさせて言うと、白猫族たちはみんな喜んでいた。
 肉とか久しぶりらしいし、いっぱい食べてもらおう。

 ◇◇◇◇◇

 夜になり、俺とディアーナとワイトさんは『幽鬼族』がいるという場所へ向かう。
 ミュディは子供たちとお留守番。シロネちゃんがミュアちゃんたちに懐いて、今は一緒に遊んでいる。
 グラッドさんは、集落の護衛に置いてきた。こっちの護衛役はワイトさんがいる。

「イやぁ~……久しぶりに感じる、魔の気配デスナ」
「ま、魔の気配?」

 夜になると、ワイトさんの眼窩に赤い光が灯る……これがめちゃくちゃ怖い。
 骨がカタカタ鳴るし、黒いマントがバサバサ翻るし、マジ怖い。
 一時間ほど歩くと、ワイトさんが言う。

「コノ先、ですナ」
「……」
「あの、村長……実は、情報だけで私も会うのは初めてで」
「お、おう」
「……いざという時は、よろしくお願いします」

 何を? とは聞けない俺だった。
 そして、ワイトさんが立ち止まると……そこは、不自然なくらいまっさらな空間だった。
 木々も、雑草も生えていない。土だけの場所。
 周囲を見渡すが、本当に何もない。

「え、ここ?」
「エエ……いるんだろう、ファントム!!」

 ワイトさんが叫ぶと───……それは、現れた。

「え……」
「ひっ……」

 俺たちの眼前に、真っ赤な頭蓋骨が現れた。
 真っ赤な頭蓋骨は白い炎に包まれフワリと浮かび上がり、炎が蛇のような形になりクネクネ動く。
 そして、頭蓋骨の口がカタカタ動き出した。

『久しぶりじゃの、ワイト』
「ウム。数百年ぶりダ。元気にしていタカ?」
『おおとも。そちらのお二方は……ふむ、そういうことじゃな?』

 カカカカカカカカ!! と、地面から大量の人骨が飛び出してきた!!
 全て真っ赤な頭蓋骨だ。真っ白な炎が頭蓋骨を包み込み、蛇のような形となって空中に揺らめいている。まるで浮遊する大蛇……人間くらいの長さの、白い炎の大蛇。
 こ、これが……幽鬼族、なのか。
 真っ蒼になる俺とディアーナに、眼下の赤い光を揺らめかせながらワイトさんが言う。

「村長、コチラ……幽鬼族のファントムでス。ワタシの古い知り合いでしテ」
『ファントムじゃ。よろしく頼むぞ、村長殿』
「…………ど、ども」

 そう返すのが精一杯だった。
 なにこれ。怖すぎる。どう見ても友好的に見えない。怖い。
 ディアーナは、俺の腕にしがみついて巨乳をこれでもかと押し付ける。怖くて感触がわからん。

『すまんの。ワシらの移住に関して、出向いてくれたようじゃな。見ての通り、ワシらは夜しか完全に実体化できん。日中は頭部だけで、動くこともできんのじゃ……』
「そ、そっすか」
『その代わり、夜はほぼ無敵。夜間の護衛はお任せくだされ。日中は、薄暗い場所に骨を安置してもらえれば』
「は、はひ」

 怖くて声が裏返ってしまった。
 超ぶっちゃけるが、この種族は村に来てほしくない……エルダーリッチより怖い。
 
『白猫族たちが、たまに確認しに来てくれるんじゃ。白猫族たちとは仲良くやれるぞ』

 え、そうなんだ。怖くないのかな?
 ディアーナは俺の腕にしがみついたまま言う。

「え、えええと……こほん、一つお願いが。何名……名? えっと、何体か、緑龍の村に来ていただければ。その、村を作るにあたっての希望など聞きたいので」
『ふむ、そういうことか。では……ワシの娘、シルキーを預けよう。シルキー、シルキー!!』
『はぁい』

 現れたのは、やはり真紅の頭蓋骨……娘って、どの辺が娘なんだ? というかどうやって繁殖するんだ?
 シルキー……さん? は、真っ赤な頭蓋骨に白い炎を帯び、蛇のような形ではなく、まん丸に翼が生えたような炎の形をしていた。どうもこの炎、自由な形にできるらしい。
 シルキーさんは、俺の前に浮かんで言う。

『シルキーです。私が緑龍の村に行きますので、よろしくお願いします!!』
「は、はい」
『ふふ、楽しみです~』

 乙女なのかな……恐怖しか感じないけど。
 シルキーさんは、俺に手を差し出すように言う。言われた通りにすると、俺の手に頭蓋骨がぽとっと落ちた。

「っひ」
『では、行きましょうか。あ、それとも泊まっていきます?』
「いえ帰ります」
「帰ります。はい」

 俺とディアーナは即答……ってか、マジでここ長居したくねえ!!

 ◇◇◇◇◇

 頭蓋骨を手に白猫族の集落へ。
 俺はミュディがいるシロネちゃんの家に向かうと、ミュディが出迎えてくれた。

「あ、おかえり」
「た……ただいま」
「……なんか疲れてるね」
「まぁ……」
「って、その骨なに!? あ、赤い……けど」
「あ、ああこれは」
『はじめまして!! シルキーです!!』
「───……」

 いきなり喋った赤い頭蓋骨を見て、ミュディは卒倒した。
 いろいろあったが……とりあえず、移住希望の種族を確認した。
 あとは、種族の希望を聞いたり、新しい村の場所を考えたりしなくちゃな。
 やることがいっぱいある。さぁさぁ、これから忙しくなるぞ!!
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