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2・フワリとした走馬燈
しおりを挟む「·········」
どうやら、生きている。
右腕に刺さっていた矢は抜けてたが、代わりに腕が折れていた。
装備は殆どダメになってる。服は焼け鎧は溶けてなくなってる。左腕に装備した『聖盾パンドラ』はそのままだった。
あれ、火球が直撃したのに火傷してないな。
「·········し、ぬ」
仰向けなので、周囲の状況が分からない。
分かるのは………魔王の支配する魔王領土の空は、気持ち悪い紫色だということだけだ。
「·········」
ぼんやりと考えた。
レオンたちは、人間を裏切った。
聖なる武具を持つ俺たちで勝てないと分かると、魔王に命乞いした。
そして、魔王の甘い言葉に唆され、人間を裏切った。
「······ふざけ、やがって」
意識が朦朧とし、昔のことが頭をよぎる。
まずいな、これって走馬灯だよな。
ちくしょう、こんなところで死んじまうのか。
眠い·········もう、だめ。
『あ、いたいた。って······ボロボロじゃないですか⁉ あぁもう、死んじゃいますって‼』
フワリとした何かが、俺の額に留まった。
********************
この世界は、大きく二つに分かれてる。
1つは、人間が住まう人間界。
もう1つは魔界と呼ばれる人間界ではない世界だ。
魔界は別の世界に存在するらしく、モンスターと呼ばれる生物が魔界に空いた人間界へ通じる小さな穴を通って現れる。
過去に魔界から現れた魔王が、人間界を侵略するために人間界の一部を征服した。
そこは『魔王領土』と呼ばれ、凶悪なモンスターや魔王が住まう城がある。
そして魔界から来た魔王は、人間界を手に入れるため侵略を開始した。
だが、人間とてタダでやられるワケがない。
人間界最高の技術で作られた聖なる武具を使い、魔界のモンスターや魔王の一族と戦ったのだ。
そして、聖なる武具に選ばれし勇者たちにより、一度は魔王を封印することに成功した。
だが魔王は魔界でさらなる力を付け、封印を破り復活した。
一度の封印から100年。
その力は、魔王を封印したかつての勇者より強大になっていた。
圧倒的な力で、再び人間界は侵略された。
一度は取り戻した領土も、再び魔王領土となった。
そして聖なる武具は、新たな勇者たちを選んだ。
意思を持つ武具と呼ばれ、装備者を自ら選ぶと呼ばれた伝説の武具。
人間界の中心王国であるギンガ王国。
その王国から離れた場所にある、小さな村。
そこに、5人の少年少女たちがいた。
俺ことマイト、レオンにウラヌス、サテナとネプチュン。
伝説の聖なる武具に選ばれた、5人の幼馴染だった。
********************
ギンガ王国から離れた場所にある小さな村。
俺とレオンは、朝から村の広場に集まっていた。
まだ12歳。遊びたい盛り。
朝から晩まで一緒にいるなんて、当たり前だ。
「おい見ろよマイト、かっけーだろ‼」
「そ、それって剣だよね。どうしたんだよ?」
「へへへ、起きたら枕元に置いてあったんだ。なんかとーちゃんたちが騒いでた隙に持ってきた‼」
幼馴染のレオンの手には、装飾の施された剣が握られてた。
鞘もキレイな装飾がされ、見るからに高級品だ。
「レオン~、マイト~っ‼」
「あ、サテナとネプチュンだ」
長い黒髪のサテナと、金髪のネプチュンが来た。
が、手には12歳の少女に似つかわしくない物が握られてる。
「これ見て、スゴい······あれ、レオン、それって?」
「朝起きたらあった」
「私と同じね」
サテナの手には反り返った片刃の剣、ネプチュンの手には弓が握られてた。
「あのねマイト、パパとママが大騒ぎしてたの。なんか王国に知らせなきゃーって」
「そ、そうなんだ。あの、近いよネプチュン」
「えへへー······ん? マイト、何持ってるの?」
「あ、いやー······」
「お、なんだよそれ?」
「マイト、貴方もなのね?」
俺の背後には、籠手と一体型の小さな丸盾(ラウンドシールド)があった。
レオンを驚かせようと思ったけど、先を越された上に、サテナやネプチュンも持ってたから出すに出せなかったのだ。
「なんだろうね。カッコいいけど」
「さーな。でもよ、この剣はオレのだぜ‼ だってとーちゃんもかーちゃんも鞘から剣を抜けなかったんだ‼」
「あ、あたしの弓も誰も弦を引けなかったよ」
「私の兄さんも、この剣を抜けなかったわ」
「へぇ、みんな一緒なんだ」
すると、パタパタと足音を立てて1人の少女が現れる。
「みんな~~~っ‼ あうっ⁉」
「う、ウラヌス⁉」
手に杖を持ったウラヌスが、盛大にコケた。
「う、うぅぅ······うぁぁぁ~~んっ‼」
「おいウラヌス、大丈夫か⁉」
俺は駆け寄りウラヌスを抱き起こす。
ウラヌスの服を叩き砂埃を落とし、ハンカチで顔を拭う。
「はい。もう大丈夫」
「ひっぐ······ありがと、マイト」
「うん」
ウラヌスはちょっと鈍くさい。
レオンやサテナは笑い、ネプチュンはむくれる。
「もうウラヌスばっかズルい~~っ‼ ねぇマイト、あたしも~~」
「な、なにがだよ」
「んん~~かお、拭ってよ~~」
「えぇ⁉」
「だ、だめだよ‼ ネプチュンは転んでないでしょ」
「あっはっは‼ いいぞやれやれ」
「もう、止めなさいよレオン」
俺たちは手に武具を持ったまま騒ぐ。
すると、広場の入り口に大人たちが集まって来た。
「あれ、村長じゃん」
村の村長が、俺たちに向かって来た。
村長だけじゃない。他にも父さん母さんたちもいる。
「選ばれし子………か」
村長が深刻な顔で呟き、俺たち5人は顔を見合わせる。
「お前たち……大事な話がある」
深刻な顔の村長と共に、俺たちは村長の家に向かった。
**********************
「お、オレが勇者だって!?」
「そうだ。聖なる武具がお前を……お前たち5人を選んだのだ」
村長の話は難しかった。
簡単に纏めると、この人間界最高の5つの武具が俺たち5人を選んだこと、そして武具に選ばれたからには魔王を退治しなきゃいけないこと、さらにこれからギンガ王国へ行って王様に報告すること、極めつけは王国で生活し、魔王を倒すために武具を使いこなす鍛錬をすることだ。
「いっやっほ~~~~っ!! 聞いたかマイト!! 勇者、オレが勇者だってよ!!」
「お、落ち着けよレオン。それに、みんなが勇者だろ?」
「へっ、勇者ってのは聖剣を持つ戦士だ。お前のは……盾? だろ」
「う……」
「なら私も勇者ね。ほら見て、この剣」
「チッチッチ、甘いなサテナ。剣ってのは両刃なんだよ。そんな細い片刃剣は聖剣じゃねえ!!」
「そうかしら? 何なら試して見る?」
「ほっほ~~っ、おもしれぇ!!」
「ちょ、おい止めろって。サテナもレオンを煽るなよ」
「はいはい。悪かったわマイト」
サテナとレオンはよくケンカする。
それを止めるのはいっつも俺の役目だ。
「ねぇねぇネプチュン、勇者ってスゴいのかなぁ?」
「うんうん。きっとスゴいよ!! 勇者になればいっぱい美味しい物食べれるよ」
「ホント!?」
「うん。ウラヌスは……ケーキ食べ放題っ!!」
「やったぁ~~~っ!! じゃあネプチュンは?」
「あたしは……シュークリーム食べ放題っ!!」
「やった~~~っ!! ねぇネプチュン、私にもちょうだい!!」
「もちろん!!」
こっちはこっちでワケが分からん。
はぁ、ここは俺がしっかりしないとな。
すると村長が言う。
「今、王国へ使いを出している。使いが帰ってきたら5人ともギンガ王国へ出発だ。それまで、家族とゆっくり過ごすがいい」
たぶん、暫くは父さん母さんたちに会えないんだろうな。
だけど仕方ない。それに、実はギンガ王国に興味もある。
それから解散し、自宅に戻る。
父さん母さんは俺との別れを悲しむが、一方で誇りにも思ってるらしい。
そりゃそうだ、だって勇者だもんな。
そして1週間後。
ギンガ王国から騎士がやって来て、俺たちの持つ武具を見た。
「……間違いない」
「ああ、聖なる武具だ」
初めて見た騎士はかっこよく、レオンはキラキラした目で見てる。
サテナは興味なさそうに、ウラヌスとネプチュンは俺の腕にくっついていた。
「うぅ~~」
「ウラヌス?」
「騎士……こわい」
「あたしは別に~~」
「じゃあなんでくっついてるんだよ……」
「だってウラヌスばっかズルいじゃ~ん」
「はいはい」
ウラヌスはまだ甘えん坊だ。
それに比べてネプチュンはちょっとマセてる。
「なぁなぁマイト、騎士ってカッケェな!!」
「おお。強そーだしな」
俺も男の子、騎士に憧れはある。
すると、武具を見ていた騎士が俺たちに向く。
「話は聞いてると思うが確認する。これからキミ達はギンガ王国の国王に会って貰う。そしてこの武具を使いこなせるように、訓練して貰うよ」
「そ、それって……王国で暮らすんでしょ!! やったぜ!!」
「王国かぁ……都会だなぁ」
「ねぇねぇ。美味しいお菓子あるかなぁ」
「ウラヌス、そればっかり」
「でも、きっとあるわよ」
俺たち5人は、王国での暮らしに心を振るわせた。
そして、家族に別れを告げて生まれ育った村を出発した。
俺たちの、辛く厳しい修行が始まったんだ。
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