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3・ギンガ王国と王様と修行

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 ギンガ王国。
 それは、人間界最大の王国にして中心の国。
 規模はもちろん、住んでる人間の数もハンパじゃない。
 当然、この王国の象徴であるお城もメッチャデカい。

 「おぉ~~~……」

 馬車に揺られながら、俺は城下町を眺めていた。
 道行く人はそれぞれが違う顔に格好だし、冒険者や商人、さらには傭兵なんかもいる。
 城下に並ぶ家屋も石や煉瓦造りで、村にあった木の造りの家は殆ど無い。
 馬車の窓を開けると、村では味わえない都会の香りがする。

 「うぅ~~ん。甘い匂い~~」
 「ホントだ~~~」

 ウラヌスとネプチュンが窓から顔を出して外の空気を……いや、ニオイを嗅ぐ。
 確かに。パン屋とかお菓子屋から甘い匂いがする。

 「おい見ろマイト、冒険者だぜ!! カッコいい!!」
 「ホントだ。すげぇ」
 「確かに……憧れるわね」

 サテナはウラヌスやネプチュンみたいな女の子趣味より、俺やレオンみたいな男の子趣味に興味を示した。
 
 「そろそろ着く。さぁ、おとなしくしてなさい」
 「「「「「は~い」」」」」

 窓を閉め、キチンと座る。
 大人のカッコいい騎士がいうと、何か違うな。
 

 そして、俺たちを乗せた馬車は王城へ入っていく。


 **********************


 城下町を抜けた先は森になっていた。
 そこを馬車で抜けるとメッチャ広い広場があり、その先に王城がある。
 どうやらこの広場は王様の演説があるときに、国民が集まるスペースらしい。

 森も広く、川が流れたり小鳥が飛んでいた。
 都会もいいけど、俺としてはこういう森の方が落ち着く。

 「さぁ着いたぞ。これから陛下に謁見だ。失礼のないように」
 「「「「「はい!!」」」」」

 俺たちは全員、それぞれの武具を持ち、城の中へ。
 城の中に入ると緊張からか無言になる。レオンでさえ黙っていた。

 見たことの無いような煌びやかな造りの廊下を進み、案内の騎士とは別の騎士が守る、大きな扉の前に着く。
 騎士が扉を開けると、その先の広間……謁見の間に到着した。
 俺たちは緊張して立ち止まってしまう。

 「近くに寄れ」

 固い、岩のような声が聞こえた。
 その声の主は、まるで岩のような男だった。

 「ほぅ、それが聖なる武具……」
 
 あ、あれが国王か。
 服の上からだけど、筋肉がハンパないのがわかる。
 ちょっと胸を張れば、着てるシャツのボタンも弾けそうだ。
 顔も厳つく、まるで熊みたいだ。
 王様の隣には、同い年くらいの少女が2人いた。誰だ?

 「緊張せんでよい。さて、まずは自己紹介だな。私はギンガ王国の王、シュバーンだ」
 
 なるべくフレンドリーに話してるんだろうが、それでも怖い。
 ニコッと笑ってるんだろうが、ニィィゴォォッ!! って感じだ。
  
 「ひ、ひぃぃ……」

 あ、ウラヌスが泣いちまう。
 杖を抱えてプルプル震えてる。

 「あ、あの王様!! その……こ、この武具って、聖なる武具ですよね、じゃあ俺たち、魔王と戦うんですか!?」

 俺は思わず立ち上がって聞いた。
 ウラヌスのために、早く終わらせるしかない。

 「そうだ。その武具は魔王軍との戦いにおける切り札。キミ達は勇者として、この国で鍛錬を積んでほしい」
 
 王様の話は、村で聞いた話と一緒だった。
 魔王の復活により、モンスターが頻繁に現れ始めたこと。
 そして、これから5年間ギンガ王国で鍛錬を積んで武具を使いこなす。
 そして、17歳になったら魔王討伐の旅に出る。

 「我がギンガ王国の軍勢が、人間界と魔王領土の境界を守護してる。魔王は復活したばかりで力が弱いが、聖なる武具が無ければ封印出来ない。なので5年キミ達の鍛錬に当て、それから魔王討伐に出て貰う」

 5年。その間はギンガ王国の軍がモンスターから国境を守る。
 魔王も復活したばかりで弱ってるが、目覚めたばかりの聖なる武具も同じ。
 5年では魔王の力は完全にはならない、だが俺たちは5年あれば武具を使いこなせるということか。
 すると王様は、隣にいた少女たちを紹介してくれた。

 「おぉそうだ、紹介しよう。私の娘のリリーシャとルルーシェだ。年も近いし、良き友人となってくれ」

 やっぱお姫様だったか。
 金髪のルルーシェ様に銀髪のリリーシャ様。どっちもスゴい美少女だ。
 顔立ちも似てるし、双子かな?

 「初めまして勇者さま。私はリリーシャと申します」
 「私はルルーシェです。どうぞよろしく」

 2人は立ち上がり、ドレスをチョコンとつまむ。
 気品もあるし、お姫様なんだなぁ。

 「さて、長旅で疲れただろう。今日はゆっくり休むがいい」


 こうして、俺たちの王城生活が始まった。


 **********************
 

 学ぶことはたくさんある。
 まずは、それぞれの武具の特性を理解すること、そして身体を鍛えることから始まった。

 俺の武具は盾と一体型の籠手(ガントレット)。不思議とサイズはピッタリで、12歳の子供の手にもフィットした。
 
 武具にはそれぞれ役割が有り、レオンの聖剣が前衛、サテナの太刀が中衛、ネプチュンとウラヌスが後衛で、俺は全体の守護とサポートに長けている。

 俺の武具、『聖盾パンドラ』の能力は守護。
 5つの武具には特殊な能力が3つ備わっている。
 俺の盾の能力は、各種領域展開・感知・絶対防御の3つだ。

 『各種領域展開』は、いろいろなフィールドを出せる。
 遮音フィールドだったり、認識阻害フィールド、当然ながら防御フィールドなど。
 『感知』は盾に付属する常時発動型能力で、様々な気配を感知する。集中すれば小石の落ちる音や、水滴の落ちる音も聞こえる。

 そして最後……『絶対防御』は、究極の防御フィールド。
 どんな攻撃も防げるが、1度使うと24時間は全ての盾の機能が停止する。

 俺の訓練は攻撃を見切る訓練と近接の回避訓練、様々な武器を盾で受け流すのが主だった。
 一応、剣術の訓練も受けたけど、そこらの一般騎士レベルまでしか使えなかった。まぁそれでもかなり強いんだろうけど。

 だけど、盾の扱いは誰にも負けない自信がある。
 一般騎士レベルの剣なら、3人相手でも捌けるぜ。

 
 そして、俺たちが城で生活を始めて2年が経過した。
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