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5・ケーキの味と出発前夜
しおりを挟む2年後、俺たちは16歳になった。
俺たちはかなり強くなった。
レオンとサテナの相手を出来る騎士はもはや居ない。なので、俺たちは3人で模擬戦を繰り返していた。
ネプチュンやウラヌスも強くなり、ネプチュンの弓の腕は超一流、ウラヌスの魔術も王国一のレベルにまで成長し、俺たち5人は、人間界最強とまで呼ばれるようになっていった。
俺たちの関係も、少し変わった。
まず、レオンとリリーシャ様が婚約した。
リリーシャ様のアプローチはだんだんと激しくなり、とうとうレオンがリリーシャ様に手を出したのだ。
そのことを相談されたときは、俺も頭を抱えた。
「ま、マイト……どうしよう」
「なんだよレオン、深刻な顔して……」
「お、オレ………リリーシャ様とヤッちまった……!!」
「………は?」
レオンは、いつも通りにリリーシャ様とお茶を飲む約束をしたらしい。
だけど時間帯が何故か深夜。そしてリリーシャ様は風呂上がりで、もの凄く色っぽいネグリジェを着ていたらしい。
「し、下着がスケスケでよ、流石にオレも直視できなかったんだよ」
「………」
リリーシャ様を直視できず、出されたお茶を一気飲みしたらしい。
すると徐々に身体が熱くなり、気が付いたら朝だった。
隣には、裸で眠るリリーシャ様がいたそうだ……。
「ああぁぁぁ……オレってやつは、オレってやつは……」
「………」
コイツ、盛られたことに気付いてないな。
まぁいいだろう。王様はリリーシャ様の気持ちを知ってたし、レオンも好青年と見られてたしな。
遅かれ早かれリリーシャ様のお婿になってただろう。
と言うかリリーシャ様……意外と肉食なんだな。
レオンはこんな感じだ。
そして、サテナは最強の女剣士と呼ばれてる。
本人も満更ではなさそうで、町を歩くとサインをねだられるらしい。
「だけど……何故か女性ばかりなのよね」
それが唯一の悩みだそうだ。
ネプチュンは、相変わらず俺にアプローチを仕掛けてくる。
それも、ウラヌスと張り合うように、だんだんと過激になってくるのだ。
「ねぇマイトぉ~~今夜どう?」
「………何が?」
「決まってるじゃん。オトコとオンナの……」
「………」
「あ、ネプチュン!! なにやってんの~~っ!!」
「げ、ウラヌス」
「げってなによげって!!」
この2人もケンカする。
まぁじゃれあいみたいなもんだ。それに、俺は……。
「あ、あのさウラヌス。行きつけのケーキ屋にさ、新作のモンブランが出たみたいなんだ」
「そうなの? いいなぁ」
「よかったら……一緒に行くか?」
「ホント!? 行く行く!!」
「むぅ~~~」
ネプチュンには悪いけど、俺はウラヌスが好きだ。
ウラヌスも多分だけど、俺の事が好きかも。
「マイト、ありがとね」
「あ、ああ」
「えへへ……」
ウラヌスの微笑みは、俺の1日の癒しになってる。
可愛いし、それに見てるとフワッとした気持ちになる。
もうすぐ17歳。魔王討伐の旅が始まる。
**********************
俺はいつもの森で、ふーちゃんと話してた。
今日のケーキはモンブラン。ふーちゃんも大満足だ。
『いやぁマイトさん、このモンブランは最高でしたよ』
「ああ、確かにな。俺もすっかりケーキ好きになっちまったよ」
『ボクもです。これもマイトさんのおかげですよ』
真っ赤な文鳥のふーちゃんは、今日も可愛い。
俺が掌を前に出すと、その手に乗る。
「あのさ、ふーちゃん。もうすぐだけど……暫くお別れになるんだ」
『え……』
「実は、17歳になったら魔王討伐の旅に出るんだ。だから最低でも数ヶ月は会えない」
『そうですか………魔王ですか』
「うん。だから、できる限り時間を作って会いに来るよ。おいしいケーキをいっぱい買ってくるからさ」
『マイトさん……』
俺はふーちゃんの頭を指でなでる。
するとふーちゃんは、自分の羽を1枚、嘴でむしった。
「お、おいふーちゃん?」
『マイトさん。これを持って行って下さい』
「これ、ふーちゃんの羽?」
『はい。こんなことしか出来ませんが……お守りです」
「ふーちゃん……ありがとう」
ふーちゃんが嘴でくわえてたのは、2センチほどの1枚の真っ赤な羽。
俺はそれを受け取り、ケーキの箱に入っていたナプキンで包む。
「帰ってきたら、いっぱいケーキを買うからさ、また一緒に食べよう」
『はい。実はボクも用事があって、少し留守にするんです。帰ってきたらまたお話ししましょう』
「ああ………ん?」
『お、来ましたね』
振り向くと、金髪の少女がいた。
16歳という年相応に成長した美少女。
姉であるリリーシャ様と妹であるルルーシェ様は、その美しさから『銀の太陽と金の月』と言われていた。
確かに、この美しさは金の月だが、俺は未だに喋ったことがない。
「る、ルルーシェ様、こんにちは」
「………」
「あ、あの」
あれ、いつもはすぐに行っちゃうけど、今日は行かない。
視線は……ケーキの箱と、ふーちゃん?
「も、もしかして……ケーキとふーちゃんですか?」
「……っ」
あ、顔が赤くなった。しかも目を逸らした。
「ケーキは無いですけど、ふーちゃんなら」
「………」
お、恐る恐る近づいてきた。
俺はふーちゃんを乗せた手を差し出す。
ルルーシェ様は俺の隣にちょこんと座り、ふーちゃんをそっとなでる。
『こうやって撫でられるのは気持ちいいですな』
「ははは、気持ちいいそうですよ」
「………」
無言。
ま、いいけどね。
「ルルーシェ様、動物が好きなんですか?」
「………」
か、会話にならねぇーっ!!
お姫様なのに、リリーシャ様とは全然違う。
だけど、ふーちゃんを撫でる手つきは、スゴく優しいな。
『マイトさん、そろそろいいですかな?』
「あ、ああ。ありがとう、ふーちゃん」
「………」
ふーちゃんは飛んで行った。
ルルーシェ様は、ふーちゃんが飛んで行った方向を見つめてる。
お姫様だし、気を遣っておこう。
「あの、ふーちゃんは呼べば来ますんで、いつでもどうぞ」
「………」
ザ・無言。
少しくらい反応してくれよ………。
するとルルーシェ様は立ち上がり、来た道を引き返す。
「………ありがとう」
ポツリと、耳を赤くして呟いた。
**********************
それから17歳になるまで、ふーちゃんとは時間が空いたら会いに行った。
すると、何故かルルーシェ様もタイミング良く現れ、いつの間にか2人と1匹で過ごす時間が増えた。
ルルーシェ様は相変わらず喋らないが、ふーちゃんを撫でると表情が和らぐ。
そんな横顔を見つつ、俺とルルーシェ様は森でケーキを食べた。
そして17歳になり、魔王討伐の旅に出る日の前日。
王城では出発前夜の決起会が行われ、王様と王妃様、2人の姉妹が俺たちを激励する。
食事会が開かれ、俺たち5人と王様家族でディナーを楽しんだ。
食事が終わり、レオンはリリーシャ様の部屋へ。恐らく、会えない分の愛を刻み込むのだろう。オンナの味を覚えたレオンは、年相応の女好きになっていた。
俺たちは各自の部屋に戻り、明日の出発に備えて就寝する。
だけど、俺は1人森へ向かった。
手にはケーキの箱を持って。
「ふーちゃん、いるかい?」
『……マイトさん? こんな夜分にどうしたんです?』
「いや、明日出発だからさ。これ……」
『これは……』
「食事会で出たケーキ。暫く食べれないからさ」
『マイトさん……』
ふーちゃんは俺の肩に停まると、俺が差し出したケーキを食べ始めた。
あっという間に完食し、俺はナプキンで顔を拭く。
『美味しかったです、こんなに美味しいケーキは初めてです』
「よかった。どうしても今日食べて欲しかったんだ……」
『……そう、ですか』
ふーちゃんには伝わった。
俺がもし死んだら、もうケーキは食べられないからだ。
「ふーちゃん。またね」
『はい………ん?』
「え……」
俺は心底驚いた。
だって、なんでここに……こんな夜中に。
「る、ルルーシェ様……?」
「………」
ドレス姿のルルーシェ様。
いつもと同じ無表情だが、何故か悲しげに見えた。
「あ、あの、何故ここへ……」
「………」
おいおい、もしかして幽霊じゃ……。
「え……」
「………」
ルルーシェ様は、俺に抱きついた。
そして、耳元で呟いた。
「死なないで……」
声は、悲しげに震えていた。
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