勇者は魔王に屈しない〜仲間はみんな魔王に寝返った〜

さとう

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6・小動物の同窓会

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 「…………う」

 何だろう、額がカサカサする。
 俺は……生きてる、のか?

 『あ、起きました? よかった~~』

 メッチャ聞き覚えのある可愛らしいボイス。
 もしかしてこの声って……。

 「ふ……ふー、ちゃん?」
 『はい。ボクですよマイトさん』
 「え、ええ……?」

 額がカサカサする原因は、どうやらふーちゃんのせいらしい。
 俺は仰向けの大の字で眠ってたらしく、起き上がるとふーちゃんが目の前でホバリングした。

 「あ、あれ? なんでふーちゃんが? それにここって……あれ、怪我が治ってる?」
 『まぁまぁ落ち着いて。1つずつ整理しましょうか』
 「う、うん」

 服はボロボロで殆ど半裸だけど、怪我がキレイに治ってる。
 ミスリルソードは失ったけど、『聖盾パンドラ』は左手に装着してる。
 それより、なんでふーちゃんがここに?

 「ふーちゃん、なんでココに?」
 『ああ、実は同窓会がありまして。魔界に近いここで開催する事になったんです。ここは瘴気も溢れてますし、丁度いいんですよ』
 「ど、同窓会?」
 『はい。ボクと一緒に地上に来た仲間です』
 「そ、そうなんだ……」

 ふーちゃんの同窓会……気になる。
 文鳥がいっぱい集まってるのかな。行ってみたい。

 「あ、あと、なんで怪我が治ってるんだ?」
 『それはボクが治しました。マイトさんには世話になってますし、ちょっとしたお礼です』
 「ふーちゃん……ありがとう」
 『いえいえ。それよりボクも聞きたいんですけど、なんでこんなとこに? マイトさんの気配がしたので飛んできたんですが……魔王はどうしたんです?』
 「………」

 魔王。
 レオンたちの裏切り。 
 そして、俺を殺そうとしたウラヌスたち。

 「……負けた。魔王は……強すぎる」
 『……そうですか、では、これからどうするんです?』
 「……」

 俺1人じゃどうしようもない。
 恐らく力が回復次第、魔王は人間界を襲う。
 だけど、聖なる武具でも魔王を倒せなかった。それに、俺の盾以外はみんな魔王側にある。
 はっきり言って詰みだ。

 「……ギンガ王国に帰還する。それで王様にレオンたちの裏切りを報告する」
 『なるほど。じゃあ丁度いいですね」
 「は? ちょうどいい?」
 『はい』

 ふーちゃんは俺の肩に留まると、羽をパタパタ広げた。

 『ボクの仲間に会って下さい、みんなマイトさんに逢いたがってるんですよ』
 「え、何で?」
 『いやー……お恥ずかしいのですが、ケーキの話をしたらみんな羨ましがって。それに、ボクにあだ名を付けてくれたマイトさんに会いたいそうで、みんなにあだ名を付けてくれませんかね』
 「………」

 正直、そんな気分じゃない。
 だけど、真っ赤な文鳥のふーちゃんの頼みは断れなかった。

 『この近くです、案内します』
 「あ、ああ……」


 ふーちゃんの先導に俺は着いて行った。


 **********************


 てっきり、木の上に大量の文鳥でもいるのかと思ったが、そうじゃなかった。
 大きな木の下に、何かが集まってる。
 
 『みなさーん。マイトさんを連れて来ましたー』
 『お、アイツがマイトかぁ』
 『あらヤダ、いいオトコじゃな~い』
 『ぶも』

 そこに居たのは、可愛い動物たちだった。
 真っ黒いヘビ、真っ白の柴子犬、緑色のブタ、真っ赤な文鳥のふーちゃん。
 流石に声にならず、ポカンとした。

 『おう、さっそくだが「けーき」とやらをくれ』
 『アタシも欲しいわ~』
 『ぶも』
 「……えと、ないです。はい」

 そう答えるのが精一杯だ。
 なんだよコイツら、まぁふーちゃんの友達だから喋れるんだろうけど、得体が知れなさすぎる。

 『その前にマイトさん、彼らにあだ名を付けて下さいよ』
 「う、うん。そういえばふーちゃんたちって、ホントの名前無いの?」
 『いやー、あるんですけど、随分昔に捨てちゃいまして』
 「そ、そうなんだ……」

 ま、深くツッコむのはよそう。
 ふーちゃんのおかげで、少しは気が紛れるし。

 「じゃあ。そこの黒い蛇は……長いから「ながちゃん」かな」
 『な、ながちゃん? マジかよ……』
 
 「んでそこの白いワンちゃんは……白くて丸いから「まるちゃん」だね」
 『あらヤダ可愛いじゃない!! でも、まるちゃんねぇ……』

 「最後に緑のブタちゃんは……「どんちゃん」かな」
 『ぶう』

 ま、こんなところだろう。
 我ながら素晴らしい名前だと思うぜ。

 『ま、まぁいいぜ。それでマイト、さっそくだけどケーキくれ』
 「ながちゃん……さっきも言ったけどないよ。このカッコ見てわかるだろ?」
 『や~ん。食べてみたいわぁ~』
 『安心して下さい。マイトさんはこれからギンガ王国へ帰るんです。着いて行けば美味しいケーキが食べられますよ!!』
 『ぶも』
 『マジかよ!? よっしゃあーーっ!!』
 『嬉しいわぁ~っ!!』
 「え、マジ?」

 ふーちゃんはともかく、黒蛇と子犬と子豚を連れて歩くの?
 っていうか着いてくるの?

 『さて、行きましょうかマイトさん。いやぁ、こうして一緒に歩けるなんて、嬉しいですよ』
 「う、うん……ま、いっか」

 レオンたちの裏切りで心が苦しいと思ったのに、俺の心はいつの間にか軽くなっていた。
 これも全部ふーちゃんたちのおかげかな。

 俺は持ち物を確認し、ポケットに多少の路銀があるのを確認した。
 まずは安くてもいいから装備を調えないと、ここから人間界の国境で装備を貰おう。それと馬を貸して貰って急ぎで王国へ帰還だ。

 「………あ」

 俺は『聖盾パンドラ』に挟んでおいた、ふーちゃんの羽が無くなってることに気が付いた。
 どうやらウラヌスの火球で吹き飛ばされたときに無くしたらしい。

 『マイトさん?』
 「……ゴメンふーちゃん。お守り、なくしちゃった」
 『ああ、構いませんよ。なんならもう一枚』
 「い、いやいいよ。ありがとう」

 こんな可愛い文鳥が自分の羽を毟るとこなんて見たくない。

 「じゃ……王国へ帰還する」

 帰ったら、王様に報告しなくちゃいけない。
 レオンたちの裏切りに、リリーシャ様はどんな顔をするだろうか。
 

 ふーちゃんとその仲間を連れ、俺は歩き出した。


 **********************


 魔王城。謁見の間にて、4人の男女が跪いていた。

 「さて貴様等……我はまだ完全に力が回復したワケではない。そこで貴様等に、モンスターの生産と管理を任せる。人間界に進行するためのコマを作り出すのだ」
 「はい。魔王様。しかし、どのように?」
 
 レオンの質問は至極まっとうだ。
 4人の心は、完全に魔王に忠誠を誓っていた。

 「ふふ、そのための魔術を教えよう。魔界への穴を開く人間にとっては究極の禁呪だ。ウラヌス」
 「はい、魔王様」
 「お前の素質なら可能だ。期待してる」
 「……はい!!」

 ウラヌスは、魔王に酔いしれていた。
 その心に、既にマイトは存在しない。
 
 「ネプチュン、レオン、サテナ、お前たちはモンスターの世話としつけだ。簡単な魔術でモンスターを使役できる。使いこなせばモンスターを手足のように操れるぞ」
 「おお、流石は魔王様」
 「これなら人間界を征服出来ますね。無駄な犠牲を出さずに、降伏させることが出来るでしょう」
 「わ~お、楽しみ~」

 魔王は立ち上がり、ウラヌスを見た。
 その瞳は怪しく光るが、ウラヌスたちには輝いて見える。

 「ウラヌス、まずはお前に我の証を刻んでやる」
 「は……はい!!」

 ウラヌスを抱き寄せ、魔王は寝室へ向かう。
 途中、ウラヌスがマイトを吹き飛ばした穴を魔術で修復した。

 「ククク······」

 魔王は、邪悪な笑みを浮かべていた。
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