勇者は魔王に屈しない〜仲間はみんな魔王に寝返った〜

さとう

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10・不穏と決意


 ルルーシェ様を部屋に送り、俺は再び森に戻った。
 森の奥には、ふーちゃんたちがのんびりしてる。

 『あ、マイトさん』
 『おう』
 『やっほ~』
 『ぶも』

 俺が手を出すと、文鳥のふーちゃんが乗ってくる。
 ふーちゃんの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じた。

 『う~ん。マイトさんに撫でられるのは気持ちいいですね』
 「ははは………」

 たぶん、もうこんなことは出来ない。
 俺はもう、覚悟を決めていた。

 「ふーちゃん。今までありがとうね」
 『どうしたんです?』
 「俺、もう一度……魔王領土へ行く。魔王は倒せなくても、せめてレオンたちをぶん殴ってやる」
 『おいおい、死ぬ気かよ?』
 「多分ね。王国も全軍を挙げて魔王領度へ進行すると思う」
 『無謀ね。あの勇者4人相手じゃムリよ』
 「分かってる。でも、この人間界を守るために戦わないと」
 『ぶも……』
 『マイトさん、勇者4人は、この人間界を管理するんですよね。だったら抵抗しない方がいいんじゃないですか?』
 「……だけど、それは魔王の支配と変わらない。レオンたちはもう、魔王の軍団の一員だから、人間たち相手にどんなことをするか分からない」
 『かーっ。でもまぁ、大事なモン守るために戦うなんてカッコいいねぇ。もしかして……あのお姫さんかい?』
 「…………」

 ルルーシェ様は確かに美人だし、一緒に居てドキドキした。
 あの人の笑顔を、崩したくない。

 「うん、覚悟は決まった。俺はルルーシェ様のために戦うよ。そのために死ぬなら惜しくない」
 
 俺は立ち上がり、左手に装備した籠手と一体型の盾を見つめる。
 守りが主体で戦闘の力は無い。
 だけど、守るために戦うならこれ以上の力は無い。

 「出兵まで出来るだけ来るよ。じゃあね」

 俺は森を後にした。
 友達になったモンスターたちに背を向けて。


 俺は、俺に出来ることをやろう。


 **********************
 

 「何故、何故これが……どういうことなんだ……」
 「ま、魔王……さま?」
 「クソ、ワケが分からん。ここは人間界の魔王領土だぞ!?」

 魔王は、取り乱していた。
 ウラヌスを寝室に連れて行くことなど、すでに忘れていた。
 そして、勇者たちに向き直る。

 「おい!! お前たち以外の……最後の勇者の遺体を確認しに行け!! 聖なる武具も落ちているはずだ、行け!!」
 「は、はははいっ!!」
 
 レオンたちはダッシュで城の外へ。
 魔王を心配したウラヌスのみが残り、魔王に話しかけた。

 「あ、あの……どうなされたんですか?」
 「ウラヌス、あの勇者は死んでない可能性がある」
 「え……」

 魔王の手には、2センチほどの赤い文鳥の羽があった。
 

 「まさか………人間界に」


 **********************


 『で、どーすんだ?』

 ギンガ王国の森の奥で、1匹の黒蛇が言う。

 『ボクは行きますよ。マイトさんには世話になりましたし、そのためなら……』
 『アナタね……昔の名前は捨てたんでしょ?』
 『今回は別です。それに、魔王が人間界を支配したら、美味しいケーキが食べられなくなっちゃいますからね』
 『確かにな。まさか勇者が裏切るとは思わなかったぜ。今まではいー感じで均衡が保たれてたけど、今回はダメだな。マイト1人じゃどーにもならん』
 『ぶも』

 白い子犬と緑の豚も相づちを打つ。
 赤い文鳥はパタパタとホバリングした。

 『皆さんはお好きにどうぞ。そもそも、ボクだけで』
 『アホたれ。オレも行くぜ、まぁケーキの礼だ』
 『あたしもよ。せっかくだし、遊んであげる』
 『ぶも!!』
 『……はぁ、皆さんは魔王領土に住んでたんですよね? ボクみたいに人間たちの環境で暮らしてないのに、どうしてそこまで?』
 『別にいーだろ。まぁ……マイトはいいヤツだ。フツーはこんな黒い蛇見たら逃げ出すぜ?』
 『ま、あたしたちと喋れる人間なんて居ないし、マイトが死んだらケーキが食べれなくなるしね』
 『んだよ、結局はケーキかよ』
 『いいでしょ別に、美味しかったんだもん』
 『ぶもも!!』


 小さなモンスターたちも、覚悟を決めた。


 **********************


 「……おい、ここだよな」
 「多分……」
 「で、でも……なんもないよ?」

 レオンたちは、マイトが吹き飛ばされた辺りを重点的に調べていた。
 そして、吹き飛ばされた距離を計算し、おおよその位置に向かうと、地面が陥没してる場所を発見した。しかし。

 「……まさか、マイトのヤツ生きてる?」
 「恐らく。見事に何もないし、モンスターが死体を食べたにしても、衣服や装備の欠片もない。それに、『聖盾パンドラ』も見つからない……」
 「ね、ねぇレオン、サテナ……もしかしてマイト、ギンガ王国に帰ったんじゃ……」
 「チ、あの野郎……!!」
 「これで私たちはお尋ね者ね。まぁ関係ないけど」
 「だな。人間界を支配しちまえば、そんなの関係ねぇ」
 「と、とにかく魔王様に報告しよっ!!」

 3人は、魔王城へ帰還した。
 急ぎ謁見の間に向かい、魔王バルバロッサに報告する。

 「……そうか」
 「ま、魔王様……マイトが生きてるのが、そんなにヤバいんですか?」
 「いや、考えすぎかもしれん。だが……」
 
 魔王の手には、真っ赤な文鳥の羽があった。
 サテナが、首をかしげて質問する。

 「あの、その羽は……?」
 「………これか、これは」

 すると、魔王の掌にあった羽が、いきなり燃え尽きた。

 「な、何が……!?」
 「ま、魔王様、無事ですか!?」
 
 ネプチュンが驚き、ウラヌスが心配する。
 だが、魔王はつまらなそうに嗤うだけだった。

 「予定変更だ。これより人間界に向けて進行する、1ヶ月で準備を整えろ。それと、これから私は全力で力を回復させる。恐らく9割ほどの力を取り戻せるはずだ」
 「え、ええっ!? マジですか!?」
 「急げ!!」
 
 それだけ言うと、魔王は寝室へ消えた。
 4人の勇者は唖然としたが、指示に従うほか無かった。

 「とにかく、指示に従おうぜ」
 「ええ。モンスターたちを城の前に」
 「おっけ~。ふふふ、なんかやる気出てきたよ!!」
 「みんな、目的のために頑張ろう、それぞれの目指す未来へ!!」

 4人の勇者は合図も無く武具を構え、掲げる。
 幼馴染みとして、そして大切な仲間として、目的を果たすため。

 「オレは、自分だけのハーレム王国を作るため」
 「私は強い者が集まる武人の国を作るため」
 「あたしはお菓子がいっぱいの王国を作るため」
 「私は……魔王様の妃になるため」

 ドス黒く、暗黒に染まった聖なる武具。
 醜い欲望の色が、そのまま現れているようだった。


 こうして、魔王軍と呼ばれるモンスター部隊は、人間界に進行を始めた。
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