勇者は魔王に屈しない〜仲間はみんな魔王に寝返った〜

さとう

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13・さぁ始めよう蹂躙を。

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 『………来たわね』
 「え?」

 俺たち王国軍は現在、魔王領土に入り進んでいる。
 このまま進めば、あと数日で魔王城へ到着する所で、まるちゃんが言った。
 
 「来るって……」
 『ええ。敵よ』

 まるちゃんがそう言うと、先行していた斥候が慌てて戻ってきた。

 「て、敵です!! モンスターの軍勢です!! オークとオーガ、そして空にはワイバーンとガーゴイル!! 数は不明、この先の草原で部隊を展開して待ち構えています!! そして中には勇者サテナと勇者ネプチュンの姿が確認されました!!」

 遂に来たか。
 それに、勇者たちがコンビを組むのも予想通り

 俺たち王国軍は、部隊をいくつかに分けて進んでる。
 俺こと勇者部隊は、俺を隊長とした騎士団の精鋭で固められていた。

 「サテナか、アイツらしいな」

 恐らく、正面からぶつかるつもりだ。
 元々小細工が好きじゃないサテナらしい。ネプチュンはサテナのサポートで間違いないだろうな。

 「全軍展開。まずは……俺が話をする」

 たぶん、意味は無い。
 だけど……最後に話くらいはするか。


 俺たち国王軍は、この先の広場へ向かった。


 **********************


 「やはり……生きてたのね、マイト」
 「サテナ……ネプチュン……」
 「やっほ~」

 草原の中心に、俺とサテナとネプチュンは集まっていた。
 後方には人間の部隊とモンスターの部隊。
 そして気が付いた。

 「お前たち……その武具」
 「ああ、なんか真っ黒になっちゃったのよ。でも性能には問題ないわ。むしろパワーアップしてる」
 「ふふふ~。今度こそ終わらせてあげるね」

 邪悪な笑みを浮かべる2人。
 やっぱダメか。でも、不思議とすんなり受け入れていた。

 「自分の王国なんて、マジで言ってんのか?」
 「当然よ。それに、このお遊びを終わらせたら、人間界の領地を3分割する話が決まってる。私とレオンとネプチュンの、新しい王国としてね」
 「3分割?……ウラヌスは?」
 「ふっふっふ~。ウラヌスはぁ~……魔王様のお妃でーす!! ビックリしたでしょ~? ねぇ今どんな気持ち? 好きだった幼馴染みが取られちゃって、どんな気持ち?」
 
 ウラヌスが……魔王のお妃か。
 ははは、なんだよそれ。面白いな。


 「別に?」


 そりゃそうだろ? 俺はルルを愛してるからな。
 それに、サテナやネプチュンだって、魔王軍だし。

 「ここまで来たらもう戦うしかないな。悪いが……お前たちは敵だ」
 「……今度こそ殺してあげる、かつての幼馴染みとしての慈悲よ」
 「あたしも、な~んか今のでムカついちゃった」


 こうして、戦争が始まる。

 
 **********************


 俺は自陣まで戻り、馬に跨がる。
 これから全軍に突撃指示を出し、正面からぶつかる。

 恐らく、勝てない。
 オーガとオークとワイバーンの部隊は、間違いなく1万はいる。
 だけど、やるしかない。
 せめてサテナとネプチュンだけは地獄に送る。

 「勇者マイト、全軍展開しました!!」
 「ありがとう」

 俺はこれから、全軍に処刑宣告をする。
 勝ち目の無い戦いに、兵士たちを送り出す。
 
 遠目でも分かる。
 サテナたちは、余裕の笑みを浮かべ、にやついているのが。
 こちらの兵力を完全に把握し、自分たちが出るまでも無いと踏んでる。

 ちくしょう、そのとおりだ。
 はっきり言って、モンスターの半分も倒せないだろう。
 だけど、もう戦うしかない。
 
 俺はミスリルソードを抜き、天に掲げる。
 全軍兵士が、それぞれ武器を構え直す。
 
 「──────全軍」
 
 俺は処刑宣告をしようと、声を出した時だった。



 『あ、ちょっと待って下さいマイトさん』



 俺の肩に留まる赤い文鳥が、そんなことを言い出した。


 **********************


 俺はずっこけそうになった。

 「ふ、ふーちゃ~ん……」
 『あはは、すみません』

 馬の足下には、まるちゃんとどんちゃんとながちゃんがいた。
 ふーちゃんは、俺の肩に留まったまま言う。

 『マイトさん。ここはボクたちに任せて下さい』
 「え……」
 『マイトさん、ボクは貴方に感謝しています』
 「ふ、ふーちゃん?」

 まるちゃんたちも、ゆっくりと前に進む。

 『ま、美味いケーキの礼だ』
 『前に言ったでしょ? 魔王を食べちゃうって』
 『ぶも』

 俺の肩のふーちゃんも、俺の前でホバリングする。

 『マイトさん。前に言ったの覚えてますか? ボクたちは昔の名前があるって』
 「あ、ああ。それが……?」
 『ボクは……人間界の空気が好きなんです。温かくて、気持ち良くて……だから、魔界を捨ててこっちに来たんです』
 『ま、オレたちもだけどな』
 『魔界の空気は陰気でね~。お肌や毛並みにも悪いのよ。でも故郷だし、ニオイに近い場所に住んでたけどね』
 『ぶも』
 
 みんなが何を言いたいのか分からない。
 だけど、何かをしようとしてるのはわかった。

 『マイトさんには美味しいケーキを頂きました。昆虫や木の実ばかり食べていたボクにとって、衝撃の味でしたよ。今回は溜まりに溜まった恩を、返させて頂きます』
 「ふ、ふーちゃん……何を」
 
 ふーちゃんたちは、ゆっくりと前に出る。

 『さて皆さん。行きましょうか』
 『おお、マイト、終わったら美味いケーキ頼むぜ!!』
 『あのお姫様のケーキでもいいわね』
 『ぶも!!』


 そして、それは始まった。


 **********************


 「さて、マイトのお手並み拝見ね」
 「な~に言ってんの? もう終わりじゃん」
 「まぁ、マイトは私たちで仕留めましょう。せめてもの慈悲よ」
 「は~い」

 モンスターの軍勢の後方で、サテナとネプチュンは待機していた。
 どうせ自分たちの出番はない。あるとしたらマイトぐらい。

 「………ん?」
 「……な、なに?」

 ザワリと、背筋が震えた。
 まるで、かつて対峙した魔王のような感覚。

 「………え」
 「………は?」


 それは、現れた。


 **********************


 ふーちゃんの身体が灼熱の炎に包まれ膨張する。
 そのまま上空に飛び上がり、現れた姿は……巨大な炎の鳥。
 触れただけで燃え尽きそうな、まるで不死鳥。
 
 ながちゃんの身体は伸びる。どんどん伸びて太くなる。
 真っ黒な大蛇は数百メートルでは足りない長さ、計る事すら難しい。
 漆黒の体軀に黄金の瞳。ガパッと開いた口の大きさだけでもかなりの大きさ。
 
 まるちゃんの身体ゴキゴキと音を立てて大きくなる。
 純白の毛並みに全てを砕くキバ、全てを切り裂くツメ。
 放たれる咆吼は、聞くモノ全てを凍り付かせる。

 どんちゃんの身体は膨らむ。
 ムクムクと豚のまま、サイズだけが大きくなる。
 でっぷりと、全ての攻撃を無効化する超肉体。


 「は………?」

 俺の目の前に、巨大な何かが現れた。
 
 『さーて、やりますか皆さん』
 『へへへ、この姿も久し振りだぜ』
 『ちょっと、雑魚ばっかじゃない。くんくん……魔王城の辺りにドラゴンやベヒーモスがいるわね、さっさとここ片付けて、あっちに行きましょ』
 『ぶもも』

 一言でいうなら。

 燃えさかる巨大な炎に包まれた鳥。
 数百メートルの長さを誇る黒い大蛇。
 超巨大な白い狼。
 超巨大な緑の豚。

 「ふ、ふー……ちゃん?」
 『ではマイトさん。この辺りの雑魚はお任せを』


 圧倒的蹂躙が始まった。


 **********************


 魔王は、得体の知れない気配を察知し寝室から飛び起きた。
 感じて分かる。気配は4つあると。

 「ま、まさか!? そんなバカな!? 4匹だとっ!?」

 力は9割ほど回復した。
 だが、そんなことは一切関係ない。
 究極の非常事態が発生した。

 乱暴に寝室のドアを開け、謁見の間に向かう。
 するとそこには、レオンとウラヌスがいた。

 「ま、魔王様?」
 「どうかなされたのですか?」
 「どけ!!」

 魔王は謁見の間を抜けてバルコニーへ。
 魔力を集中し、戦場となってる草原を見た。


 「は、ははは………バカな」


 絶対的強者である魔王が、頬を引きつらせ呟いた。
 フラフラと後ずさり、尻餅をついた。

 「ま、魔王様!?」
 「魔王様!!」

 レオンとウラヌスが魔王を支える。
 魔王の顔は真っ青になり、震えていた。
 が、急に真顔になりレオンたちに指示を出す。

 「お前たち、全軍を率いて人間たちを迎え撃て」
 「え、で、でも」
 「行け。命令だ」
 「は、はい」
 
 ウラヌスとレオンは魔王から離れる。
 そして魔王は、2人に言った。

 「レオン、お前は人間最強だ。お前の剣技で切れぬ者はいない。その剣で望む物をつかみ取れ」
 「は……はい!!」
 「ウラヌス。この戦いが終われば、お前を妃に迎えよう。我が愛する妻として、これからも頼むぞ」
 「はい……」

 レオンはやる気に満ちあふれ、ウラヌスは頬を染め涙を浮かべる。
 2人は王国軍を迎え撃つべく、戦場へ向かっていく。
 
 魔王は謁見の間の王座に座り、一息つく。
 全てを悟った表情で、呟いた。



 「さて、逃げ………魔界に帰るか。うん」



 魔王は、あの4匹を見た時点で戦意喪失していた。
 魔王が魔界を支配できたのは、あの4匹が居なかったからだと、自分でも深く理解していた。

 かつて、魔界を支配していた最強のモンスター。
 突如として姿を消したが、まさか人間界に居るとは思わなかった。

 
 「『魔炎鳥フェニックス』に『蛇帝ナーガラージャ』に……『王狼マルコシアス』に『暴食豚アバドン』か……ははは、何の冗談だ。人間界がこんな魔境とは……うむ。やはり魔界が1番だ。帰ろう」


 こうして、人知れず魔王の脅威は去った。
 この日から魔王は、人間界に一切の干渉をすることを止めた。


 当然、4人の勇者はそれを知らない。
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