勇者は魔王に屈しない〜仲間はみんな魔王に寝返った〜

さとう

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16・罪人の女勇者

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 サテナの猿轡が外され、やはり俺に来た。

 「マイト、ごめんなさい、私どうかしてたわ······今になって分かる、なんであの時、貴方が魔王の誘いに乗らなかったのか」
 「いや当然だろ。俺は人間界のために戦ってたんだぞ? 最後の最後でどうして裏切れるんだよ」
 「それは······だって、私たちは17歳なのよ⁉ 人生の半分も生きていない、あんな命が掛かってる状況で大人しく死を受け入れるワケないじゃない!!」

 逆ギレかよ。
 だけど、サテナは決定的に俺とは違う。

 「サテナお前······諦めてたのか?」
 「当たり前でしょ!! 私たちが魔王に挑んだとき、傷1つどころか椅子から立たせることも出来なかったのよ!? あんなバケモノに勝てるワケない!! あんな状況で魔王の誘いに乗るのは悪い事なの!?」
 「そうだな。それに分かったよ。俺とお前は決定的に違う」
 「え……」
 
 サテナは意味が分からないといった感じだ。
 俺は冷静に、表情を変えずに言う。


 「俺は、あの状況でも諦めてなかったぜ?」


 そう、そこが俺とサテナ······いや、4人との違いだ。
 俺は命を掛ける覚悟で戦った。世話になった人達、ふーちゃん、王様やリリーシャ様、そしてルル。
 ここに住む人たちのために、命を掛けて戦った。
 
 確かに死ぬのは怖い。
 だけど、怖いから命乞いするんじゃなく、怖いから戦った。
 諦めなければ、どんな強敵でも活路はある。

 「サテナ、怖いのは分かる······だけど、命乞いして助かった先に、何があった?」
 「そ、それは」
 「それがこの結果だよ。罪を受け入れてやり直せ」
 「う、うぅぅ······うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 サテナは絶叫した。
 たぶん、本当に自分の間違いに気が付いたんだ。
 だけどもう遅い。サテナのしたことは立派な犯罪だ。
 
 「勇者サテナ、お前には50年の強制労働の刑に処す!!」
 「………」

 サテナは項垂れてる。
 悔やむ気持ちがあるなら、50年後にやり直せ。

 「王国所有の農園での作業に勤しめ。50年後に釈放だ」
 「……はい」

 王国所有の農園って、犯罪者たちを集めて働かせてるところだな。朝から晩まで広大な農園の雑草取りや害虫駆除、炎天下の中ずっと外で働きっぱなしのキツい仕事だ。
 収穫の時期になると身体がガタガタになるし、冬は冬で収穫した作物の加工業務があるから休む暇もない。レオンと同じくらいの激務だな。 

 「……マイト、ごめんなさい」
 「……ああ。じゃあな」
 
 本心からの謝罪だ。
 だけど、俺に謝っても罪は消えない。
 しっかり罪を償ってくれ。あばよサテナ。
 
 
 さて、お次はネプチュンだ。


 **********************


 次は、ネプチュンの猿轡が外される。

 「マイト~~~っ!! ごめんなさいごめんなさいぃぃぃ~~っ!!」
 「うるさっ」

 猿轡が外されると同時に、ビービー泣き出した。
 けど俺にはわかる、これは嘘泣きだ。

 「まお~が悪いの~~~~~っ!! あたしは悪くない~~~~~っ!! 助けてよマイト~~~~~っ!! うぁぁぁぁぁぁ~~~~~ん~~~っ!!」

 うるせぇ。
 コイツは嘘泣きだ。だから信用出来ない。
 昔からそうだった。ネプチュンは都合が悪くなると泣き出すことが多かった。
 俺もよくダマされたっけ……よし。

 「分かったよネプチュン。落ち着けって」
 「うぇぇ~~~~~~っ!!」
 「王様、ネプチュンは恐らくダマされたのでしょう。こんなか弱い少女、魔王にしてみれば操りやすいコマの1つだったに過ぎません」
 「む。確かに」
 「………………へ」
 
 あ、泣き顔の途中で嗤いやがった。
 まぁ昔から見てるのは王様も同じだ。俺の意図を正確に理解してる。

 「ネプチュン、お前は魔王に操られてたんだな?」
 「そ~だよ~~~~~っ!! うぁ~~~~~ん」
 「じゃあ悪いのは魔王か?」
 「そうそう、そうなの~~~~~っ」
 「じゃあ俺にしたことは?」
 「そ、それも魔王のせいなの~~~~~っ!!」
 「そーいえば、お前の放った矢が3本も腕に刺さったっけ。あんなノリノリで矢を放つお前が、操られてたとは」
 「………あ、その、ごめんなさいぃぃぃ~~っ!!」
 「なぁネプチュン。お前は国境の砦の兵士たちを何人殺した?」
 「………えと、その」
 「俺にしたことはいい·········ゴメン嘘、よくない。だけどな、お前はお前の意思で人間を殺した。その時何を考えてた?」
 「あ、いや~~……」
 「どーせ何も考えなかっただろ?「自分の王国のためのイケニエっ!!」とか思ってたんじゃねーの?」
 「ぐぐぐ……な、なによ、なによなによ!! 仕方ないじゃん!! 魔王の言う通りにしなかったらコッチが死んじゃうんだよ!? だったら殺すしかないじゃん!!」
 「そうだな。その通りだ」
 「でしょ!?」

 こうも開き直られるとカンに触る。
 ホント、なんでコイツはこんなになっちまったんだ。

 
 「それと同じだ。お前が操られようがそうじゃ無かろうが、お前を赦すわけにもいかないんだよ。大人しく罪を受け入れろ」


 ネプチュンの顔が怒りに染まる。
 誰に対する怒りなんだか。俺か? 王様か? 国か?

 「勇者ネプチュン、お前には50年の強制労働に処す!!」
 「ふ、ふふ、ふざけんじゃねぇぇぇーーーッ!! こ、このあたしが、あたしがーーーッ!! うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 レオンと同じくらいネプチュンは暴れた。
 ネプチュンのやつ、あんな声も出せたんだな。

 「お前には王国の管理する下水施設での清掃労働を命ずる。50年後に釈放だ」
 「ふざけんじゃねぇ!! あたしにクソの処理をさせんのかこのクソジジぃ!!」
 
 下水施設での清掃労働か。
 まぁこの王国の人間の排泄物を処理する施設だしな、キレイなワケが無い。
 お菓子好きで綺麗好きのネプチュンにとっては地獄だろうな。たぶん王様もそれが分かってるからそこにしたんだ。

 「がぁぁぁっ!! 覚えてろ、覚えてろよぉぉぉぉっ!!」

 ネプチュンは鬼のような形相だった。
 極限状態でおかしくなっちまったのかね。


 そして最後……ウラヌスの番だ。


 **********************
 

 最後、ウラヌスの番だ。
 ウラヌスの猿轡が外されると、やっぱ来た。

 「マイトくん、私……間違ってた。私、貴方がいないとダメなの……」
 「あ、そうなの」

 確かに、昔はウラヌスに恋してた。
 だけど今は可愛い恋人がいる。

 「マイトくん、私……あなたとやり直したい。私が間違ってた、魔王を愛してなんかいなかった、私が愛してるのは……」
 「ごめんウラヌス。もう勘弁してくれ」
 「え?」

 だって、ルルが睨んでるし。
 するとルルが王族の席から降りてきて俺の隣へ。しかも、これみよがしに俺の腕を取る。

 「ごめんなさいねウラヌス。マイトと私は婚約したの、貴女の入る余地なんてないわ」
 「はい?……こ、婚約?」
 「ああ。ルルーシェ様……ルルは俺の愛する人だ。ウラヌス、俺の心配はない。お前は遠慮なく罪を償ってくれ」
 「え? え? え? こんやく? マイトくんが?」
 「魔王の妃になれなくて残念だったな。罪を償ったら、きっといい出会いがあるさ」
 「うそ、うそだよね?」
 「じゃあなウラヌス………元気でな」

 ウラヌスの頬はピクピクしてる。
 まるで、表情の作り方を忘れたようだった。

 「勇者ウラヌス。お前は50年の強制労働に処す!!」
 「あ、あはは……あはははは……」

 多分、俺ならウラヌスを受け入れてくれると思ってたんだろうな。
 だけど、魔王に寄り添った時の笑顔は忘れられない。あの瞬間、ウラヌスはもう俺の知るウラヌスじゃなくなってた。

 「お前には王国の管理する収容所で労働を命じる。50年後に釈放だ」

 要は犯罪者たちのお世話係だな。それこそ犯罪者の世話は犯罪者の仕事だ。施設の掃除からメシの支度からを全て行う。朝から晩まで犯罪者たちの相手はキツい。これも激務だな、しかも50年間。

 「あは、あはは……あはははは……」
 
 ウラヌスは、半笑いのまま連れて行かれた。
 これで全員が裁かれ、罰を与えられた。

 これからレオンたちは、魔術で加工された首輪を付けられ、それぞれの作業場に送られる。
 首輪は自力では外せず、少しでも魔力を練ったりすると電気が流れるようになっている。さらに、その作業場の責任者には、首輪を発動させる起動スイッチが渡される。
 これで逃亡も出来ないし、命令に従うほかない。

 17年間、一緒に育った幼馴染みは、全員がいなくなった。
 だけど、失っただけじゃない。

 「マイト、大丈夫?」
 「ああ。ありがとう、ルル」
 「いいの、私は貴方の婚約者でしょ?」
 「そうだな……」

 
 手に入れた物だって、きっとある。
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