はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう

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学園生活、そして

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『ごめんなさい、団体戦に興味はないの』
『いやよ。めんどくさいし』

 エルクは自室でため息を吐いた。

「はぁ~……」

 武道大会、チーム戦。
 3人一組で出場できるとのことで、エルクはメリーとヤトを誘ったのだが、実にあっさりと断られてしまったのだ。
 かと言って、他に誘えるような友人はいない。
 
「ま、今はいいか。武道大会、まだ先みたいだし」

 と───エルクは『学園案内』を読みながら、大きな欠伸をした。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 この日から、学生食堂が利用できる。
 質素でメニューは決まっているが、料金は無料。
 ショッピングモールに食べに行く生徒も多いが、エルクは学生食堂を使うことにした。
 さっそく食堂へ行くと……。

「あ……て、テメェ!!」
「ガンボ。おはよう」
「うるせぇ!! テメェのせいで、オレは、オレは……」
「?」

 ガンボは朝からプルプル震え、エルクに殴りかかろうとする。
 エルクが右手を上げた瞬間、ガンボはビクッと震え手を下ろした。
 そして、舌打ちをして食堂のカウンターへ。
 すると、エルクの肩をニッケスが叩く。

「おす、エルク」
「おはよう、ニッケス……ガンボのやつ、朝から荒れてるな。腹減ってんのか?」
「違うって……ま、お前が原因だな」
「はぁ?」

 エルクとニッケスは、カウンターで朝食が乗ったトレイを受け取る。
 パンにスープ、野菜サラダ、ハムエッグに焼いた魚、ミルクという、シンプルなメニューだ。
 二人は向かい合って座り、食べ始める。
 エルクはパンを千切りながら聞く。

「で、俺が原因って?」
「ガンボのやつ、念動力使いのお前に負けたって噂が広がってな、いろんなところで馬鹿にされてんだよ」
「いやいやいや……まだ1日しか経ってないじゃん」
「噂ってのはとんでもなく回るの早いんだよ。おかげであいつ、マルコスからあっさり切り捨てられたらしいぜ」
「マルコス?……ああ、あの男爵子息か」
「ああ。ガンボも、騎士になりたくて貴族に近づいたんだろうけど、平民の、しかも念動力のお前にあっさり負けちまったからな……他の貴族たちはあいつを傍に置こうとは考えないだろうな」
「…………」
「ま、お前の責任じゃねぇよ。ありゃ教師公認の決闘で、真剣勝負だったからな」
「まぁ、そうだけど」
 
 ニッケスは喋りながらでも食べるのが速い。
 すでに食べ終わり、ミルクをゴクゴク飲んでいた。

「お前、食うの早いな」
「一流の商人ってのは、時間を無駄にしないもんさ。じゃ、お先」
「お、おい。一緒に行くんじゃないのかよ?」
「悪いな。図書館で自主勉強……すでに、一流商人への道は広がってる。あとはオレがその道をどれだけ早く歩いていけるかだ」

 ニッケスのスキルは『計算』である。
 文字通り、計算ができるスキル。今でこそ数字の計算しかできないが、知識を頭に詰め込むことで経験値となりレベルが上がる。
 レベルが上がると、『計算』は『予測』へ進化する。
 商人にとって、常に先を読む『予測』は必要な技能。スキルとなればその『予測』にハズレはない。
 
「あいつも頑張ってるんだなぁ……」

 そう呟き、エルクはミルクを飲み干し、一人で食べているガンボを見た。

「…………」

 なんとなく、その背中が寂しそうに見えてしまい……エルクは少しだけ同情するのだった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 エマ、メリーもすでに登校したらしい。
 エルクは一人、のんびり教室へ。
 教室に入ると、喧騒が一瞬だけ止み、ヒソヒソ声が聞こえてきた。

「おい、話しかけるか?」「やめとけって」「昨日のスキル、どう思う?」
「ね、誰か行ってよ」「ガンボ、また挑まねーかな」「挨拶する?」

 エルクに興味はある。だが、話すのはまだ怖い。
 そんな感じの雰囲気だ。
 エルクからフレンドリーに「おはようみんな!」と言う雰囲気でもない。まだこのクラスになって2日目なのだ……まだ、今はこのままでいい。
 エルクはそう思い、席に座る。

「…………」
「お、おはよう」

 でも───隣に座る少女、ヤトには挨拶をした。
 一応、昨日は一緒に団子を食べた仲である。
 ヤトはチラリとエルクを見て、すぐに視線を前に戻した。
 すると、教室のドアがガラッと開く。

「…………チッ」

 ガンボだ。
 エルクを睨み舌打ち、ずんずんと自分の席へ座る。
 そして、視線にイらついたのか叫んだ。

「見てんじゃねぇよ!!」

 だが、ガンボを見る眼は……どこか、軽く見えた。

「うっせーぞ、負けたくせに」

 と、誰かが小声で言う。
 ガンボは立ち上がり、椅子を蹴った。
 そして、近くにいた男子生徒の胸倉を掴み、拳を握る。

「今言ったの誰だ!? テメーか!? テメーかぁ!?」
「ひっ、ち、ちが」
「うるせ───」

 と、殴ろうとしたが……ガンボの手が動かない。
 
「やめろ、ガンボ」
「ぐ、ぬっ……テメー!! そのペテンをやめやがれ!!」
「ペテンじゃない。念動力だ」

 エルクはガンボへ手を向けたままだ。
 念動力が、ガンボの身体と腕を固定していた。
 エルクが右手の五指を動かすと、ガンボの五指が開いていく。
 ガンボの拘束から離れた男子が、ガンボの足を蹴った。

「バーカ!! おいエルク、やっちまえ!!」
「え……?」
「そうよ!! あんた、デカい声でうるさいのよ!! あんたみたいなのが騎士になんかなれるわけないわ!!」
「そうだそうだ!! おいエルク、そいつをこらしめろ!!」
「…………」

 いつの間にか、ガンボを非難する声で教室は溢れていた。
 クラスの悪となったガンボは、歯を食いしばりプルプル震える。
 エルクは───こんなこと、望んでいなかった。

「───っつ」
「ガンボ、その」
「うるせえ!!」

 そう叫び、ガンボは教室を出て行った。
 
 ◇◇◇◇◇◇

 教室を出たガンボは、廊下を歩いていた。
 苛立ち、そして……情けなさで胸が潰れそうだ。
 すると、前から見知った顔が歩いてきた。

「あ……ま、マルコス様!!」
「ん?」

 ペイズリー男爵家長男、マルコスだ。
 男爵位だが、ガラティン王国の男爵は他国の男爵とは違う。
 マルコスはガンボをチラッと見て、傍にいるチュータに聞いた。

「誰だか知っているか?」
「さぁ……? 知らん顔っスね。チチチチ」
「そ、そんな。あの、マルコス様」
「負け犬の顔なんて知らん。それも、念動力とかいうカススキルに負けた、カス以下の負け犬なんて、な」
「…………っ」
「チチチチっ、お気の毒」

 マルコスの傍には、ネズミ顔のチュータ。そして、ガンボよりも大柄な男子生徒がいた。

「ロックス、チュータ、行くぞ」
「うっス。マルコス様」
「チチチチ……じゃあな、負け犬」

 俯くガンボを、マルコスたちは素通りした。
 入学前から、ガンボはマルコスに仕えていた。
 だが、たった一度の敗北で……ガンボは、あっさり切り捨てられた。

「…………ちくしょう」

 ガンボはブルブル震え、そっと目元を袖で拭う。

 ◇◇◇◇◇◇

 廊下の影で、エルクはガンボの背中を見ていた。
 悪いとは思っていない。
 勝負は正々堂々と戦ったし、最初にエルクを馬鹿にしたのはガンボだ。
 でも、こんな形でガンボがいろいろ失うとは、思っていなかった。

「…………」

 エルクに、何かできることはあるだろうか。
 あの、大きいけど小さな背中にできることは?
 何を言っても、突っぱねられる気がする。
 でも……Fクラスの、追い詰められたガンボを攻撃するような言葉を浴びせるクラスメイトたちよりは、馬鹿で単純だけどまっすぐエルクにぶつかってきたガンボのが、信用できる。

「…………よし」

 エルクは決心し、ガンボに向かって歩き出した。
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