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新クラス

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 シャカリキは「新しいクラスは数日で発表される」と言っていたが、実際に発表されたのは説明のあった翌日だった。
 シャカリキが教室に入るなり、昨日の説明など忘れたように言う。

「え~、新クラスの振り分けが終わりましたんで、今日の午後、中央広場の掲示板を確認してください。そして午後から新クラス。新しい教室で授業が始まります~~~」

 いきなりすぎる。
 さすがにエルクたちも声が出ない。シャカリキという教師の適当さに呆れる生徒たちだった。
 その日の午後。エルクたちは中央広場へ。
 スキル学科の新入生たちは中央広場へ集まっていた。

「新クラスか……なんか、実感湧かないよな」

 エルクが言うと、ガンボは。

「どうでもいいだろ。勉強する場所変わるだけだ」
「まぁ、そうだけど」

 隣を見ると、ヤトとフィーネがいる。
 ヤトはどうでもよさそうに、フィーネは中央広場の巨大掲示板を見てワクワクしている。

「ね、ヤト。一緒のクラスになれるといいね!」
「……そうね」

 ヤトは欠伸をした。
 そして、巨大掲示板の前に女性教師が現れる。
 女性教師は喉に魔法をかけ、広場に響く声で言う。

『これより、新しいクラスを発表します。確認をしたら、自分が所属するクラスに速やかに移動すること!』

 女性教師が掲示板に触れると、掲示板が淡く輝き文字が浮かび上がる。
 A~Fクラスまで生徒が振り分けられている。
 さっそくエルクは自分の名前を探すと───。

「あれ、あった」

 Aクラス、出席番号1番。
 最初の最初に名前があったので、探し始めて2秒で見つけた。
 さらに驚いたことに。

「……オレもだ」
「あ!! アタシもっ!!」
「…………ん」
「わたくしもですわね」

 なんと、ガンボ、フィーネ、ヤト、メリーも一緒だった。
 フィーネは大喜びでヤトに抱きつく。

「やった!! 一緒だね、ヤト!!」
「そうね。でも、暑苦しいから抱きつかないで」
「エルク、ガンボも!! よろしくねっ!!」
「ああ、よろしくな」
「……ああ」

 四人はもう一度掲示板を確認し、揃ってA級教室へ。
 エルクは教室に向かいながら、ちらりと掲示板を振り返った。

「…………」
「ん、エルクどうしたの?」
「いや……」

 なんとなく。このクラス分けに意味があるような……と、エルクは思う。
 掲示板に、いたずらっ子のように微笑むポセイドンの顔が映ったような気がした。

 ◇◇◇◇◇

 Aクラスに入ると、さっそく注目された。
 
「…………へぇ」
「ん、どうしたヤト?」
「気付かない?」
「……???」

 エルクは首をひねる。
 すると、ガンボが言う。

「わかんねーか? ここにいる連中、強いぜ」
「いや、なんだよそれ。いきなりでそんなのわかるわけないじゃん」
「個人戦、チーム戦でも見なかった顔が殆どだ。フン……自分のスキルを大勢の場では見せたくない連中か。情けねぇな」
 
 ガンボが鼻を鳴らすと、教室内から敵意の視線が注がれた。
 ヤト、ガンボ共に意に介していない。
 だが、エルクとフィーネは顔を寄せて言う。

「お前、わかるか?」
「わかんないよ。見て「強い!」なんて、何をどうすればわかんの?」
「いや、俺も知らん……」

 とりあえず、席は自由らしいので適当に四人並んで座り……エルクは気付いた。

「あ」
「……やあ」

 エルクの前に座っていたのは、王太子エルウッドだった。
 少しやつれたように見える。
 エルウッドは、エルクに向き直り小さく言う。

「すまない……」
「はい?」
「ロシュオ、サリッサ……守れなかった」
「え、あ、はい」
「くっ……オレは、何もできなかった」
「えっと」

 エルクはようやく思い出した。女神聖教にロシュオとサリッサが攫われたことを。
 キネーシス公爵家から何も動きがないし、新しい寮を手に入れて浮かれていたこともあり、ようやく思い出したのである。
 エルウッドは言う。

「キネーシス公爵家には王家を通じて手紙を出した。ロシュオとサリッサの誘拐、そしてキミのことも」
「はぁ」
「返事はまだない。だが、すぐにきみに知らせることを約束する」
「ど、どうも」

 よくわからないが、ラッキーだった。
 キネーシス公爵家の動きをこれで知ることができる。さらに、王家を通じて返事をすることができれば、エルクに手出しがしにくくなるはずだ。
 そこまで考えると、教室のドアが開いた。

「は~~い。ではホームルーム始めますよ~~」

 と、シャカリキが入ってきた。
 シャカリキは教壇を前に、にんまり笑いながら頭を下げる。

「アタシはAクラス担当教師のシャカリキです。ククク、これからよろしく」

 担任教師は、まさかのシャカリキだった。

 ◇◇◇◇◇

「まぁ最初だし自己紹介とかが普通なんですけど、またやるのもアレなんで各自やっといてください~~……というわけで、明後日から『ダンジョン実習』が始まります」

 シャカリキは頭をポリポリ掻きながら言う。
 Aクラスでもやる気があるのかないのかよくわからない態度だ。

「明日、上級冒険者さんが来てダンジョンについて講義します。んで明後日、実際にダンジョンに入って、冒険者がどういう仕事をするのか肌で感じてもらいます。みなさん、戦闘服と装備を明日中に確認してくださいね。それと、ダンジョンに入るチームは五名十チーム、今日は五名グループを作ろうとおもいます~~……ああ、面倒なのでクジ引きで決めます。え~~~っと……これこれ」

 シャカリキは、教壇からクジの箱を取り出す。
 中に小さな色付きの棒を入れシャカシャカ振った。

「じゃ、適当に並んでひいちゃってくださぁ~い。引いたら、チームごとに分かれて各自自己紹介を」

 エルクたちも教壇に並ぶ。
 そして、エルクの番。シャカリキはエルクを見てニンマリ笑う。

「やぁ『死烏スケアクロウ』くん。贔屓するつもりは全くないけど、個人的にはキミの活躍を期待してるよ」
「あの、その名前勘弁してください……」
「そうかい? 似合ってるよ……くっくっく」
「…………」

 エルクは無視し、くじを引いた。
 棒の色は黒だった。

「ん~、きみに相応しい色だね」

 エルクはシャカリキを無視。黒の棒を持つグループの元へ。
 棒を持っていたのは、男一人、女子三人のグループ。
 男はなんとエルウッド、女子は……全員、知らない子だった。
 
「や、エルク」
「あ、どうも」

 呼び捨てだった。 
 エルウッドとは親しいわけではない。というか、個人戦で叩きのめした相手だ。恨まれることはあっても、笑顔で呼び捨てされるような仲ではない。
 エルクは女子を見た。
 一人はエルウッドに熱視線を送り、一人はぼんやりと口を開け、最後の一人は……エルクを見ていた。
 特に、最後の一人。

「…………」
「あの、何か」
「…………別に」

 黒髪ロングヘアの少女だった。
 雰囲気がヤトに似ている。思わずヤトがいる赤い棒チームを見て、もう一度黒髪少女を見た。

「親類じゃないから。黒髪黒目、顔立ち、こっちのヒトはヤマト国の人間を見分けるの苦手って本当みたいね」
「あ、いや」
「あの『人斬り夜叉姫』を倒したあなたに興味あるだけ」
「やしゃひめ?」
「……ふん」

 それだけ言い、少女はそっぽ向いた。
 すると、エルウッドが手をパンと叩く。

「みんな。まずは自己紹介をしよう。オレはエルウッドだ」
「エルク、よろしく」

 エルクが言うと、エルウッドに熱い視線を送っていた女子がエルクを睨む。

「ジャネットですわ。ああ、エルウッド様……お見知りおきを」

 そして、ぼーっとした女子がハッとなりいう。

「……ソアラ。おなかへった」

 最後に、つまらなそうに黒髪の女子が言う。

「信楽・伽耶……カヤ・シガラキ」

 エルウッド、エルク、ジャネット、ソアラ、カヤ。
 ダンジョン実習に挑む、五人のチームが完成した。
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