召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第一章

リリーシャの指揮

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 ほんの少しだけ、時間が巻き戻る。
 魔人アベルの存在を感知し、オズワルド教師に指示を出した直後。
 教師の一人アノンが、小さな蜘蛛の召喚獣を召喚、手のひらへ乗せた。

「聞こえますか……緊急事態です」

 子蜘蛛の尻から、糸が伸びていた。
 あらかじめ、人の手や足に糸を巻き付けておき、離れた場所から糸を通して遠隔通話する『糸電話』の能力を持つ召喚獣だ。
 アノンは、引率の教師数名にこれまでの状況を説明した。

「至急、学園へ戻られたし。B級以上の生徒には戦闘準備を。戦闘に参加する人選はお任せします。大至急、戻られたし」

 アノンの連絡は教師に伝わり、すぐに生徒たちに伝わった。
 演習は中止。魔人討伐の準備が始まる。
 そして、演習の中心的生徒───リリーシャが挙手する。

「先生。私に陣頭指揮を執らせていただきたい」

 教師の一人ジャックは考えこむ。
 リリーシャはA級召喚士。B級のジャックよりも等級は高いが……まだ生徒だ。
 だが、将来を背負って立つ召喚士に指揮を任せるのは悪いことではない。それに、魔人が現れたのはアースガルズ召喚学園。
 アースガルズ召喚学園には、特A級である最強の二十一人の召喚士たちがいる。

「……わかった。A級召喚士リリーシャ。魔人迎撃の指揮権を与える」
「ありがとうございます。では……」

 リリーシャは、演習場に集まっているB級召喚士たちに告げた。

「話は聞いた通りだ。これより魔人の討伐に学園へ戻る!! 全員、戦闘準備をしておけ!!」

 リリーシャのよく響く声は、とても頼りになる。
 生徒たちは一斉に敬礼し、必要最低限の荷物を持って整列した。
 リリーシャは、弟のキリアスに言う。

「キリアス。お前の召喚獣を出せ」
「はい。姉上」

 キリアスの召喚獣『ゴーレム』は、全長五メートルの岩の巨人だ。
 フギルの命令で身体がバラバラになり、形を変えていく。
 ゴーレムの能力『組換』で、ゴーレムは巨大な岩の車輪付き荷車に変形した。

「学園まで、全力だ」
「はい!!───全員、乗れ!! すぐに出発する!!」

 召喚士たちがゴーレムに乗り込み、キリアスの命令で岩荷車は走り出した。

 ◇◇◇◇◇◇

 リリーシャたちが学園に到達したのは、たった三十分後だった。
 全身汗だくで青ざめたキリアスは、肩で息をしている。
 そんな弟をねぎらうこともせず、リリーシャはB級召喚士たちを引き連れ、校舎内へ。
 会議室に行くと、オズワルドとファルオ、そして数名の教師がいた。
 オズワルドは手をさすっている……ラビィを掴んでいたのだが、逃げられたせいだ。

「指揮権をお返しします」
「いや、リリーシャ・リグヴェータ。このままキミに指揮権を与える。好きなようにしたまえ」
「はい。では、状況を」
「うむ。ファルオ先生」
「……はい」

 ファルオは、どこかうつむきがちだった。だが、状況を説明した。

「現在、魔人はF級校舎にいます……どうやら、F級の生徒相手に……その、遊んでいるようで」
「F級!? ……じゃあ、アルフェンは……!?」

 叫んだのは、フェニアだった。
 走り出そうとしたフェニアを、グリッツが掴む。

「話は終わっていない。静かにするんだ」
「で、でも!! アルフェンが……」
「いいから、静かにするんだ」
「離して!!」

 グリッツの腕を放そうと暴れるフェニア。すると、リリーシャが近づいた。
 リリーシャは、フェニアの腕をそっと掴む。

「リリーシャさん……アルフェンが、アルフェンのところに行かないと!!」
「落ち着きなさい、フェニア……まずは状況の確認が先」
「でも!!」
「大丈夫。大丈夫だから」
「う……」

 リリーシャは、そっとフェニアを抱きしめた。
 そして、何度か頭を撫でると優しく離す。
 リリーシャは、会議室に響くような声で言った。

「これより、魔人討伐を行う。前線に出るのは私を中心に四期生と三期生。二期生と一期生はサポートを」
「「「「「はい!!」」」」」

 リリーシャを中心に隊列を組み、全員がF級校舎近くまで向かう。
 そして、見た。黒い肌に白い髪、そしてツノを生やした異形が、F級の生徒相手に殺戮を繰り返しているのを。
 フェニアは、見た。
 アルフェンが……幼馴染の少年が、怪我した身体を引きずっているのを。

「アル「フェニア、動いちゃダメ」……リリーシャさん!!」
「大丈夫。見て、あの魔人は両手から白い炎を操っている。それに……男子は殺し、女子は食っているようね。全員、あの魔人の攻撃パターンをよく見ておきなさい」
「リリーシャさん!! 早く助けないと!!」
「大丈夫。落ち着いて」
「……え」

 リリーシャは、大丈夫としか言わない。
 優しい声で、諭すように……リリーシャに、F級の生徒を助ける気はなかった。
 フェニアはもう我慢できなかった。

「リリーシャさん、私「駄目……ソニア」───うっ」

 飛び出そうとしたフェニアの首に、針が刺さった。
 そして、フェニアの意識がもうろうとする。
 なぜか、フェニアの背後に金髪の少女がいて、近くに蜂が飛んでいた。
 フェニアの意識は、もうろうとしていた。

「……アルフェン?」

 アルフェンが、フェニアを見ていた。
 フェニアは、アルフェンの熱っぽい視線に耐えられず……目をそらしてしまった。
 ふわふわした気持ちが、フェニアの胸に広がる。

「F級の生徒が全滅したら私が出る。その後、ダオームを中心に四期生と三期生も出て、残りはサポートを」
「はい、姉上」
「姉上、オレは」
「キリアス。あなたはサポートを。ゴーレムの酷使でだいぶ疲れている」
「っく……」

 リリーシャも、ダオームも……実の弟が死に掛けているのに、目もくれなかった。
 そして、ラビィが死に……アルフェンの心臓もえぐられた。
 リリーシャは腰の剣を抜き、掲げる。

「これより魔人討伐を行う!! 恐れるな!! 私についてこい!!」
「「「「「おぉぉぉぉーーーッ!!」」」」」

 リリーシャが飛び出し、ラルシドとB級召喚士たちが召喚獣を召喚する。
 魔人アベルは、アルフェンとラビィの傍から離れ、両手に白い炎を纏わせた。

「きたきた♪ うまそうな肉がいっぱい♪」

 舌なめずりをして、向かってくるリリーシャを迎撃しようとする。
 リリーシャも、剣を構えて走り、自らの召喚獣を召喚しようとする。

 戦いが、始まった───。
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