召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

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第八章

帰還後

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 隠れ家に戻るなり、ベルゼブブは叫ぶようにニュクスに言う。

「主!! なぜ、なぜあそこで戦いを止めたのですか!? 主のお力なら、ジャガーノートを始末し人間どもを一掃できたのでは……なぜ、百日後などと」
「んー……まぁ、たぶんできたと思う。でもねぇ……」

 ニュクスはそっと左腕を持ち上げると……左腕がボトリと落ちた。
 蒼白になるベルゼブブ。

「実は、あたしもまだ完全じゃないんだよねぇ。『第三の瞳マクスウェル』の酷使、ドレッドノートの無茶ぶり……作り立ての身体じゃまだ無理っぽかった。あっはっは」
「な、なんと……」
「ま、安定させるのに百日くらいかかると思う」
「おおお……!!」

 ニュクスは腕を拾い、接合部にぐりぐりとくっつけた。
 それだけで、左腕は問題なく動く。

「とりあえず、今は身体を完全にさせないと。栄養もいっぱいとって、あたしの軍団を召喚しないとなー」
「主。どこまでも付いていきます」
「ん、ありがとね。さーて……まずは手駒かな」

 ニュクスは左手を巨大化させ、空間に亀裂を生み手を突っ込む。
 
「いろいろ召喚獣を召喚したり、魔人を作ったりしたけど……下手な意志を持たせるより、欲望のままに大暴れする強いやつがいればいいかなーって思うんだよねぇ……ちょっと試してみるね」

 ニュクスは、鼻歌を歌いながら左手を動かす。空間に突っ込んでいる状態なのでベルゼブブには見えない。

「とりあえず、二匹……ほいっと」

 引き抜かれたニュクスの手には、二匹の召喚獣が握られていた。
 巨大な黒狼、そして鈍色の怪鳥。

『グオルルルルルルルルゥ!!』
『キィィエェェアァァァァ!!』

 二匹は唸り、口から涎をダラダラ流している。
 正気とは思えない様子だった。

「意志を消して、破壊衝動を増幅させてみた。とりあえずあたしの指示には従うから、百日後にアースガルズ王国で大暴れさせる。檻に閉じ込めて飢えさせておいて」

 二匹の召喚獣こと、黒狼『ファフニール』と怪鳥『フレーズヴェルグ』は檻に入れられた。
 そして、魔帝はもう一度空間の亀裂に手を突っ込む。

「主? 今度は何を」
「ん、意思のない獣は準備できたけど、やっぱりベルゼブブの話し相手は欲しいでしょ?……試作品は無駄が多くて失敗作だったけど、今度はちゃんとしたの作るから」

 試作品とはテュポーンのことだ。
 無駄や粗悪品を多く組み込んだせいで、醜悪なバケモノとなったテュポーン。意志や容姿を可愛らしくしてごまかしたが、やはり失敗作だ。
 ニュクスは、左手を細かく動かしながら舌をぺろっと出す。

「うし……これで、こう!!」

 亜空間から引き出された左手に、一人の男性が握られていた。
 褐色肌に長い白髪の男性だ。男性は床に落とされると立ち上がり、全裸のままニュクスに跪く。

「我が主。ご命令を」
「ん、じゃあ。服着てカッコよくなって! ……うん、イケメンの裸っていいわー……」
「かしこまりました」
「ベルゼブブ、よろしくね」
「はっ!! ではあなた、こちらへ」
「はっ、我が同胞ベルゼブブ」
「…………」

 新たな魔人の青年は、今までの誰より従順だった。
 ベルゼブブは別室に案内し、自分とデザインの違う執事服を着せ、髪を梳かし紐で縛る。
 外見年齢は二十代くらい。見ようによってはベルゼブブの兄にも弟にも見えた。
 ニュクスの元へ戻ると、ニュクスは「おおー」と喜ぶ。

「うんうん。イケメンいい!! ベルゼブブと……あー、名前かぁ」
「我が主。我に名前をお付け願いたい」
「うん。そうだなぁ……」

 ニュクスは少し考え、ベルゼブブを見た。

「ベルゼブブって『強欲』の魔人だよね?」
「人間が付けた名前はそうなっています」
「そっか。じゃあ、それっぽく考えよう。キミの名前は───」

 こうして、新たな魔人───最後の魔人が誕生した。
 ニュクスの最高戦力。『強欲』の魔人ベルゼブブ、召喚獣ファフニール、召喚獣フレーズヴェルグ。

 そして、『大罪』の魔人アポカリプス。

 百日後の準備は、着々と進んでいた。

 ◇◇◇◇◇◇

 魔帝ニュクス・アースガルズの襲撃。
 謁見の間にいた全ての人間に緘口令が敷かれた。まさか、特A級・S級召喚士が何もできず、一目睨まれただけで行動不能になったなど言えるはずがなかった。
 そして、あの場にいた全員が見た。
 ニュクスとアルフェンの戦い。まるで対極の存在同士の戦いは、引き分けで幕を閉じた。
 そして……ニュクスが言い残した百日後。
 軍勢を率いて、このアースガルズ王国を滅ぼすという。
 この世界最大最強の大国は、間違いなくアースガルズ王国だ。ここが滅ぼされたら、この世界の召喚士、召喚獣ではニュクスを止めることができない。
 国王は、特A級とA級に命じ、軍の準備を始めた。
 たった百日。だが、それで十分。
 特A級、そしてリリーシャ率いる『ピースメーカー部隊』は準備を始めた。
 そんな中、S級たちは……寮にいた。

「…………チッ」とウィルは舌打ち。
「はぁ……」とアネルはため息。
「…………」と無言のフェニア。
「…………」と無言のサフィー。
「…………」と無言で目を閉じているメル。

 そんな中、レイヴィニアが言う。

「魔帝様、復活した……うち、その場にいなくてよかったかも」
「お、同じく~」

 ニスロクも怯えていた。
 もともとニュクスが召喚した召喚獣の二人は、ニュクスの気配を察知してすぐに隠れていた。寮の自室に引っ込んで布団をかぶっただけだが。
 そんな二人の話を無視し、ウィルはフェニアに言う。

「あのバカ、まだ寝てんのか?」
「う、うん。熱が下がらなくて」

 アルフェンは、ニュクスと戦った直後に倒れ、酷い熱を出してしまった。
 『第三の瞳マクスウェル』の酷使による後遺症だ。ニュクスと違い、アルフェンは生身の人間だ。ニュクスのように身体を改造しているわけではないので、目の使用に負担がかかる。
 フェニアたちが落ち込んでいるのは、アルフェンのことで間違いない。だが……その落ち込みに、ウィルはズバリ言った。

「ったく、あのバカがキスされたくらいで落ち込んでんじゃおっごふ!?」

 アネルの肘がウィルの腹に突き刺さる。
 フェニアたちがピクリと反応した。すでに遅かったようだ。
 フェニア、サフィー、メルの三人が、アルフェンを少なからず想っていることを知っていたアネル。もちろんアネルも心配だが、それはアルフェンを『弟』みたいに思っての心配だ。
 メルは小さなため息を吐き……軽く頬を叩く。

「とりあえず、今後の予定……あと九十八日しかないわ。A級以上は王城に招集がかけられた。たぶん、リリーシャの指揮下に入る。それと……一時的にだけど、特A級の『封印』を解くことになった。これで二十一人の英雄は王国外で召喚獣を使える……魔帝軍を蹴散らせるわ」

 ウィルが質問する。

「オレらは?」
「S級はわたしの指揮に入ってもらう。それと、二十一人の英雄とお父様、ガブリエルの提案……この三人が同じ意見になったの初めてのことだけど。アルフェンは単体で魔帝と直接戦ってもらうわ」
「……だろうな」

 ウィルは納得した。
 現状。ニュクスの『第三の瞳マクスウェル』に対抗できるのは、同じ目を持つアルフェンだけだ。
 メルは、この場にいる全員に言う。

「わたしたちS級は、アルフェンの補佐。アルフェンがニュクスと直接戦えるよう、道を作る」
「道……」
「そうよ。フェニア、覚悟はできてる?」

 フェニアは頷く。サフィーもアネルも頷いた。
 そして、レイヴィニアとニスロク。

「おい。魔帝様と戦うなら……うちらも行く」
「す、少しは役に立てると思う……それに、ぼくらは身体が滅びても、魂はあっちに還るから」
「そう、ありがとね。でも……死ぬを前提にした助けは必要ないわ」
「いや、死なないし」
「違うのよ。あなたたちにもう会えなくなる。それがわたしたちにとっての死なの」
「「…………」」

 レイヴィニアとニスロクはよくわかっていないようだ。
 すると、ここでアルフェンが来た。ラフなシャツとズボンだけで、冷蔵庫から水のボトルを取ると一気に飲み干す。

「っぷぁ……はぁ、ようやく落ち着いた。で、みんな集まってなに話してたんだ?」
「そんなの決まってんだろ。今後の予定だ」
「ああ……」

 アルフェンはボトルを置く。
 そして、全員を見ながら言った。

「魔帝は俺が倒す。ってか、俺じゃないと倒せない」

 それは、アルフェンの決意であり、王国が望んだことだった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 その後。
 それぞれ自室に戻り、夜は更けていく。
 アルフェンは、ウィルに呼び出され、寮の裏庭にいた。
 ウィルはベンチに座り、酒瓶とグラス、そして煙管を吹かしている。

「で、なんか用か?」

 アルフェンはウィルの隣に座った。
 ウィルは煙を吐き、面倒くさそうに言う。

「お前、明日から一か月の休養だとさ」
「…………は?」
「お休みだとよ。ってか、S級は授業も中断。百日後の『戦争』に備えろ、だとよ」
「……いや、なんでお前がそれを」
「顔合わせ辛いんだろ。ったく、めんどくせぇ」

 ウィルはウイスキーをグラスに注ぎ、静かに飲む。

「腹黒お姫様の提案だ。休養中、お前が管理するイザヴェル領地でも見て来いだとよ。馬車じゃ半月くらいかかるけど、フェニアかサフィーの召喚獣なら数日で着く。ま、身体動かしたいなら走ってもいいんじゃねぇか?」
「……なんで、そんないきなり」
「決まってんだろ。魔帝は百日間身体鍛えたくらいで倒せる相手じゃねぇ。お前なりに倒す方法考えろってことだ。それに、この国にいたらお前、またリグヴェータ家のいざこざで面倒なことになるぞ」
「う……あ、お前も行くんだろ?」
「冗談。と言いたいが……お前の護衛を頼まれたからな。同行してやる」
「は? 護衛?」
「お前が死ねばこの世界は終わりだ。中にはいるんだよ……『狂信者』っていう、魔帝を崇拝するクソがな。昔、何人か仕事でヤッたことがある。『召喚獣による浄化を!』とか『魔帝は正しい!』とか屁みてぇなクソだ」
「お前、今までそんなこと言ってないじゃん……」
「言う必要なかったしな」

 ウィルは煙管を吹かす。
 不思議と、煙は甘い香りがした。

「学園も荒れるぜ。A級以上は国の防衛と戦争準備。それと、国民に公表する準備もある。『女教皇』リリーシャ率いる『ピースメーカー部隊』にお任せあれ、みたいなことも言うんだろうさ。ま、そういうクソしがらみから解放するために、腹黒お姫様が気を遣ってくれたんだ。短い最後の休暇だと思って、お前なりにのんびりしたり、魔帝を殺す算段でも付けろ」

 ウィルは、どこからかオレンジジュースの瓶を取り出しアルフェンに渡す。
 驚いて受け取りつつ、ウィルはグラスにウイスキーを注ぎ、掲げた。
 アルフェンは思う。

「お前、こんなに優しいやつだったっけ?」
「……くっだらねぇ」

 グラスと瓶がカチンと触れ合い、二人は微笑んだ。
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