召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

文字の大きさ
157 / 178
第九章

決戦間近③/子供たちの想い

しおりを挟む
 アースガルズ召喚学園。
 ここでも、戦争に向けた準備が始まっていた。
 A級召喚士はほとんど王城に向かったため、リリーシャから生徒たちを任されている生徒会メンバー数名と教師、そしてB級召喚士たちでまとめている。
 生徒の一人グリッツは、あわただしい学園内の寮室で、ディメンションスパロウの「たまぴよ」に餌をあげていた。

「戦争か……なぁ、勝てると思うか?」
『ぴゅい?』
「……なんでもない。以前のボクだったら興奮してたかもしれないけど、正直……今は怖い」

 誰もいないからこそ、心情を吐露した。
 目の前にいるフカフカした巨大な鳥のヒナは、可愛らしく首を傾ける。

「あの村。魔人が襲って来た村で……ボクは、演習じゃない『闘い』を経験した。自分で言うのもなんだけど、安全が約束された演習なんかと違って、本当の『闘い』だったよ。だからこそわかる。安全が約束された闘いなんかじゃない、命を失う危機を、同級生たちはわかっていない」

 グリッツは、部屋の窓を開けて外を見る。
 そこには、興奮したような笑みを浮かべて召喚獣を撫でる男子や、己の武器を振う女生徒がたくさんいた。グリッツは黙り込む。

「……でも、戦わなくちゃいけない」
『ぴゅるる』
「ふふ、お前を守らなきゃな。それに……」

 グリッツは貴族。婚約者がいる。
 義務的な挨拶や茶会でしか交流はない。だが……不思議と、彼女を守りたい。そんな気持ちがあった。
 そして、今はもういないフェニア。彼女のためにも。

「たまぴよ。ボクはやるよ。B級召喚士の名に恥じない戦いをする」
『ぴゅいーっ!』

 たまぴよは、『がんばれ!』とでも言うように鳴いた。

 ◇◇◇◇◇◇

 ウルブスは、リリーシャの傍で執務に追われていた。
 部隊編成の再確認、それぞれの召喚獣の特性、作戦指揮について……怠け者のウルブスにとって、リリーシャに任される執務は地獄だ。
 だが、ウルブスはなんとなく察していた。
 リリーシャと二人きりの執務室内は、ペンの滑る音しかしない。そんな中、ウルブスはペンを止めて言う。

「姫さん、なーんでオレに執務やらせる?」
「お前が一番暇そうだからだ」
「嘘だね。まぁ暇なのは否定しないけど」

 リリーシャのペンも止まる。
 ウルブスは、苦笑しながら言った。

「この戦い終わったら、部隊辞めるつもりだろ? んで、オレに押し付ける。だからこうして執務やらせたり、部隊長とかやらせるんだろ?」
「……そうだ」
「やっぱな。辞めたあとは自分の領地経営か?」
「そうだ」
「で、なんでオレ?」
「お前が適任だからだ。その洞察力、思慮深さ、実力。お前は気付いていないだろうが、人を惹きつける魅力がある。お前ならこのピースメーカー部隊を引っ張っていけるだろう」
「……魅力ねぇ? オレ、サボりたいしのんびり暮らしたいんだけど」
「そういいつつも、お前は仕事をきっちりこなす。そういうところだ」
「へいへい……ったく」

 再びペンを動かす二人。
 ウルブスは、大きな欠伸をしながら言う。

「くぁ~あ……なんで辞めるんだ?」
「私の目的は一つ。爵位を継ぎ、リグヴェータ家の領地経営だ。辺境伯となり管理する敷地は広範囲に増えた。この戦いで得た功績と共に、本格的な領地運営を開始する」
「そういや、姫さんの目的はハナから決まってたんだっけ。いいのかねぇ? 『女教皇』の地位をくれた『審判』を裏切ってさ」
「裏切りはしない。辞めるだけだ」
「へいへい。ま、姫さんは誰かの手足として動くより、誇り高き一輪の花として輝く方が似合ってる。そういうところ、好きだぜ」
「……それは告白か?」
「んー、姫さんはオレ好みだしな。結婚したら充実しそうだ。でも……オレと結婚したら部隊率いるヤツいなくなるだろ」
「そうだな……」
「それに、好みは好みだが、結婚とはまた別だ。抱き心地のいい女はベッドで愛してやれるが、生涯を共にする女はベッドの上だけじゃない、心から通じ合った相手じゃねぇと」
「…………」
「おっと失礼。ま、そういうこった。姫さんみたいなのは抱かれるより抱いてやる感じのナヨッた男だ。案外、あの王子様とかいいんじゃね?」
「……殿下は次期国王だ」
「さぁ~? ……それはどうかな? オレとしては、あの軟弱王子様より、腹黒王女様・・・・・のが王に向いてると思うぜ」
「…………」

 ウルブスはペンを止めた。そして、ニヤリと笑う。

「賭けるか?」
「なに?」
「あの軟弱王子が王になるか、腹黒王女が王になるか」
「……アースガルズ王国で女王が誕生した例はない」
「初代は女王だろ。ニュクス・アースガルズ」
「順当にいけばアースガルズ国王はサンバルト殿下を王に指名するだろう」
「順当にいけば、ね。オレは違うと思う。あの腹黒王女様がやらかすと思うぜ」
「……ウルブス。お前、何者だ?」
「さぁね。ただの暇人ってやつさ」

 ウルブスは、再びペンを動かす。
 賭けはしなかったが、謎はできた。
 リリーシャは、ウルブスが只者ではないと感じていた。だが、今はもういい。

「なぁ姫さん。仕事終わったら一杯どうよ?」
「……いいだろう」
「よっしゃ! さっさと終わらせるぜ!」

 ちなみに、仕事終わり、バーに向かった二人の間にサンバルトが乱入することになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

処理中です...