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戦いに向けて

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 午後になり、ロイとサリオスとアオイは訓練場へ。
 訓練場には、エレノアとユノが模擬戦の真っ最中だ。

「はぁぁぁぁっ!!」
「ふっ!!」

 エレノアのバーナーブレードによる斬撃をユノは躱し、レイピアで連続突き。
 エレノアはバックステップで躱すが、ユノは聖剣を『鞭剣』に変え、エレノアに向けて伸ばしてきた。
 が、エレノアはわざと聖剣に鞭剣を巻き付け、思い切り引っ張る。

「わっ」
「甘いユノ!! パワーならあたしが上!!」
「第三階梯魔法、『水霰』」
「なっ!?」

 だが、氷聖剣から手を離したユノは魔法を発動。
 細かい水の粒が大量に発射。エレノアは慌てて炎聖剣をロングソードに戻し、炎を全開にして振る。すると、炎に触れた水が蒸発した。
 ユノは氷聖剣を取り、エレノアに向かって突きを放つ。
 エレノアも、ユノに向かって剣を振るい───互いの剣が、互いの心臓付近で止まった。

「……引き分けかしら?」
「うん。エレノア、すごく強くなった」
「あんたもね」

 剣を引く二人。すると、ユノが気づいた。

「ロイ!!」
「え? あ、ほんとだ」

 ユノは駆け出すと、ロイに飛びついた。

「うわっ!?」
「ロイ、ひさしぶり……会いたかった」
「あ、ああ。あの、離れ」
「ん~」

 ユノは離れるつもりがなく、ロイの胸に頭をぐりぐり押し付ける。
 エレノアが近づいて無理やり離すと、ロイに言う。

「久しぶりね、ロイ」
「ああ。エレノアもユノも、すごく強くなったよな……驚いたよ」
「まぁね。ほらユノ、抱き着いちゃダメだっての」
「えー」
「あはは。さて、オレらも訓練しようか。アオイ、どうだい?」
「いいだろう。ふふ、サリオス殿との手合わせは久しぶりだ」

 サリオスとアオイが訓練場の中心へ。
 ロイ、エレノア、ユノは、少し離れた場所にあるベンチに座った。

「ロイ、あんた……とんでもなく強くなったわね」
「え?」
「うん。わたしも思った」
「そ、そうか?」
「……魔力が、すごく静かになってる」

 エレノアが言うと、デスゲイズが『ほう』と呟いた。

『それがわかるだけでも、お前たちは成長したようだな。単独で公爵級を相手できるくらい、強くなっているぞ』
「へー、あんたが褒めるなんて珍しいわね」
「うん」
『フン。強くなってもらわねば困る。ササライの配下を相手に負けてられんからな』
「わかってるわ。そういえばロイ……あんた、アオイと魔剣士の戦い、サポートしたんでしょ? 顔くらい見せなさいよー」
「いろいろあったんだよ」

 パレットアイズとか……とは言えないロイ。
 パレットアイズのことは、エレノアたちにも内緒だ。
 ロイは話題を変える。

「これからお前たちはどうするんだ?」
「とりあえず、大詰めね。鎧もだいぶ維持できるようになったし、戦術も見直してる。チームで戦う場合と、仲間で戦う場合の連携も。たぶん、次の戦いはこれまで以上……気は抜けないわ」
「がんばる」
「そっか……」
「ね、ロイ。お願いがあるの」
「ん?」
「今日の夕方、先輩たちと合流して軽く模擬戦をやるの。あんたも『偶然』って形でいいからさ、さりげなく来てよ」
「えぇ?」
「わたしもロイと一緒がいい」

 ユノがロイの腕にじゃれつく。
 するとデスゲイズが。

『いいだろう。今の七聖剣士がどれほどなのか、確認させてもらう。同時に、ロイの強さも知ってもらおうか……エレノア、あの巨乳ドワーフにこう言え』
「巨乳ドワーフって、ロセ先輩? あんた、殺されるわよ……」

 デスゲイズがエレノアに伝言を頼み……その内容を聞いて、ロイとエレノアとユノは驚いていた。

 ◇◇◇◇◇

 その日の夕方。
 ロイと別れたエレノアたちは、ロセたちと合流するために第一訓練場へ。
 ここは、七聖剣士専用の訓練場。
 エレノアたちが到着すると、すでにロセ、ララベル、サリオスの三人とアンジェリーナがいた。
 
「あれ、アンジェリーナさんも?」

 エレノアが言うと、アンジェリーナがうなずく。

「私は、この学園の指導員として働くことになった」
「え、マジですか」
「ああ。ロセの計らいでな」
「うふふ。修行を得て、アンジェリーナさんは信頼たる人物とわかりましたからねぇ
「ふ……そういうことだ」

 アンジェリーナは微笑む。
 スヴァルトはどこか複雑そうだが、ララベルがスヴァルトの脇を肘で突いた。

「んだよ」
「なーんか複雑そうな顔してるからねー」
「ケッ……別に、なんてことねぇし」
「はいはい。さーてみんな、修行も大詰めよ。今日から、島で底上げした力をフルに使うため、ひたすら模擬戦をするからね!! 言っておくけど、島での生活以上にキツくするつもりだから!!」

 ララベルが言うと、全員が強く頷いた。
 もう、誰も嫌そうな顔をしない。
 すると、エレノアが「あ、そうだ」とロセに言う。

「ロセ先輩。実はさっき、八咫烏が会いに来たんです」
「え?」
「あたしたちがこれから模擬戦をするって言ったら、自分も手を貸すって……もうすぐ、ここに来ると思います」
「や、八咫烏が……ここに?」
「はい」

 そう言うと、どこからともなく、八咫烏が現れた。
 気配がまるでない。最初からそこにいたように、自然といた。
 そして、七人とアンジェリーナを見ながら言う。

『全員、強くなったな……全員、俺が相手をする。かかってこい』
「「「は?」」」

 ロセ、スヴァルト、ララベルがポカンとする。
 エレノアとユノは話を聞いていたおかげで驚きはしなかったが。やはりロイと戦うのは気乗りしないのか、どこか複雑そうだ。
 アオイは「う、ううむ……どうすべきか」と迷っている。
 そして、最初に剣を抜いたのは───サリオスだった。

「八咫烏……お前がそう言うなら、オレは剣を抜く」
『…………』
「一つ、頼みがある」
『……なんだ?』
「オレが勝ったら、その仮面……外して、正体を表してもらおうか」
(おいデスゲイズ、どうする?)
(面白くなってきた。いいと言え)
(マジか……でもまぁ、俺も楽しくなってきたしいいか)
『いいだろう。持てる力をすべて使い、かかってこい』
「───行くぞ!!」

 サリオスが剣を抜き、八咫烏に向かって走り出した。
 エレノアたちも剣を抜こうとしたが、ロセが止める。どうやら、サリオスと一対一での勝負をさせるようだ。
 八咫烏は弓を構え、静かにつぶやく。

『───三分以内に、ケリを付ける』
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