85 / 109
第七章
睡蓮水龍エキドナ
しおりを挟む
俺は闘気の鎖でイザベラを拘束し、頭をペシペシ叩いた。
「おい、起きろ」
「ぐ……」
イザベラが眼を開ける。
俺は一切の容赦なくイザベラの首を掴み、前を向かせる。
そして、首を掴みキルトの方を向ける。キルトはボコボコに腫れた顔で、蔦と枝でがんじがらめにされ、がっくり項垂れていた。
「き……キルト!! あ、あぁぁ……な、なんてことを!!」
「お前の言うこと聞いた末路だろ」
「あなたの弟なのですよ!?」
「知るか。あいつは俺のこと、兄と思ったことはないだとさ。お前も、耳障りのいい言葉並べてるんじゃねぇよ。俺の魔力を奪ってキルトに与えたくせに」
「くっ……」
「お前を殺すのは、質問に答えてからだ。アキューレをどこにやった?」
「……はっ、言うと思う? それに、あなたはもう終わり。我らが盟主、イザベラ様とテュポーン様には絶対に勝てない。ふふふ……あのお方の一番である私をこんな目に合わせて、生き残れると思って? ブガッ!?」
俺はの肩にナイフを突き刺した。
こいつを傷付けることに、一切の迷いがない。
不思議なくらい、イザベラに対して心が冷え切っていた。
「い、いだぁぁぁぁぁ!? やや、やめなさい!! あなた、私は、私は、あなたの継母なのよ!?」
「母親らしいことなんかしたことないくせに。それと、次に俺の母を名乗ったら指をへし折る。俺の母は、俺を産んでくれた方だけだ」
「こ、この、え、エキドナ様ぁぁぁぁ!! お助けを、お助けをぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「うるさっ」
喉を潰して黙らせようかと手を伸ばす。
すると、俺の手に細い女の手が添えられた。
「フフ、ダメよ?」
「えっ」
水色の、ロングウェーブヘアの少女だった。
俺と同じくらいか、少し上くらい。
ほとんど白い、水色のドレスを着ている。胸元が緩いせいか、前かがみになると胸が見えてしまいそうだ。少女は、俺の手を掴んで優しく微笑んでいる。
だが───触れられた瞬間、俺は恐ろしい何かが全身を駆け巡ったような気がして、全力で飛びのいた。
「あん、乱暴ねぇ」
「え、え……エキドナ様ぁぁぁぁぁ!!」
「イザベラ。もう、情けない姿ねぇ。でも……そんなあなたも、可愛いわぁ」
「あ、あぁぁ……ありがとうございますっ!!」
何だ、こいつは。
ただの女ではない。というか、人間ではない。
俺は冷や汗が止まらなかった。目の前にいるこいつが、俺に敵意を向けた瞬間、俺は塵になる……そんなあり得ない光景まで浮かんだ気がした。
「怯えてるの?」
「えっ」
肩に手が添えられた。え? え? 俺の前に女はいるぞ?
なんで、女がいない? 何で俺の肩に手を乗せている?
イザベラの隣に……あれ、イザベラの隣に女がいない。イザベラもポカンとしている。
「あなたが、御父上の力を継承した人間ね。なかなか可愛い子」
「…………」
戦うということすら、おこがましい。
遥か格上だ。こいつは、スヴァローグなんて歯牙にもかけない強さ。
生身の俺のレベルが10だとして、変身して200くらいだとする。
こいつは、数千じゃ利かない。それくらい、絶望的な戦力差。
「スヴァローグを倒して、リンドブルムを手懐けたようだけど……それでおしまいね。今のあなたじゃ、アンフィスバエナはもちろん、私にもテュポーンにも勝てないわ」
「……そ、そんなの」
「無理なの。あなたが、人間である限りね」
エキドナは、俺の肩を優しく撫で、胸に手を這わせる。
動けなかった。下手したら、心臓を抉られる。
「そうねぇ……このまま、帰らない?」
「……は?」
「私、あなたのこと気に入ってるの。あなたが望むなら、イザベラを殺してもいいわ。エルフの子も返してもいい」
「え、エキドナ様……?」
「……お前、ギガントマキアは」
「ギガントマキアは、また作れるわ。それより……あなたを主人公にして遊ぶ方が、面白そう」
「…………」
エキドナは、笑っていた。
俺たちを逃がしてもいい。イザベラも殺してもいい。
なんだ、それは?
「次は、俺で遊ぶってか?」
「正解。ふふ、たくさん台本を考えてあげる。あなたの通う学園に、新生ギガントマキアを送り込んで戦うのはどうかしら? 御父上の力で、迫りくる敵を殲滅するの! 学園の生徒を人質にとって、あなたがこっそり救い出すとかは? 影に潜んで悪を倒すヒーロー! ああ、考えるだけでワクワクするわぁ」
「…………」
「ね、楽しく生きましょう? 私と一緒に楽しく……ね?」
こいつは、俺を『敵』と見ていない。
俺は、こいつのオモチャだ。
生きているオモチャ。俺が死ぬまで遊びつくす。
殺そうと思えば、いつでも殺せる存在。
「───……はっ」
「ん? どう、決めた?」
「ああ。お断りだね」
「あら……それは残念。で、どうするの?」
「お前を倒す。そして、二度とギガントマキアなんてクソ組織が出ないようにする」
「ふぅん? まさか……私に勝てるとでも?」
「勝てるかどうかじゃない。勝つんだ───『龍人変身』!!」
俺は変身する。
黄金の闘気を全身に巡らせ、エキドナを睨みつけた。
渾身の威嚇も、全く効果がない。
「仕方ないわねぇ。少し、遊んであげる」
「オォォォォォォォォォッ!!」
俺は巨大化させた五指に力を込め、エキドナに飛び掛かった。
「おい、起きろ」
「ぐ……」
イザベラが眼を開ける。
俺は一切の容赦なくイザベラの首を掴み、前を向かせる。
そして、首を掴みキルトの方を向ける。キルトはボコボコに腫れた顔で、蔦と枝でがんじがらめにされ、がっくり項垂れていた。
「き……キルト!! あ、あぁぁ……な、なんてことを!!」
「お前の言うこと聞いた末路だろ」
「あなたの弟なのですよ!?」
「知るか。あいつは俺のこと、兄と思ったことはないだとさ。お前も、耳障りのいい言葉並べてるんじゃねぇよ。俺の魔力を奪ってキルトに与えたくせに」
「くっ……」
「お前を殺すのは、質問に答えてからだ。アキューレをどこにやった?」
「……はっ、言うと思う? それに、あなたはもう終わり。我らが盟主、イザベラ様とテュポーン様には絶対に勝てない。ふふふ……あのお方の一番である私をこんな目に合わせて、生き残れると思って? ブガッ!?」
俺はの肩にナイフを突き刺した。
こいつを傷付けることに、一切の迷いがない。
不思議なくらい、イザベラに対して心が冷え切っていた。
「い、いだぁぁぁぁぁ!? やや、やめなさい!! あなた、私は、私は、あなたの継母なのよ!?」
「母親らしいことなんかしたことないくせに。それと、次に俺の母を名乗ったら指をへし折る。俺の母は、俺を産んでくれた方だけだ」
「こ、この、え、エキドナ様ぁぁぁぁ!! お助けを、お助けをぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「うるさっ」
喉を潰して黙らせようかと手を伸ばす。
すると、俺の手に細い女の手が添えられた。
「フフ、ダメよ?」
「えっ」
水色の、ロングウェーブヘアの少女だった。
俺と同じくらいか、少し上くらい。
ほとんど白い、水色のドレスを着ている。胸元が緩いせいか、前かがみになると胸が見えてしまいそうだ。少女は、俺の手を掴んで優しく微笑んでいる。
だが───触れられた瞬間、俺は恐ろしい何かが全身を駆け巡ったような気がして、全力で飛びのいた。
「あん、乱暴ねぇ」
「え、え……エキドナ様ぁぁぁぁぁ!!」
「イザベラ。もう、情けない姿ねぇ。でも……そんなあなたも、可愛いわぁ」
「あ、あぁぁ……ありがとうございますっ!!」
何だ、こいつは。
ただの女ではない。というか、人間ではない。
俺は冷や汗が止まらなかった。目の前にいるこいつが、俺に敵意を向けた瞬間、俺は塵になる……そんなあり得ない光景まで浮かんだ気がした。
「怯えてるの?」
「えっ」
肩に手が添えられた。え? え? 俺の前に女はいるぞ?
なんで、女がいない? 何で俺の肩に手を乗せている?
イザベラの隣に……あれ、イザベラの隣に女がいない。イザベラもポカンとしている。
「あなたが、御父上の力を継承した人間ね。なかなか可愛い子」
「…………」
戦うということすら、おこがましい。
遥か格上だ。こいつは、スヴァローグなんて歯牙にもかけない強さ。
生身の俺のレベルが10だとして、変身して200くらいだとする。
こいつは、数千じゃ利かない。それくらい、絶望的な戦力差。
「スヴァローグを倒して、リンドブルムを手懐けたようだけど……それでおしまいね。今のあなたじゃ、アンフィスバエナはもちろん、私にもテュポーンにも勝てないわ」
「……そ、そんなの」
「無理なの。あなたが、人間である限りね」
エキドナは、俺の肩を優しく撫で、胸に手を這わせる。
動けなかった。下手したら、心臓を抉られる。
「そうねぇ……このまま、帰らない?」
「……は?」
「私、あなたのこと気に入ってるの。あなたが望むなら、イザベラを殺してもいいわ。エルフの子も返してもいい」
「え、エキドナ様……?」
「……お前、ギガントマキアは」
「ギガントマキアは、また作れるわ。それより……あなたを主人公にして遊ぶ方が、面白そう」
「…………」
エキドナは、笑っていた。
俺たちを逃がしてもいい。イザベラも殺してもいい。
なんだ、それは?
「次は、俺で遊ぶってか?」
「正解。ふふ、たくさん台本を考えてあげる。あなたの通う学園に、新生ギガントマキアを送り込んで戦うのはどうかしら? 御父上の力で、迫りくる敵を殲滅するの! 学園の生徒を人質にとって、あなたがこっそり救い出すとかは? 影に潜んで悪を倒すヒーロー! ああ、考えるだけでワクワクするわぁ」
「…………」
「ね、楽しく生きましょう? 私と一緒に楽しく……ね?」
こいつは、俺を『敵』と見ていない。
俺は、こいつのオモチャだ。
生きているオモチャ。俺が死ぬまで遊びつくす。
殺そうと思えば、いつでも殺せる存在。
「───……はっ」
「ん? どう、決めた?」
「ああ。お断りだね」
「あら……それは残念。で、どうするの?」
「お前を倒す。そして、二度とギガントマキアなんてクソ組織が出ないようにする」
「ふぅん? まさか……私に勝てるとでも?」
「勝てるかどうかじゃない。勝つんだ───『龍人変身』!!」
俺は変身する。
黄金の闘気を全身に巡らせ、エキドナを睨みつけた。
渾身の威嚇も、全く効果がない。
「仕方ないわねぇ。少し、遊んであげる」
「オォォォォォォォォォッ!!」
俺は巨大化させた五指に力を込め、エキドナに飛び掛かった。
45
あなたにおすすめの小説
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる