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第一章
不安
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さて、野外演習当日。
さすがに王国の外に出れるので、サボリはいない。
ちなみに今のところ、クラスから脱走者は出ていない。よくわからんけど、脱走防止のために生徒たちをスキルでマークしているとか……まあ、発信機が付いてるようなもんだ。
今日は野外演習なので、王国が用意した軽鎧を装備する。
着替え中、為朝が言う。
「慧くん、脱走者がいないっていいね」
「なんだよいきなり」
「だってさ、こういうシチュで脱走するヤツって、スキルを隠しているやつとか、脱走して自分勝手に生きるやつとかだよね」
「そうだな。俺、めっちゃ目の敵にされてるし、脱走して世界を巡る冒険でもしようかな……」
「ハッ……それで、盗賊に襲われている馬車を救って、中にいる姫君と恋に落ちたり、奴隷の獣人少女に懐かれたりして一緒に冒険ってか? 宿に泊まるも部屋が一つしか空いていない、一緒のベッドで寝るもヘタレだから手を出せないクソ度胸ナシが!!」
「何言ってんだお前……ってか、そんな異世界あるあるシチュ期待してないっつーの」
急にキレる為朝を小突き、俺は装備を整え更衣室を出た。
外に出ると、黒鉄レオンたち四人が談笑していた。
荷物はリュック。中には野営道具が入っている。いちおう、チームで分担しての荷物なんだが……なんか、俺のチームの女子二人は手ぶらで、荷物はみんな俺が持ってる気がする。
俺のリュックめちゃくちゃデカいのに、レオンとか鎧塚のリュック小さいし。
「おせーぞ、有馬!!」
「ああ、悪い」
「フン、謝るならみんなにちゃんと謝りなさいよね」
「ああ、悪かった」
「まあまあ、さて……みんな揃ったね。相川、鎧塚、レイナ、用意はいいかい?」
「うん。レオンくん」
なんか俺がハブられてるんだが……まあいい。
すると、アリアさんが現れた。
「皆、揃ったな!! 事前に配布した地図を見ろ。そこにマークが記してあるだろう。各チームでその位置に向かい、ゴブリンの森にアプローチ、ゴブリンを二十体倒し、戻ってくる。これが演習の内容だ」
なるほど……全員でゾロゾロ森に向かうんじゃなくて、城からスタート、チームごとに別々の入口に入り、ゴブリンを倒し戻ってくる、って感じか。
「期限は一週間。ここから森までは丸一日で行ける。いいか、ゴブリンは最弱の魔獣と言われるくらい弱い……だが、決して油断するな!! では、始め!!」
というわけで、ゴブリンの森へゴブリン退治が始まった。
◇◇◇◇◇◇
さっそく、俺たち五人は城を出て、城下町を抜け、正門を通って国を出た。
「へえ……こうしてみると、本当にファンタジー世界の正門だな」
正門を見上げながら呟く。当然、誰からも返事はない。
「ふむ……街道沿いに進めば問題なく行けそうだ。今日は川沿いでキャンプして、明日のゴブリンの森に入ろう」
「うん。ね、レオンくん……ゴブリンって、どんな魔獣?」
「弱い小鬼だよ。小学生くらいの大きさで、そこそこすばしっこいけど、今のオレたちなら楽勝さ」
「う、うん」
「レイナ、心配するなって。オレが守るからさ」
「レオンくん……ありがとう」
「セイラ、セイラはオレが守るぜ!!」
「……ありがと」
おーいそこ、俺を無視して主人公パーティーやらないでくれ。
なんか、世界が違うなあ……ってか、俺を無視して歩き出したし。
「とりあえず……」
◇◇◇◇◇◇
〇有馬 慧
〇スキル『模倣』 レベル20
・現在『聖女』 レベル7
〇パッシブスキル
・オートヒール ・幸運上昇
〇使用可能スキル
・神聖魔法
〇スキルストック
・勇者・聖女・賢者・相撲取り・格闘家
・弓士・ボクサー・レスラー・盗賊・弁護士
◇◇◇◇◇◇
「……まあ、前衛がいるし、『聖女』のままでいいか。ってか弁護士を消すの忘れてた」
スキルストックは十個までできるようになった。
使えそうなスキルを残しておいたが、弁護士はいらなかったかな。
よくわからんけど、このスキル……地球での影響受けまくってるのか、レスラーとかボクサーとかあるんだよな。
ちなみに、俺はこの画面を『ステータス画面』と呼んでいる。
「ステータスオープン!!」
手をかざし、声を出してみた……クッソ恥ずかしいなこれ。
当然、画面は出ない。脳内にこの画面が表示され、脳内のポインタを操作して項目を選ぶと、その詳細が表示されるのだ。
おっと、こんなバカなことやってる場合じゃない。
「さーて、行きますか」
俺はリュックを背負いなおし、歩き出した。
でもまあ……この時は思いもしなかった。
まさか、次に戻ってきた時……とんでもないことになるなんて。
◇◇◇◇◇◇
歩くこと二時間。
俺の少し前で四人が歩き、わいわい談笑している。
すると、夢見が俺の方に来た。
「ね、有馬くん……ちょっといい?」
「ん、なに」
「あのね……ゴブリンの森でだけど、有馬くんは何もしないでほしいの」
「……え、なんで」
「あのね、レオンくん……すごく張り切ってるの。だから、レオンくんに頑張ってほしいの。有馬くん、すっごく強いんだよね? だったら、何もしなくても大丈夫だよね」
「……別にいいけど」
「本当? ありがとう!!」
そう言って、夢見レイナはレオンの方へ戻った。
「…………なんというか、お気楽だな」
別に、黒鉄レオンが大活躍して、クラスのヒーロー、主人公になるのはいい。
でもさ……ここは異世界で、お約束な展開とか期待してるのかもだけど、死んだら終わりの現実なんだぞ?
漫画やラノベでは、俺みたいなチートが「え、俺やっちゃいました?」みたいな無双するけど、実際では生き残るために必死に戦うぞ。
そもそも、戦えるのか?
俺らみたいな子供、熊とかライオンを前に「やるぜ!!」なんて気持ちになるか? 動物でさえ怖いのに、得体の知れない魔獣とか相手にできるのかよ。
「あ~……異世界あるある、嫌だ」
エンターテインメントで楽しむのはいい。でも、ここは現実だ。
こいつら死んだらどうしよう……俺、やっぱ追放されるのかな。
とりあえず……死なないよう、頑張ろう。
さすがに王国の外に出れるので、サボリはいない。
ちなみに今のところ、クラスから脱走者は出ていない。よくわからんけど、脱走防止のために生徒たちをスキルでマークしているとか……まあ、発信機が付いてるようなもんだ。
今日は野外演習なので、王国が用意した軽鎧を装備する。
着替え中、為朝が言う。
「慧くん、脱走者がいないっていいね」
「なんだよいきなり」
「だってさ、こういうシチュで脱走するヤツって、スキルを隠しているやつとか、脱走して自分勝手に生きるやつとかだよね」
「そうだな。俺、めっちゃ目の敵にされてるし、脱走して世界を巡る冒険でもしようかな……」
「ハッ……それで、盗賊に襲われている馬車を救って、中にいる姫君と恋に落ちたり、奴隷の獣人少女に懐かれたりして一緒に冒険ってか? 宿に泊まるも部屋が一つしか空いていない、一緒のベッドで寝るもヘタレだから手を出せないクソ度胸ナシが!!」
「何言ってんだお前……ってか、そんな異世界あるあるシチュ期待してないっつーの」
急にキレる為朝を小突き、俺は装備を整え更衣室を出た。
外に出ると、黒鉄レオンたち四人が談笑していた。
荷物はリュック。中には野営道具が入っている。いちおう、チームで分担しての荷物なんだが……なんか、俺のチームの女子二人は手ぶらで、荷物はみんな俺が持ってる気がする。
俺のリュックめちゃくちゃデカいのに、レオンとか鎧塚のリュック小さいし。
「おせーぞ、有馬!!」
「ああ、悪い」
「フン、謝るならみんなにちゃんと謝りなさいよね」
「ああ、悪かった」
「まあまあ、さて……みんな揃ったね。相川、鎧塚、レイナ、用意はいいかい?」
「うん。レオンくん」
なんか俺がハブられてるんだが……まあいい。
すると、アリアさんが現れた。
「皆、揃ったな!! 事前に配布した地図を見ろ。そこにマークが記してあるだろう。各チームでその位置に向かい、ゴブリンの森にアプローチ、ゴブリンを二十体倒し、戻ってくる。これが演習の内容だ」
なるほど……全員でゾロゾロ森に向かうんじゃなくて、城からスタート、チームごとに別々の入口に入り、ゴブリンを倒し戻ってくる、って感じか。
「期限は一週間。ここから森までは丸一日で行ける。いいか、ゴブリンは最弱の魔獣と言われるくらい弱い……だが、決して油断するな!! では、始め!!」
というわけで、ゴブリンの森へゴブリン退治が始まった。
◇◇◇◇◇◇
さっそく、俺たち五人は城を出て、城下町を抜け、正門を通って国を出た。
「へえ……こうしてみると、本当にファンタジー世界の正門だな」
正門を見上げながら呟く。当然、誰からも返事はない。
「ふむ……街道沿いに進めば問題なく行けそうだ。今日は川沿いでキャンプして、明日のゴブリンの森に入ろう」
「うん。ね、レオンくん……ゴブリンって、どんな魔獣?」
「弱い小鬼だよ。小学生くらいの大きさで、そこそこすばしっこいけど、今のオレたちなら楽勝さ」
「う、うん」
「レイナ、心配するなって。オレが守るからさ」
「レオンくん……ありがとう」
「セイラ、セイラはオレが守るぜ!!」
「……ありがと」
おーいそこ、俺を無視して主人公パーティーやらないでくれ。
なんか、世界が違うなあ……ってか、俺を無視して歩き出したし。
「とりあえず……」
◇◇◇◇◇◇
〇有馬 慧
〇スキル『模倣』 レベル20
・現在『聖女』 レベル7
〇パッシブスキル
・オートヒール ・幸運上昇
〇使用可能スキル
・神聖魔法
〇スキルストック
・勇者・聖女・賢者・相撲取り・格闘家
・弓士・ボクサー・レスラー・盗賊・弁護士
◇◇◇◇◇◇
「……まあ、前衛がいるし、『聖女』のままでいいか。ってか弁護士を消すの忘れてた」
スキルストックは十個までできるようになった。
使えそうなスキルを残しておいたが、弁護士はいらなかったかな。
よくわからんけど、このスキル……地球での影響受けまくってるのか、レスラーとかボクサーとかあるんだよな。
ちなみに、俺はこの画面を『ステータス画面』と呼んでいる。
「ステータスオープン!!」
手をかざし、声を出してみた……クッソ恥ずかしいなこれ。
当然、画面は出ない。脳内にこの画面が表示され、脳内のポインタを操作して項目を選ぶと、その詳細が表示されるのだ。
おっと、こんなバカなことやってる場合じゃない。
「さーて、行きますか」
俺はリュックを背負いなおし、歩き出した。
でもまあ……この時は思いもしなかった。
まさか、次に戻ってきた時……とんでもないことになるなんて。
◇◇◇◇◇◇
歩くこと二時間。
俺の少し前で四人が歩き、わいわい談笑している。
すると、夢見が俺の方に来た。
「ね、有馬くん……ちょっといい?」
「ん、なに」
「あのね……ゴブリンの森でだけど、有馬くんは何もしないでほしいの」
「……え、なんで」
「あのね、レオンくん……すごく張り切ってるの。だから、レオンくんに頑張ってほしいの。有馬くん、すっごく強いんだよね? だったら、何もしなくても大丈夫だよね」
「……別にいいけど」
「本当? ありがとう!!」
そう言って、夢見レイナはレオンの方へ戻った。
「…………なんというか、お気楽だな」
別に、黒鉄レオンが大活躍して、クラスのヒーロー、主人公になるのはいい。
でもさ……ここは異世界で、お約束な展開とか期待してるのかもだけど、死んだら終わりの現実なんだぞ?
漫画やラノベでは、俺みたいなチートが「え、俺やっちゃいました?」みたいな無双するけど、実際では生き残るために必死に戦うぞ。
そもそも、戦えるのか?
俺らみたいな子供、熊とかライオンを前に「やるぜ!!」なんて気持ちになるか? 動物でさえ怖いのに、得体の知れない魔獣とか相手にできるのかよ。
「あ~……異世界あるある、嫌だ」
エンターテインメントで楽しむのはいい。でも、ここは現実だ。
こいつら死んだらどうしよう……俺、やっぱ追放されるのかな。
とりあえず……死なないよう、頑張ろう。
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