はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう

文字の大きさ
14 / 73
第二章

女神の事情

しおりを挟む
 さて、喋る黒いネコと遭遇した。
 ネコが喋る……そういう漫画やアニメは見たことあるが、リアルで見るとけっこう怖いな。
 すると、黒猫は俺の足下へ。

『聞いてる? 女神様が、あんたに用事あるって』
「め、女神って……俺たちをこの世界に呼んだ神様だよな。スキルをくれた女神」
『そうよ。あんたに大事な話があるから、まずは話を聞きなさい。えいっ』

 ネコが尻尾で地面を叩くと、目の前に映像……すっげぇ、空中投影ディスプレイだ!! が、現れた。
 エリを見るが首を捻る。そして、いつの間にか足下のネコを撫でまわしていた。
 ディスプレイを凝視していると、画面横から顔がにゅっと現れる。

『あー……見えてるかな?』
「あ、はい」
『どもども、女神でーす』

 かるっ……フツーに横から現れて手を振っての登場だ。
 女神。すごいな、イメージ通りというか、けっこうな薄着のドレスで巨乳。背中には翼が生え、頭には光るリングが浮かんでいる。
 髪はシルバー、顔立ちは相当な美女……と、いうか。美少女?
 歳は十代後半くらいかな。俺よりちょい年上って感じ。

『さっそくだけど~……そっちの状況でちょっと、面倒なことになってるの』
「は?」
『あのね、落ち着いて聞いてね。実は……きみたちが倒そうとしている『魔王』って、実は魔王じゃないのよ』
「…………」
『本当の魔王は、私たち女神が追放した悪女神フォルトゥーナなの。今、人間たちがず~っと争っている魔王は、悪女神フォルトゥーナの部下の一人なの』
「…………は、はあ」

 いきなりでわけわからん。
 悪女神? 魔王が実は魔王じゃない?
 え、え、え……な、なんか嫌な予感してきた。

「まさか、俺に悪女神を倒せとか……」
『あっはっは。まさか、そこまでは頼まないよ。きみにお願いしたいのは、魔族の保護なの』
「魔族の保護?」
『うん。今、きみがいる土地はシャオルーンだよね? そこ、フォルトゥーナが近付けない、私たち女神の加護がた~っぷり詰まった神聖な土地なの。そこに、魔王に虐げられている魔族を保護したり、傷付いた人間たちを保護してほしいのよ』
「え、待った待った。情報量が多くてパンク寸前……魔王に虐げられている?」
『うん。今の魔王はフォルトゥーナの寵愛を受けた女神の眷属で、魔族はもともと住んでいた普通の種族なの。今は、眷属のせいで魔族が邪悪な一族ってイメージになってるけどね』
「そ、そうなんだ……でも、こんな荒れた地に保護とか、マジですか?」
『マジ。そもそもそこは、女神たちの聖域だから、堕ちた女神であるフォルトゥーナには手を出せないの。魔族と人間が荒らした地ってことになっているけど、本当は私がそうなるように仕向けて、フォルトゥーナの眷属の目から遠ざけようとしたの』
「なんと……ってか、女神ってあなた以外にもいるんですか?」
『いるよ。というか、女神は七姉妹で、地上に落ちたのが末の妹なの。私は、この世界への転移を担当しているのよ』
「……情報量多くてパンク寸前」

 ちょっと整理したい。
 えー、女神は七姉妹。で、末の妹である悪女神フォルトゥーナが追放されて地上へ。そこで眷属である『魔王』を作り、普通の種族だった魔族を支配下に置いている。なので、魔族が悪だと人間たちは考え、長い間ず~っと戦争をしている。
 ちょい疑問。

「あの、フォルトゥーナって奴が悪なのはわかりましたけど……何したんですか?」
『フォルトゥーナは、転移してきた人間にスキルを与える役目をしていたんだけど、あまりに強力なスキルばかり与えちゃうものだから、そっちの世界がメチャクチャになっちゃったのよ。で、いい加減にスキル渡すのやめなさいってお姉ちゃんたちが叱ったんだけど、やめる気配なかったから、女神の権能を取り上げて地上に追放したの。いち人間として千年間、輪廻転生を繰り返して反省しなさいってね。でも、今がちょうど五百年目で……どういうわけか、悪女神フォルトゥーナとして暗躍してるって気付いたのよ。それがつい最近ね』
「は、はあ……」
『それで、私たち姉妹は、仕方なくフォルトゥーナを討伐することにしたの。でも、人間は眷属ですら五百年以上勝ち負けを繰り返してるし、仕方ないから私のお姉ちゃんや妹が受肉して、直接フォルトゥーナを始末しに動いたってわけ。ま、お姉ちゃんが動けば、フォルトゥーナはもうおしまいね』
 
 話長いし、相変わらず情報量多い。

「それで……俺は?」
『きみは、ちょっとした奇跡の存在。スキル『模倣コピー』はフォルトゥーナが生み出したスキルの中でも最悪に近い能力なんだけど、どういうわけか最後の一個があなたに付与されちゃったの。でも、きみはいい子だし、スキルを取り上げるよりは、スキルを自由に使わせて、魔族や人間の保護をしてもらおうって話になったのよ』
「……へ、へえ」
『だから有馬慧くん。そのスキルを使って、女神の加護を受けた土地を開拓し、魔族や人間たちを保護してくれないかな』
「……は、はあ」
『よかったぁ~!! まあ、細かい事情はいろいろあるけど、話すとキリがないから。とりあえず『悪い女神がいなくなるまでスキルで領地開拓!!』って感じでお願いね』
「…………」

 な、なんか……思った以上に壮大な話。
 まさか、人間が長年争っている魔王が、実は魔王じゃなくて悪い女神の眷属だったと。そして、悪い女神を倒すために、女神が地上に降りて討伐にあたると。で……俺は、傷付いた魔族や人間を受け入れるための『皿』を用意しろ、ってこと?

『あ、そっちに私の遣いを何匹か送ったから。その子たちのスキルをコピーすれば、けっこう楽になると思うよ。遣いの子たちに名前はないから、好きに付けてあげてね。じゃ、がんば~』
「あ、ちょ」

 画面が消えた。
 中途半端に伸ばした手を下ろすと、エリに抱っこされた黒猫が言う。

『ってわけで、私が手を貸すわ。それと、外にもう一匹いるから』
「もう一匹……?」
 
 外に出ると……なんかいた。

『や、女神様の遣いだよ』
「……犬」

 白い柴犬だった。もっふもふで、スマホのコマーシャルとかに出ていそうだ。
 俺の傍まで来ると、尻尾をブンブン振る。

『きみは、この廃村を住みやすいように開拓してもらうから。やり方は自由。手始めに、ボクと彼女に名前を付けてくれるかな?』
『いいわね。ふふ、かわいい名前でお願いね』

 名前ね……黒猫と、白柴。
 まあ、第一印象で決めました。

「黒猫はクロ、白犬はシロな」
『『…………』』
「え、名前決めたの? ふふ、いい名前~」

 こうして、白犬のシロ、黒猫のクロが廃村に来た。
 あ~……スローライフかと思ったが、思った以上にめんどくさいことになりそうだ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...