靴磨きの聖女アリア

さとう

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再会

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 クロードだった。
 私に手を伸ばし、茫然とする私を見て僅かに首を傾げている。
 綺麗な明るい金髪が逆光でキラキラ光っている。私は手を借りて立ち上がり、何と言っていいのか迷う。
 
「キミは……俺のことを、知っているのか? どこかで会ったかな?」
「……あ、いや」

 私はすぐわかったけど……クロードにはわからないみたい。
 だって、六年も前だもんね。子供だったし、一年くらいしか一緒にいなかったし……しかもクロードは王子殿下だし。
 髪も、綺麗な金色……黒かった髪は、あの黄金の光を発して以来、金色のまま。
 私は、何を言えばいいのか迷った。

「どうした? 何故……」
「え?」
「何故、そんな悲しい顔をしている?」
「……あ」

 あ……そっか、私、悲しいのか。
 なんだろう。クロードに会えた喜びが胸いっぱいに溢れてるけど、今の私を知らないクロードに対しての悲しみが同時に溢れてくる。
 やっばい、なんか……泣きそう。

「ご、ごめんなさいっ……し、失礼しますっ」
「あ……」

 私は逃げ出した。
 最後、クロードが私に向かって手を伸ばした───そんな気がした。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

「…………」

 クロードは、銀髪の女生徒に無意識に手を伸ばしていたことにようやく気付いた。
 そして、自分の手を見て訝しむ。

「……なんだ、今の違和感は?」

 女生徒を見た瞬間、胸の奥に火が付いたような気がした。 
 女子の悲し気な表情が、胸にこびりついている。
 すると、クロードの背後から、女生徒を引き連れたメイリアスが現れた。

「クロード様」
「ん、ああ……ユグノー公爵令嬢」
「もう、メイリアスと呼んでと言っていますのに」

 メイリアスは、当然のようにクロードの腕を取る。
 柔らかな胸を押し付け、腕にそっと擦り寄る姿は、高級感ある猫のようだ。
 だが、クロードは香水のキツイ匂いがしたメイリアスを引きはがす。

「よせ」
「もう。クロード様は、私の婚約者なのですよ?」
「それはまだ決まっていない。正式に受理されるまでは、顔見知りというだけだ」
「寂しいことを言いますのねぇ」

 メイリアスはクスっと笑う。
 本人には言わないが、このどこか見下したような笑みが、クロードは苦手……いや、嫌いだった。
 ため息を吐き、歩きだすと……メイリアスも付いてくる。

「……何故、付いてくる」
「あら、お邪魔かしら?」
「……少し、考えたいことがある。ああ……せっかくだしお前に聞くか」
「なんなりと!!」
「……銀髪の、ロングヘアの少女を見かけたんだが……何か、知らないか?」
「…………」

 メイリアスの表情が固まる。
 銀髪。つい先ほど会ったアリアも、銀髪だった。
 メイリアスは、笑顔を凍り付かせたまま言う。

「……その子に、何の用が?」
「いや、先ほどぶつかってな。謝罪しようとしたのだが、逃げるように走り去った。怪我をしていないかどうか……それと」
「……それと?」
「いや……なんでもない」
「…………」
 
 メイリアスは、もう一度笑顔を浮かべた。

「では、私の方から謝罪しておきますので。クロード様、あなたにはやるべきことがあるのでは?」
「…………」
「では、ごきげんよう」

 メイリアスはようやく離れ、歩き去った。
 ようやく一人になったクロードは、アリアが去った方向をもう一度見た。
 そして、胸に手を当てる。

「……なんだ、この違和感は」

 どこかに、大事な物を忘れてしまったような……そんな虚無感が、クロードの胸にあった。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 部屋に戻った私は、ベッドにダイブした。

「無理……」

 クロードは、私のことなんて覚えていない。
 私との思い出も、ぜんぶ過去のこと……そりゃ、過去を引きずらず未来へ! みたいなセリフを知ったような口で言う人はいるだろう……でも、過去だって大事だった。
 それを、全く覚えていない。なんか……寂しい。

「……よし」

 もう、おしまい!!
 クロードは元気。メイリアスって婚約者もいる。それでいい。
 私は、この学園で学んで、領地に帰る。

「うん、目標出来た」

 私はベッドから起き上がり、ガッツポーズするのだった。
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