婚約者を奪われた少女は、敵国の王を守る剣となる。

さとう

文字の大きさ
22 / 28

大陸統一へ向けて

しおりを挟む
 三国を同時に攻める。
 この作戦は、あまりにも無謀で……でも、成功したらカディ様の名前は、間違いなく歴史に残る。
 私は、カディ様と向かい合っていた。

「ラプンツェル、無謀だと思うか?」
「…………」
「正直に言え」
「……はい。やはり、無謀かと」
「はっはっは。やはりそう思うか」

 ここは、カディ様の天幕。
 作戦会議が終わり、私だけ残るように言われたのだ。イカリオス隊長が反対するかと思ったけど、意外にも何も言わず、「飲みすぎないように見張っておけ」なんて……ふふ、認めてくれたのかな?
 ライ君は、私のことチラチラ見てたけど……あとでお土産渡そうかな。

「正直、無謀だとは思う。だが、これしかないと思うのも事実。時間をかければ三国を征服することは可能だろうが……一年という期間を設けた以上、この作戦しかあるまいよ」
「ま、まさか。こんな無謀な策を取るのは、自身が決めた一年という期間を守るため……?」
「ああ。俺は、自分が言ったことは必ず実行する」

 さすがに呆れた。まるで、子供みたい……。
 カディ様は、ワインを飲み欲す。

「ラプンツェル」
「は、はい」
「この戦いが終わったら、どうしたい?」
「え?」
「間違いなく、お前は手柄を立てる。望むなら爵位に領地、大金をやろう。何か欲しいものはあるか?」
「そんな……私は、命があるだけでいっぱいです。本来なら、ラグナ帝国軍に歯向かった敵兵。そのまま処刑もあり得ました。でも、カディ様は、私にチャンスをくれた……それだけで」
「ふむ。まぁいい……考える時間はある」

 カディ様はおかわりを注ごうとしたが、私はワインボトルをサッと取る。

「駄目です。飲み過ぎないように見張っていろと、イカリオス隊長に言われたので」
「くはははは! いうようになったではないか」
「あの、その代わりといっては何ですが……お茶はいかがです?」
「茶?」
「はい。私がラスタリア王国で買った、高級茶なのですが」
「ほぉ……いただこうか」

 私は、部屋にあった茶器でお茶を淹れる。
 薬草茶……すっきりした味わいの物を選んだ。
 カディ様は、ティーカップを持ち、匂いを嗅ぐ。

「ふむ、悪くないな……ん、味もいい」
「よかったぁ」

 カディ様、満足したみたい。
 私も自分のを飲む。ん、ちょっと渋いかも……でも、おいしい。

「ラプンツェル。お前は茶を淹れるのも上手いな」
「あ、ありがとうございます」
「それに、これはいい味だ……ふぅ、眠気を誘うのか? 実にいい気分だ」
「リラックス効果もありますので……殿下、今日はもうお休みください」
「ああ、そうさせてもらおう。ラプンツェル、肩を貸してくれないか?」
「はい」

 私は立ち上がり、カディ様の元へ。
 カディ様は立ち上がり、私を見下ろした。

「小さいな……だが、美しい」
「え、あの……あ、ありがとうございます」
「綺麗な髪だ。俺と同じ銀色なのに、お前のはまるで、月の女神のような……」
「か、カディ様!?」

 カディ様は、私の髪をつまみ、キスをした。
 私は一気に赤くなる───は、恥ずかしい!!
 すると、天幕に入ってきたイカリオス隊長が、カディ様の腕を掴んだ。

「おいカドゥケウス。そこまでにしておけ」
「ん……ああ、イカリオス」
「まったく、この酔っぱらいめ……ラプンツェル、あとは任せろ」
「あ、ありがとうございます」
「ほら、しっかり立て!!」

 イカリオス隊長は、カディ様を連れていった。
 残された私はカップやグラスを片付ける。

「手伝う」
「きゃっ!? わわっ」
「っと……どんくさいな」

 いつの間にか背後にいたライ君が、私が落としかけたカップを掴んだ。
 そのまま、ライ君の胸に飛び込むような形になってしまう。

「ご、ごめんねライ君。大丈夫?」
「───ッ!! だ、大丈夫」

 ライ君を見上げるような形になってしまい、ライ君はそっぽ向いた。
 ああ、悪いことしちゃった。離れないと。

「あ……」
「っと。ありがとう、カップ預かるね」
「……ん」

 なんだか残念そうに見えるの、気のせいかな?
 私はグラスとカップをしまい、ライ君に言う。

「ライ君、ラスタリア王国でお土産買ってきたの。あとで私の天幕に来てくれる?」
「う、うん……ありがとう」
「ふふ、いいの」

 ライ君、なんだか可愛いわね。
 弟みたいなんて言ったら、怒るかな?
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

婚約者の私を見捨てたあなた、もう二度と関わらないので安心して下さい

神崎 ルナ
恋愛
第三王女ロクサーヌには婚約者がいた。騎士団でも有望株のナイシス・ガラット侯爵令息。その美貌もあって人気がある彼との婚約が決められたのは幼いとき。彼には他に優先する幼なじみがいたが、政略結婚だからある程度は仕方ない、と思っていた。だが、王宮が魔導師に襲われ、魔術により天井の一部がロクサーヌへ落ちてきたとき、彼が真っ先に助けに行ったのは幼馴染だという女性だった。その後もロクサーヌのことは見えていないのか、完全にスルーして彼女を抱きかかえて去って行くナイシス。  嘘でしょう。  その後ロクサーヌは一月、目が覚めなかった。  そして目覚めたとき、おとなしやかと言われていたロクサーヌの姿はどこにもなかった。 「ガラット侯爵令息とは婚約破棄? 当然でしょう。それとね私、力が欲しいの」  もう誰かが護ってくれるなんて思わない。  ロクサーヌは力をつけてひとりで生きていこうと誓った。  だがそこへクスコ辺境伯がロクサーヌへ求婚する。 「ぜひ辺境へ来て欲しい」  ※時代考証がゆるゆるですm(__)m ご注意くださいm(__)m  総合・恋愛ランキング1位(2025.8.4)hotランキング1位(2025.8.5)になりましたΣ(・ω・ノ)ノ  ありがとうございます<(_ _)>

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』

鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」 その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。 有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、 王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。 冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、 利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。 しかし―― 役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、 いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。 一方、 「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、 癒しだけを与えられた王太子妃候補は、 王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。 ざまぁは声高に叫ばれない。 復讐も、断罪もない。 あるのは、選ばなかった者が取り残され、 選び続けた者が自然と選ばれていく現実。 これは、 誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。 自分の居場所を自分で選び、 その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。 「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、 やがて―― “選ばれ続ける存在”になる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...