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第一章 独身おじさん、織田玄徳
怪しいモノではありません
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◇◇◇◇◇◇
「貴様、何者だ!! ここで何をしている!!」
「だああ!! ま、待った!! 俺もワケわかんねーんだよ!!」
ふと、そんな声が聞こえてきた。
たまたま倉庫に来ていた一人の女性は、月光で淡く輝くシルバーブルーの髪を掻き分け、騒ぎの聞こえてきた方向を見る。
すると、女性の護衛であろう男性が前に出る。
「お嬢様、どうやら不審者のようです。おさがり下さい」
「あら……別に問題ないわ。私の強さは知っているでしょう?」
「ですが、護衛として立つ瀬がなくなると言いますか……」
男性は困ったように笑う。
女性は「ふふっ」と微笑み、男性の胸をポンと叩く。
「冗談よ。でも……馬鹿な子もいたものね。アレキサンドライト商会の倉庫に忍び込むなんて、何を考えているのか」
「ですね。この辺りでそんな馬鹿なことをするヤツはもういないと思いましたが……恐らく、遠方からの窃盗犯といったところでしょうか」
「……でも、妙ね。魔法師の警備はいたのでしょう? その子たちをすり抜け、倉庫に侵入? うちの警備魔法師をすり抜ける腕前を持ちながら、倉庫の外で巡回に見つかるなんて……ふむ」
と、女性はニヤリと笑い、歩き出した。
「お、お嬢?」
「行くわよ、ハスター」
ハスターと呼ばれた、護衛兼秘書の男は、慌てたように前に出て止めた。
「お、お嬢……何を」
「ふふ。商売人としての勘……この侵入者、少し面白い気がするの」
「え、えええ……」
「さ、行きましょう」
女性はニコッと微笑み、ハスターを躱して歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
まずった。よくわからんが……ここ、日本じゃない。
異世界。まさか、はやりの異世界転生をしちまったのか。
「貴様、不審者め!!」
「ま、まあ不審者なのは仕方ないけど、俺の話も聞いてくれ!!」
「黙れ!! そこを動くなよ!!」
やべえ、マジな剣みたいなの持ってる。
俺に近づき、振り下ろして来たので、思わず回避。警備員の手首を掴んで捻り上げると武器を取り落としたので蹴って弾き飛ばし、そのまま投げた。
「うがぁ!?」
「あ、やべ」
爺さんから習った合気道を出しちまった。
カッコいいからって理由で、空手柔道、ボクシングに合気道と習ったんだよな。親父も一緒に習っていたんだが、すぐに飽きちまったみたいだけど。
すると、ぞろぞろと警備員が集まってきた。
「あ、あの」
「全員、包囲!!」
「やっぱそうなるよなあ!?」
ど、どうしよう。
敵は十人くらい。西洋の鎧っぽいの着て、剣を腰に差してる。
対武器の指導は受けたけど、多人数は無理!! とりあえず構えを解き、手を挙げた。
「ま、待った!! 怪しいモンじゃない!! 気が付いたらここにいたんだよ、説明させてくれ!!」
「いいわよ」
と、いきなり透き通ったような声。
警備員がビシッと敬礼し、モーセのように道を割った。
現れたのは……綺麗なシルバーブルーの髪をした女性。二十歳ちょいくらいか、かなりの美人だ。
胸もデカいし、腰も細いし……なんだこれ、パリコレモデルみてぇだな。
「ふむ、ふむ……見たことのない服、黒髪、黒目……この辺りの人じゃないわね?」
「あ、ああ……まあ、たぶん」
両手を上げたままの俺。女性はニッコリほほ笑む。
「私は、アレキサンドライト商会の商会長サンドローネ。不審者さん、あなたは?」
「お、織田、玄徳……」
「オダゲントク……?」
「玄徳。玄徳でいいよ」
「ゲントクね。変な名前」
悪かったな……俺はカッコいいと思ってるよ。
ゆっくり手を下ろし、俺はため息を吐いた。
「ふう、あんた……話聞いてくれんのか?」
「ええ。面白い話だったら聞くわ。つまらなかったら、そのまま警備に引き渡して牢屋行き」
「……それは勘弁してくれ」
「ふふ、どうかしらね」
すると、サンドローネが紙巻き煙草を取り出し、部下の一人が火打石を出し、カッカと擦って火種を作ろうとしていた……なんか原始的だな。
俺は胸ポケットから煙草を取り出し、愛用のジッポライターを出す。
「……?」
サンドローネに近づく。何人か警戒したが、サンドローネが手で制した。
そして、ジッポで火を着けると、サンドローネが煙草をぽろっと落とした。
「な、何だ今のは……」「ま、魔法?」
「馬鹿な、詠唱も陣もなしに!?」「おい、手元の……なんだあれ」
「ま、魔道具? 火を着ける魔道具?」「そんな馬鹿な」
な、なんだ? 急にざわめき出したぞ……って。
「お、お嬢!!」
「あなた、それなに?」
サンドローネが急接近、俺に顔を寄せ、手元のジッポライターを取り上げた。
「お、おいそれ高かったんだぞ、大事に……」
「これ、何かしら」
「何って、ライター……ああそうか、異世界あるある、日本の珍しい道具か」
「説明。これなに? 待った……場所変えましょうか」
「……牢屋行き?」
「いいえ。超VIP待遇ね」
どうやら、俺の人生はジッポライターに救われたようだ。
◇◇◇◇◇◇
案内されたのは、倉庫内にある部屋だった。
「私の執務室」
「そうか……で、そろそろ返してくれよ、ジッポライター」
「これ、何なの?」
「いやだから、ライターだよ」
「魔道具じゃないわね。魔力を感じないし……火を熾す魔道具はまだ存在しないわ」
「……じゃあどうやって火を熾してんだよ」
「『熾火屋』で火を買うのよ。あなた、そんなことも知らないの?」
「知らん」
「……まずは、あなたの話からね。どこから来て、なぜここにいるのか。噓偽りなく答えなさい」
なんか偉そうだな……俺より年下、だよな?
いい乳してるし、パリコレモデルみたいな身体つき。ドキドキ……は、別にしない。
まあ俺も男だし、溜まればその手の店で処理することもある。
「……とりあえず、嘘じゃないぞ」
俺は経緯を説明した。
ここじゃない場所で仕事をしていたら、事故で死にかけて気を失ったこと。気付けば倉庫前に倒れていたこと……ってかそれしかわからん。
サンドローネは疑うような目をして言う。
「ニホンなんて聞いたことないわね。ここはエーデルシュタイン王国の第十三区画、倉庫街よ」
「俺からしたらそっちのが聞いたことねえ……王政の国なんてほとんど知らん。というか、文字もだし、明らかに外国人のアンタらが日本語喋ってんのも驚きだよ」
サンドローネはジッポライターを弄ぶ。
「ま、いいわ。とりあえず……異世界から来た、ってことにしておく」
「そうしてくれ。俺もそう思うことにする……はあ、帰れんのかな」
「じゃ、これからのことね」
サンドローネはニンマリ笑う……なんかイヤな予感。
俺の後ろに立っている護衛の男も似たような顔をしていた。
「ゲントク。あなた、面白いわ。どうせ行くアテなんてないのなら、私のところで働きなさい」
「……マジかよ」
「お、お嬢……本気ですか!?」
「本気。ゲントクはお金のニオイがする。アレキサンドライト商会を大きくするチャンス……そう思うわ」
「……俺になにさせるつもりだよ。俺は、しがない工務店の店主だぞ」
「それよ。あなたしか持ってない知識を、私のために役立てなさい。見返りに、衣食住の世話はしてあげる。それに、この世界のこと知らないでしょ? いろいろ教えてあげるわ」
「…………はあ」
これは……従うしかない、そう思う俺だった。
「貴様、何者だ!! ここで何をしている!!」
「だああ!! ま、待った!! 俺もワケわかんねーんだよ!!」
ふと、そんな声が聞こえてきた。
たまたま倉庫に来ていた一人の女性は、月光で淡く輝くシルバーブルーの髪を掻き分け、騒ぎの聞こえてきた方向を見る。
すると、女性の護衛であろう男性が前に出る。
「お嬢様、どうやら不審者のようです。おさがり下さい」
「あら……別に問題ないわ。私の強さは知っているでしょう?」
「ですが、護衛として立つ瀬がなくなると言いますか……」
男性は困ったように笑う。
女性は「ふふっ」と微笑み、男性の胸をポンと叩く。
「冗談よ。でも……馬鹿な子もいたものね。アレキサンドライト商会の倉庫に忍び込むなんて、何を考えているのか」
「ですね。この辺りでそんな馬鹿なことをするヤツはもういないと思いましたが……恐らく、遠方からの窃盗犯といったところでしょうか」
「……でも、妙ね。魔法師の警備はいたのでしょう? その子たちをすり抜け、倉庫に侵入? うちの警備魔法師をすり抜ける腕前を持ちながら、倉庫の外で巡回に見つかるなんて……ふむ」
と、女性はニヤリと笑い、歩き出した。
「お、お嬢?」
「行くわよ、ハスター」
ハスターと呼ばれた、護衛兼秘書の男は、慌てたように前に出て止めた。
「お、お嬢……何を」
「ふふ。商売人としての勘……この侵入者、少し面白い気がするの」
「え、えええ……」
「さ、行きましょう」
女性はニコッと微笑み、ハスターを躱して歩き出した。
◇◇◇◇◇◇
まずった。よくわからんが……ここ、日本じゃない。
異世界。まさか、はやりの異世界転生をしちまったのか。
「貴様、不審者め!!」
「ま、まあ不審者なのは仕方ないけど、俺の話も聞いてくれ!!」
「黙れ!! そこを動くなよ!!」
やべえ、マジな剣みたいなの持ってる。
俺に近づき、振り下ろして来たので、思わず回避。警備員の手首を掴んで捻り上げると武器を取り落としたので蹴って弾き飛ばし、そのまま投げた。
「うがぁ!?」
「あ、やべ」
爺さんから習った合気道を出しちまった。
カッコいいからって理由で、空手柔道、ボクシングに合気道と習ったんだよな。親父も一緒に習っていたんだが、すぐに飽きちまったみたいだけど。
すると、ぞろぞろと警備員が集まってきた。
「あ、あの」
「全員、包囲!!」
「やっぱそうなるよなあ!?」
ど、どうしよう。
敵は十人くらい。西洋の鎧っぽいの着て、剣を腰に差してる。
対武器の指導は受けたけど、多人数は無理!! とりあえず構えを解き、手を挙げた。
「ま、待った!! 怪しいモンじゃない!! 気が付いたらここにいたんだよ、説明させてくれ!!」
「いいわよ」
と、いきなり透き通ったような声。
警備員がビシッと敬礼し、モーセのように道を割った。
現れたのは……綺麗なシルバーブルーの髪をした女性。二十歳ちょいくらいか、かなりの美人だ。
胸もデカいし、腰も細いし……なんだこれ、パリコレモデルみてぇだな。
「ふむ、ふむ……見たことのない服、黒髪、黒目……この辺りの人じゃないわね?」
「あ、ああ……まあ、たぶん」
両手を上げたままの俺。女性はニッコリほほ笑む。
「私は、アレキサンドライト商会の商会長サンドローネ。不審者さん、あなたは?」
「お、織田、玄徳……」
「オダゲントク……?」
「玄徳。玄徳でいいよ」
「ゲントクね。変な名前」
悪かったな……俺はカッコいいと思ってるよ。
ゆっくり手を下ろし、俺はため息を吐いた。
「ふう、あんた……話聞いてくれんのか?」
「ええ。面白い話だったら聞くわ。つまらなかったら、そのまま警備に引き渡して牢屋行き」
「……それは勘弁してくれ」
「ふふ、どうかしらね」
すると、サンドローネが紙巻き煙草を取り出し、部下の一人が火打石を出し、カッカと擦って火種を作ろうとしていた……なんか原始的だな。
俺は胸ポケットから煙草を取り出し、愛用のジッポライターを出す。
「……?」
サンドローネに近づく。何人か警戒したが、サンドローネが手で制した。
そして、ジッポで火を着けると、サンドローネが煙草をぽろっと落とした。
「な、何だ今のは……」「ま、魔法?」
「馬鹿な、詠唱も陣もなしに!?」「おい、手元の……なんだあれ」
「ま、魔道具? 火を着ける魔道具?」「そんな馬鹿な」
な、なんだ? 急にざわめき出したぞ……って。
「お、お嬢!!」
「あなた、それなに?」
サンドローネが急接近、俺に顔を寄せ、手元のジッポライターを取り上げた。
「お、おいそれ高かったんだぞ、大事に……」
「これ、何かしら」
「何って、ライター……ああそうか、異世界あるある、日本の珍しい道具か」
「説明。これなに? 待った……場所変えましょうか」
「……牢屋行き?」
「いいえ。超VIP待遇ね」
どうやら、俺の人生はジッポライターに救われたようだ。
◇◇◇◇◇◇
案内されたのは、倉庫内にある部屋だった。
「私の執務室」
「そうか……で、そろそろ返してくれよ、ジッポライター」
「これ、何なの?」
「いやだから、ライターだよ」
「魔道具じゃないわね。魔力を感じないし……火を熾す魔道具はまだ存在しないわ」
「……じゃあどうやって火を熾してんだよ」
「『熾火屋』で火を買うのよ。あなた、そんなことも知らないの?」
「知らん」
「……まずは、あなたの話からね。どこから来て、なぜここにいるのか。噓偽りなく答えなさい」
なんか偉そうだな……俺より年下、だよな?
いい乳してるし、パリコレモデルみたいな身体つき。ドキドキ……は、別にしない。
まあ俺も男だし、溜まればその手の店で処理することもある。
「……とりあえず、嘘じゃないぞ」
俺は経緯を説明した。
ここじゃない場所で仕事をしていたら、事故で死にかけて気を失ったこと。気付けば倉庫前に倒れていたこと……ってかそれしかわからん。
サンドローネは疑うような目をして言う。
「ニホンなんて聞いたことないわね。ここはエーデルシュタイン王国の第十三区画、倉庫街よ」
「俺からしたらそっちのが聞いたことねえ……王政の国なんてほとんど知らん。というか、文字もだし、明らかに外国人のアンタらが日本語喋ってんのも驚きだよ」
サンドローネはジッポライターを弄ぶ。
「ま、いいわ。とりあえず……異世界から来た、ってことにしておく」
「そうしてくれ。俺もそう思うことにする……はあ、帰れんのかな」
「じゃ、これからのことね」
サンドローネはニンマリ笑う……なんかイヤな予感。
俺の後ろに立っている護衛の男も似たような顔をしていた。
「ゲントク。あなた、面白いわ。どうせ行くアテなんてないのなら、私のところで働きなさい」
「……マジかよ」
「お、お嬢……本気ですか!?」
「本気。ゲントクはお金のニオイがする。アレキサンドライト商会を大きくするチャンス……そう思うわ」
「……俺になにさせるつもりだよ。俺は、しがない工務店の店主だぞ」
「それよ。あなたしか持ってない知識を、私のために役立てなさい。見返りに、衣食住の世話はしてあげる。それに、この世界のこと知らないでしょ? いろいろ教えてあげるわ」
「…………はあ」
これは……従うしかない、そう思う俺だった。
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