独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第一章 独身おじさん、織田玄徳

役立つ可能性

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 さて、さっそく仕事……の前に、解決しなきゃいけない疑問がある。

「なあイェラン。魔道具って何だ?」
「そりゃ、魔力で動く道具に決まってんじゃん」
「魔力って?」
「人間の身体の中にある、魔法を使うエネルギーだよ。子供でも知って……ああ、子供と同じなのか」

 やかましい。
 すると、イェランは「ごめんごめん」という。

「わかんないこと何でも聞いて。じゃなきゃ仕事なんてできないでしょ」
「おう。じゃあいろいろ聞くぞ」

 とりあえず、午前は俺の疑問をぶつけることで終わった。
 おかげで、いろいろわかった。
 まず魔力。これは俺の思う異世界ファンタジー的な力で間違いない。この世界の人間は誰もが魔力を持ち、それぞれ決まった『色』を持つ。
 その色は属性を表しており、地水火風光闇の六属性あるそうだ。でも、魔力に色がある『属性持ち』はかなり少なく、大半の人が『無色』らしい……うんうん、ファンタジーだね。
 
「アタシは三属性持ち。水と土と風。すごいっしょ?」
「すごいのか?」
「そりゃそうよ。ふつーは一属性だけで、二つだと優秀、三つだとエリートなんだから」
「へえ……じゃあ、魔法を使えるのか?」
「まあね。基本的な生活魔法と、生産系魔法がメイン。魔術師じゃないから攻撃魔法は覚えてない」

 この世界にも教育機関がある。義務教育ではないが、一般的な家庭ならみんな学校に通い、魔力や魔法、一般常識を習うそうだ。
 で、魔法適正があると、たいていが魔法による戦闘を生業とする『魔術師』や、イェランみたいな『魔導具技師』になる。
 三属性だと、魔術師の中じゃエリートで、王宮魔術師とかにもなれるようだが。
 ちなみに、この世界の半数以上が『無属性』で、簡単な生活魔法しか使えないそうだ。

「アタシ、サンドローネお姉様に惚れてこの世界に来たの。お姉様……本当にすごいお方なのよ?」
「あの女王様がねぇ……」
「ふん。別にアンタにわかってもらわなくてもいいわ。っと、その前に……ゲントク、アンタの魔法適正を調べるから」

 と、イェランがA4用紙みたいなのを出し、テーブルに置いた。

「なんだこれ?」
「ふふん。これこそ、アレキサンドライト商会が開発した『魔法適正簡易調査用紙』よ!! これに血を垂らすだけで、どの属性なのか判別できるの!!」
「へえ、すごいんだな」
「うんうん。以前は、魔法協会が派遣する魔術師の魔法じゃないと判別できなかったのよ。でも、これなら一滴の血を垂らすだけで、魔法適正や魔力総量までわかっちゃうからもう最高!! お姉様が作った魔導具でも最高の出来なの!!」
「へ~……でも、こんなの流通したら、その協会とやらの魔術師は商売あがったりだな」
「ま、そうね。実際猛反発だったし。『こんなのアテにならん!!』と協会のお偉いさんが怒鳴りに来たこともあったわ。でもまあお姉様は相手にしなかったし……それどころか、王家に持ち込んで、協会の魔術師とこの用紙の精度、どっちがすぐれているか勝負までしたのよ」
「マジか……ブッ飛んでんな」
「勝敗はもちろんお姉様の大勝利!! で、魔法協会はこの適正検査用紙の有効性を認め、今では無くてならないモノになったのよ」
「へえ……すごいな。でもいちいち血を出すのはなあ」
「うっさいわね。ほら、用紙のここに指置いて」

 と、用紙の中央に丸い囲いがあり、そこに人差し指を押し付ける。
 すると、ピリッとした。

「うお、なんだ?」
「紙に小さな針が仕込んであって、ここに指を押し付けると反応するの。で、血を一滴だけ採取する……どう? 痛みないでしょ?」
「確かに痛くない……」

 すると、用紙にジワジワと何か浮かんできた。

「おお、すげえな」
「……………………え、なにこれ」
「なあ、どうなんだ? 俺、何属性?」
 
 イェランに聞くと、用紙と俺を交互に見て、信じられないように言う。

「……全部」
「え?」
「アンタ、六属性に適性ある」
「お、全部? そりゃすげえな」
「待った!! ぜぜ、全属性、って……ま、魔法協会の大賢者ですら五属性なのよ!? ってか待った……な、なにこれ」

 用紙には、七本のラインが描かれている。
 まるで虹のようなライン。黄青赤緑白黒、そして紫色。

「な、七属性……? し、知らない。こんなの、知らない属性」
「七属性? この世界は六属性じゃないのか?」
「ちょっと!! 黙って!!」
「あ、はい」

 な、なんか怖い……えーと、属性はそれぞれ、地水火風光闇。色で見ると黄青赤緑白黒、で紫が追加されてる。
 紫か……異世界ファンタジー的に考えると、『雷』っぽいな。

「雷属性とかだったらカッコイイな」
「……雷。待った、そんな属性ないわ」
「いや、感じたまま言っただけだぞ」
「……雷。ねえアンタ、魔力……って、何この出鱈目な数値……魔力量、あり得ないんだけど!?」

 イェラン、用紙を手にプルプル震えている。
 なんか、異世界ファンタジーの主人公みたいな展開になってきたな。
 あり得ない全属性!! そして常人を遥かに超える魔力量!! 俺、またなんかやっちゃいました? みたいな馬鹿顔してみようかな。

「ゲントク。手ぇ出して」
「え、ああ」
「アタシの魔力流すから。左手を軽く上に向けて……目、閉じて」
「お、おう」

 バカ顔してる暇ない……というか、真面目にやった方がよさそうだ。
 イェランは、俺の手を掴む。すると……あったかい何かが入り込んでくる感覚。

「アタシの魔力ね。で……その魔力に、『紫』で色を付けるイメージ。いい、ゆっくり……」
「………紫」

 頭の中で紫をイメージする……すると、俺の左手から、パチパチと静電気が発生した。
 紫電。すっげえ……静電気……だよな?
 イェランは手を離す。

「……間違いない。アンタの言う通り、魔力を電気に変換できる」
「へえ……すごいな」

 そういや、向こうで感電したしな……まさか、それが原因?
 チートなのか知らんけど、ちょっと楽しいな。

「まあいいや。とりあえず、全属性あるんだろ?」
「こんなの知られたら、アレキサンドライト商会どころか、魔法協会が黙ってないと思うけど」
「絶対に言うな。なんか面倒くさそうだ」
「はいはい。あーもう、とんでもないおっさんね……三属性とかイキってたのハズいんだけど」
「はっはっは。まあ、すごいってことで。さて……いろいろ疑問も解決した」

 まさか、異世界でも工務店みたいなことやることになるとはな。
 なんでも屋。魔導具開発か……異世界異能バトルみたいな展開にならなくてよかったぜ。だって俺おっさんだし、そういうのはもう歳じゃない。
 
「おっさん、やる気になってるけど、どうしたの?」
「いや……普通なら家に帰りたいとか思うんだろうけど、まあこっちのが楽しそうだ」

 俺の仕事は、まずは火起こし道具の開発か。
 アイデアはある。地球の知識も使える。
 異世界でありがちな『地球知識で産業革命』か……ふふふ、まさか自分でやることになるとは。
 面白い、やってやろうじゃないか。

「イェラン、俺の手伝いもだけど、魔法についても教えてくれ。ああ、師匠になってくれ」
「師匠? へえ、いい響き……いいよ、教えてあげる」

 こうして、俺の異世界生活が始まるのだった。
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