独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう

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第八章 雷とクライン魔導商会

男の一人暮らしといえば、丼物

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 さて、今日は休日だ。
 現在俺は、自宅のソファに座り、コーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
 新聞には、町であった凶悪事件や、求人広告、そしてアレキサンドライト商会の新商品案内のページがあった……内容は『生活の新たな足、自転車』とある。
 どうやら、自転車の販売が近い。

「お。もうけっこう話題に……ああそうか、ロッソたちか」

 町ではすでに話題になっていると新聞にあった。どうやら、ロッソたちが移動で使っているのを見て、気になる冒険者が多くいたらしい。ロッソが「アレキサンドライト商会の新商品っ!!」と無自覚な宣伝をしたおかげで、発売前から話題になっているようだ。
 しかも、販売店の地図まであるし。アレキサンドライト商会の支店のいくつかは、魔道具販売から撤退し、自転車専門の店となるようだ。

「……カスタマイズパーツとかもうあるのかよ。イェランのヤツ、すげぇな」

 自転車のカタログだけじゃなく、カスタマイズパーツもあった。
 タイヤの素材、ホイールの形状、流線形のカウルパーツに、スパイクタイヤ……なんかデコチャリみたいなのが町を爆走する光景が見えた。ああ、今の若い人にはデコチャリ知らねえ……って、ここ異世界だし誰も知らねぇか。
 新聞を閉じ、コーヒーを飲み干して煙草に火を着ける。

「さて、今日はなーにすっかなぁ……」
『にゃ』

 と、二階から大福が降りてきた。
 休みの前日は家に連れ帰るようにしている。すぐにリビングの専用クッションで丸くなり、そのまま目を閉じる。
 
「……そういや最近、身体動かしてねぇなあ。よし、せっかくだし日曜大工するか」

 俺は、庭に出て『あるもの』を作ることにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 一時間ほど工作をし、ついに完成。
 すると、玄関のチャイムが鳴り、サンドローネとリヒターが来た。
 俺の姿が見えたのか、すぐに庭の方へ来る……そして、俺の作った物を見て首を傾げる。

「……それ、何?」
「木人椿。トレーニング機器の一つだよ。最近、身体動かしてなかったからな……じいちゃんは毎日叩けって言ってたけど、サボりまくってるな」

 木人椿。中国拳法で使うトレーニング機器だ。
 サンドバッグは打撃訓練をするのに使うが、木人椿は木で出来ている。立てた丸太に、三本の杭を打ち付け、下部に一本の杭を打ち付けたような形状をしてる。
 この三本杭を相手の手と見立て、一本の杭を足と見立て、実戦を想定して相手側に向かって打撃攻撃を放つ鍛錬行為に使用される道具である。
 俺は構えを取り、木人椿に拳を叩きこむ。

「ほっほっ、よっ」

 パパン、パン!! と、拳、足を叩きこむ。
 久しぶりの武術。やはり、身体が訛っている……今日はみっちり勘を取り戻すかな。
 リヒターが、興味深そうに見ていた。

「ゲントクさん。武術の使い手でしたね……私の知らない武術です」
「まあ、俺の世界でもあんまりメジャーな武術じゃないからな。空手、柔道、テコンドーとは違う、じいちゃん直伝の武術だ」

 すると、サンドローネが俺の顔の前に、扇子を割り込ませた。

「ねえ、少し話があるんだけど、いい?」
「俺、今日休みなんだが……」
「少しでいいの。ザナドゥで話した件で、少しね」
「……ザナドゥ?」

 海の国ザナドゥだよな……なんかあったっけ。
 まあ、せっかく来てくれたしな。話くらいは聞いてやるか。

 ◇◇◇◇◇◇

 家に入り、リビングへ。
 サンドローネは大福を見て微笑みを浮かべ、ソファに座る。
 リヒターは座らずにサンドローネの背後へ。
 俺はサンドローネにコーヒーを出し、対面に座った。

「で、ザナドゥの件って何だ?」
「飲食店。あなた、どんぶり……だったかしら。ザツマイをメインにした料理を考えていたじゃない? アレキサンドライト商会でも、飲食業に乗り出そうと思ってね」
「そういや、そんな話したっけか」

 俺は煙草に火を着けると、サンドローネも煙管を取り出し、リヒターがマッチで火を着けた。
 
「ふぅー……すでに、ザツマイ農家と契約して、農業用倉庫にザツマイを確保しているわ。アメジスト清掃から、アレキサンドライト商会で料理人として移籍の応募もして、料理経験者である四十名ほどの獣人が料理人としてやりたいと移籍もした。すでに町の飲食店で修業中……いずれは、アレキサンドライト商会の開く店で、料理人として腕を振るう予定よ」
「ちなみに、店舗の確保も進んでいます。とりあえず十軒ほどですが」
「じゅ、準備良すぎだろ……」
「あとは、あなたのレシピよ。あるんでしょ?」
「まあ、あるけど」

 実は、家でもよく作っている……丼物。
 カツ丼、天丼、ステーキ丼、玉子丼、鉄火丼、豚丼に牛丼。おかゆとか中華丼もある……男の一人暮らしって言ったら丼物だろうよ。ってかマジでいろいろ作りまくった。
 俺は、レシピノートをキッチンから持ってくる。

「これは、俺の独身生活で作った丼物の全てが記されている!! ザツマイ……こいつは無限の可能性!! 素晴らしい食材だ!!」

 ちょっとテンションが上がってしまった。
 サンドローネとリヒターもジト目で見るだけなので、俺は咳払い。

「と、これは俺の財産……タダでは譲れないな。こいつが欲しいなら俺と勝負しろ!!」
「……あなた、そんなお芝居みたいなことして楽しい?」
「いや少しくらいノッてくれよ。まあ冗談だ」

 俺はレシピノートをテーブルへ。
 サンドローネがノートをめくり、面白そうに言う。

「へえ……すごいわね。見たことのない料理ばかり」
「せっかくだ。昼飯、ウチで食うか? その中にある丼物、好きなの作ってやる」
「いいわね。じゃあ……この牛丼っていう料理を」
「リヒターは?」
「私もいいんですか? では……この親子丼、という料理を」
「任せな。さて、俺の男メシを見せてやる!!」

 俺は立ち上がり、キッチンへ向かうのだった。

 ◇◇◇◇◇◇

 作るのは、牛丼と親子丼だ。
 まずザツマイを炊く……炊きあがるまで待ち、いい感じに蒸し始まったら調理開始。

 まず鍋を二つ用意し、それぞれに水、酒、魚醤、砂糖、異世界のショウガを入れ、異世界玉ねぎを入れてじっくり煮込む。
 そして一つの鍋にミノタウロスの肉、もう一つにコカトリスの肉を入れて煮込む。
 コカトリスの方に溶き卵を半分ほど入れて煮込み、三十秒ほど煮込んだら残りの溶き卵も投入。

 炊きあがったコメを丼物によそい、それぞれの鍋の中身を乗せて完成。
 紅しょうがはないので勘弁。親子丼の方には異世界三つ葉を刻んで乗せる。
 これにて完成……シンプルイズベストだ。

「完成。男の一人暮らし異世界牛丼と、男の一人暮らし異世界親子丼だ」
「……その名前。お店でやる場合は改名するから。でも……いい香りね」
「確かに。これは……卵、ですか」

 二人はさっそくスプーンで食べ始める。

「「……!!」」
「ふふん。どうよ、男の一人暮らし丼飯は」
「……おいしいわね。驚いた……本当に驚いたわ」
「確かに、ザツマイでこんな食事が完成するなんて」
「ふふん、どうだ? 男の一人暮らし丼飯は。最高だろ?」
「いちいちその男のなんちゃらメシって言わなくていいわ。これは売れるわね……リヒター、飲食店の改修を急がせて。それと、料理人希望の獣人たちを集めて、このノートにある料理の講習会を開くわ」
「わかりました」

 二人は完食した。
 俺は水を出してやると、二人は一気に飲み干す。

「ふう……けっこうお腹に溜まりますね」
「だろ。差別じゃないけど、この料理は食い盛りの男が喜ぶレシピばかりだ。メニューに載せるなら、『並盛』、『大盛』、『小盛』と量を分けた方がいいぞ」
「確かに、いいアイデアね……ふう、お腹いっぱい。女性には少しキツイかも」
「それと、丼飯だけじゃなく、汁物も一緒に出すんだ。漬物とかもあると、箸休めでつまめる」
「ふむふむ。ねえゲントク、お願いがあるんだけど……一度、料理人たちの前で、レシピを全て作ってくれない?」
「え~? そこまではめんどくさいな」
「お願い。ね?」

 サンドローネは、少し前屈みになって胸の谷間を見せつけてきた……この野郎、色仕掛けかい。
 だが悲しいかな、視線は胸に引き寄せられる。

「……ま、まあ、変なモノ出して、俺の男の一人暮らし丼飯が間違った広まり方するのはイヤだしな。一度だけならいいぞ」
「決まりね。じゃあ、近日中に連絡するわ。リヒター、行くわよ」
「はい。ではゲントクさん、アイデア料金など支払いに関しては後日」
『にゃあー』
「ふふ、また来るわね」

 サンドローネは、大福をひと撫でして出て行った。
 こうして、アレキサンドライト商会は飲食業に乗り出すことになった。
 メニューは丼飯。さてさて、どうなることやら。
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