悪役令嬢のはずがなぜ王子様に溺愛されているのでしょう

夏葉ひなた

文字の大きさ
83 / 100
あるヒロインの話

10

しおりを挟む
「リノちゃん、テストどうだった?」

 ラミちゃんが何か悟ったような表情で問いかけてくる。ラミちゃん……。

「うん、点は取れた気がするけどなんか疲れたよ」
「同感ね。周りにいる人も変人とか変態が多いのにどうしてテストまで変態問題に振り回されなきゃいけないのかしら」
「ご愁傷さまです」

 そうだよなぁ……。お兄さんとかお父さんとかお母さんとか王子とかもう変態しかいないよね、ラミちゃんの周り……。ヒロインも仕事してないし。

「ラミちゃん! テスト楽しかったねっ!」

 なお変態と変態は相性がいい模様。

「あ、リノちゃんテストできた? 俺できまくりよ!」
「カイル、あなた『餅は餅屋』っていうことわざ知ってる?」
「え? うん。どうしたん?」

 つまり『変態問題は変態に解かせろ』っていうことだね? 結構酷いねラミちゃん?
 きょとんとしているカイル様を憐れむような視線で見つめるラミちゃん。相当ストレスたまってるんだろうなー。この娘。

「……ラミちゃん、今年の『レースフェルト夏のローション祭り』って出るの?」
「あー、運営サイドね。このあいだ実家に資料送ったし」

 レースフェルトのローション祭りは我が国では『四季祭り』とも呼ばれている。規模は大きく、国民の半数はその祭りでヌルヌルになったことがあるレベルだ。私もヌルったことがある。『ヌルった』って何だ。あと唐突ね。

「ローション祭りのときは閉寮期間と重なるし、実況か裏方か参加かは未だ未定だけど参加はするわよ」
「去年は実況だったけど楽しかったよね!」

 ちなみに去年は私も参加した。その様子がコチラ↓


『おおっ! ローションにまみれたカップルを非リアの意地で押し倒す! 群がれ非リア! 今までの鬱憤を犯罪にならない程度で晴らせええええええええええええええええええええええええええ!』
「お前はよォ! 公園でいっつもいちゃつきやがってよォ!」
「リナちゃん! 俺のことは無視してこの獰猛キモヲタから逃げるんだ!」
「誰が獰猛キモヲタじゃァァァァァ――――――ッ‼」
「ちょ、何でズボン下げて……アッ――――!」
「リリック――――――――――――――――――!」
「リナちゃん……男もいいね」
「リリック―――――――――――――――――――――――――――――!」


『第二ブロック(小学生以下専用ブロック)も沸いてます! 前回ローション王となったフェリちゃんはやはり今回も強い!』
「ちょいとそこのお方? これで棄権して頂けませんこと?」(諭吉一枚)
「(コクコクコク)」
『ナイトスター侯爵家の財力はやはり凄まじい様子! しかし今回初参加のフェアリーブック公爵家は一体どう出るか見どころです!』
「100万で棄権して頂けません?」
「わたくしが100万ごときで匙を投げるとでもお思いですか? 公爵家を舐めたらどうなるか思い知らせて差し上げますわ」
「では力勝負……ということですの?」
「いえ、わたくしは知略を尽くしますわ」

 いや取り締まれよ。仕事しろよ運営。
 だが、小学生のブロックは金銭目的で参加する者も後を絶たず、『社会に出たら賄賂はもはや常識だろー』という国王からの言葉もあり、賄賂は100万までなら取り締まらないというトンデモルールは出来るわ、プロローショニストの部の賞金は億単位になるわで毎シーズン賑わっている。レジェンドは広告収入も含め年50億貰ったらしい。日程が違うだけで世界各国で行われている祭りらしい。色々終わっている。
 一番開催頻度が多い国は極東の島国らしく、毎月東の都と西の都で開催されているっぽい。賞金は他の国と比べると少なめだが、頻度が頻度だけに毎回入賞を決めると一般人の生涯年収並みにはなる。一位はその国の方が毎回獲っているらしい。自国から出ないことが他の国のプレーヤーにとっては唯一の救いらしい。

 まあ長々と語ったが要するにローション相撲だ。ローションフェスティバル、略してローフェスとも呼ばれている。

 今年はラミちゃんの手伝いでも出来たら良いなとは思っていたが。

「ラミちゃん、出来れば今年は参加サイドに回ろうよ! リノちゃんも一緒に参加しようよ!」
「いいんですか!?」

 カイル様とヌルヌルの思い出が作れる……うへへへへへへへへへへへへ。

「まあ掛け合ってみるわ。コネを作るためにボランティアを買って出る貴族も多くなって来たみたいだし」

 それでも最低賃金は出しているとのことだからレースフェルト家の信頼は厚いのだろう。
 乙女ゲームの世界でようやくリア充っぽいこと(?)ができる……!
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。 そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。 1~2万文字の短編予定→中編に変更します。 いつもながらの溺愛執着ものです。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...