アウトロー ~追憶~

白川涼

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三章 ミュラー最後の事件簿

激闘

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 ゆっくりと身を起こして、ミュラーは仲間に呼びかける。

「ジラール、オルマ、黒服の男達はくれてやる。どうやらコイツはオレに用があるようだ」
 ミュラーの呼びかけに答えるように二人は頷き、武器を持って構える。
「来るなら来い、大人の戦い方をそっちのガキ共に教えてやる」
 ミュラーがそう告げると、ランスを抜き、前傾姿勢になって構える。

 それを見たリヴァはニヤリと笑みを浮かべた。
 野獣が捕食するように構える。
 両者が全身に気タオをみなぎらせる。
 そしてゆっくりと間合いを詰めていく。
 先に動いたのはリヴァであった。
 あっという間にミュラーの懐に入り込み、鋭い刃物のような手刀で、その首を狙う。
 ミュラーのランスは片方の手で掴まれていた。

 しかし、その手刀は届かなかった。
 そしてリヴァの視界が揺らぐ。

 ミュラーの渾身の膝蹴りがリヴァの顎を捉えていたのだ。
 ミュラーは予めリヴァが接近するのを予測していた。
 体術の使い手なら、確実に近接に持ち込む。
 敢えて相手に間合いを与えて、獲物が罠にかかるのを待っていた。
 素早くランスを引き、倒れかけたリヴァの胴体をその柄で叩き込もうとした。
 しかし今度はミュラーの視界が変化する。
 目線の先には空があった。
 リヴァは掴んだランスを持ち上げ、振り下ろす。
 ランスを持ったミュラーは宙に浮き、地面へと叩きつけられる。
 地面に伏したミュラーに追撃するべく、リヴァは手刀を繰り出す。
 しかし身体を投げられたと理解したミュラーは既に抜刀して剣を振り抜いていた。
 リヴァの手刀とミュラーの斬撃がぶつかり合う。

 瞬間火花が散る。

 それを見て、ミュラーは実感した。

 オレの剣を素手で防ぐとは。タオを腕に集中させているな。まともに食らったら、身体が両断されるな。

 実際、ミュラーの剣ではリヴァの指先に擦り傷すら与えられなかった。

 これならどうだ。

 ミュラーは体勢を立て直し、剣の切先にタオを集中させた。
 それを見たリヴァは再びニヤリと笑う。
 そして自身の腕にタオを集中させた。
「無駄だぜ! オレは剣士と何度も殺りあってきたんだ。剣術じゃオレに勝てねぇぜ!」
 ミュラーは直感した。

 コイツの動きは直線的だ。
 なら、動きも予測しやすい。
 再びリヴァが襲い掛かる。
 その素早さはあっという間にミュラーの間合いを殺し、その眼前に肉薄しようとしていた。
 ミュラーの胴が手刀で貫かれようとしていた。
「爆ぜろ」
 刹那、地面に置かれていた、ミュラーのランスが爆炎を放ちながら爆散した。
 業火が二人を包む。
 不意に起きたことにリヴァは一瞬戸惑う。
 その隙をつかれた。

 リヴァは太ももに激痛が走っていたことを感じた。
 自身の脚はミュラーの剣が突き刺さっていたのだ。
 それを確認した瞬間、今度は右腕に激痛が襲う

 ミュラーの手刀がリヴァの右腕を斬り落としていたのだ。
「悪いが真似させてもらった。一番厄介だったその速さを封じた。その脚じゃさっきの動きはできまい」
 ミュラーは転がり落ちたリヴァの腕を拾い上げ、火魔法で焼き尽くした。
 リヴァはその様子を忌々しい目で睨む。
 ミュラーはおどけたポーズで挑発する。
「どうした? 来るなら来い。次は左腕を火葬してやる」
 猛り狂ったリヴァは左腕をかざし、気タオを集中させる。
 膨大な量のタオがうごめくように集まる。
 その異様さにミュラーは身構える。

 やはりまだ奥の手をもっていたな……。

 左手に集まったタオをリヴァが放とうとした時、突然、彼の背後から金髪の軍服を着た男が現れる。
「リヴァ、時間だ。退くぞ」
 振り返ったリヴァはその男に抗議するように叫ぶ。
「レオン! このままじゃ帰れねぇ! あの野郎、俺の右腕を!」
 レオンと呼ばれた男は静かな声で、
「腕は治せばいい。ヤツが大鷲と組んでいることがわかったことだけでも収穫だ。時期がくればまた戦わせてやる」
 ミュラーがリヴァを挑発する。
「おい、逃げるのはいいが、その脚に刺さった剣は返せ。高いんだぞ」
 その言葉に激高したリヴァをレオンという男は押さえて、剣を引き抜き、ミュラーに投げ渡す。 
 そしてまた落ち着いた声でミュラーに言い放つ。
「あまり怒らすなよ、次に会ったら殺してやる」
 ミュラーが二コリとほくそ笑む。
「次があったらな」
 すると、レオンとリヴァはオルマの糸で縛られてしまった。
 姿を隠していたオルマが現れ、宣告する。
「少しでも動いたら、コイツで輪切りにするよ」
 その言葉を聞き、レオンは静かに笑う。
「フっ、これで捕らえたつもりか? 笑わすなよ」

 そう言い放つと、レオンの身体は炎に包まれる。
 そしてオルマの糸が焼け落ちる。
 立ち込める炎の中でレオンとリヴァは姿をくらました。
 ジラールも現れ、ハーミットを放とうとしたが、リューが制止した。
「今は体勢の立て直しが最優先です。そして一刻も早く、ドラゴのところに向かわねば! 向こうも襲われているかもしれません!」

 ミュラーは炎の先を見つめ、再認識した。

 今度の獲物はこいつらだな。確実に仕留めて、盛大に血祭りにあげてやる。

 心の中で殺意の炎をたぎらせた。
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