DEIVANITE / デイヴァナイト

ばにく

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プロローグ

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 神歴2015年、最高神ゲイルが死んだことによって空いた最高神の座。新たな最高神候補として抜擢された2人の上級神、ハランとクインテーゼ。神々の会合が開かれ何度も議論されるが、新たな最高神は一向に決まらなかった。痺れを切らしたクインテーゼはとある作戦を企む。

 「人間共に殺させればいい。」

 神々の間での殺し合いは禁じられていた。そこでクインテーゼは、人間を介し間接的にハランを殺す計画を実行する…

 新たな会合はフルタンの森にて行われる。木の葉の揺らぐ音、流れる川のせせらぎ。戦場になるとは到底思えない静かな自然の中だった。会合が始まる前、人目のつかないところでクインテーゼは1人の人間を呼び出した。

 「お前に命ずることはただ1つ。ハランの野郎を殺せ。」

 そう言ってクインテーゼはニヤリと笑う。男は冷静にクインテーゼに問う。

 「なら武器をくれるか?」

 「いいだろう。ただ、俺たち神々に人間は勝てるどころか傷一つ付けれない。そこでだ。この俺がお前の望む武器にしてやろう。」

 男は初め理解ができなかった。変身?武器に?色々な問いが頭を駆け巡るが、そんなものいくら考えても仕方なかった。男の答えは至って単純。確実に、かつ簡単に相手を殺せる道具。

 「銃だ。」

 男がそう言うと、クインテーゼはまたもやニヤリと笑う。そして神々しい光がクインテーゼを覆う。光が消えると、そこにクインテーゼの姿はなく、銃だけが落ちていた。

 「これは…」

 男は慎重にその銃を手に取る。
 Origin-12セミオートショットガン。見た目は至って普通だった。

 「気に入ったか?」

 男は驚く。周りを見るも、どこにもクインテーゼの姿がないからだ。そんな男にクインテーゼは説明する。

 「これは神装銃。神が銃に変身した姿だ。お前がこれを持ったことによって俺たちはバディとなった。脳内に直接話せるのはそれのおかげだ。」

 神装銃は普通の銃よりも重く、ずっしりしていた。まるで神の魂が銃に入っているかのようだった。

 「この神装銃を使えば、神を殺すことができる。」

 神殺し。クインテーゼと男は、今まさに禁忌を犯そうとしていた。

 「会合はもうすぐだ。やれるな?」

 そして予定時刻。会合場所には大勢の神々が集まったが、肝心のクインテーゼの姿がどこにもなかった。

 「クインのやつ、一体どこに行ったんだ…」

 その時1人の男が扉を蹴り破り入ってくることで、会場のざわめきを黙らせた。

 「さあ、やれ。」

 クインテーゼの低い声が響いたと同時に、容赦ない散弾の雨が降る。ドンドン!と重い銃声を鳴らし次々と会場の神々を蜂の巣にしていった。

 「ハラン様!危ない!」

 ハランのそばに居た中級神がハランに手を伸ばす。しかしその手はすぐに木っ端微塵に砕け散った。骨はむき出しになり皮がベロンとたれていた。なんという威力か。中級神が苦痛の叫びをあげる前に、2発目が飛んで来た。それはもろに頭に当たり、頭部を木っ端微塵に粉砕した。
 幸い恐怖で腰を抜かしたことによってハランはその場で伏せ、置いてある石材のテーブルが銃弾の雨から守ってくれた。

 「誰かあの男を止めろ…!」

 槍を持った護衛の中級神4人が男に向かって攻撃しようとするが、当然銃に適うはずもなく。呆気なく体の原型を留めない肉片と化した。
 しかし彼ら4人が時間稼ぎとなり、ハランは裏口から他の中級神と共に脱出することに成功した。2人は止まることを考えずにひたすらに走って会場から逃げた。

 「ちっ、ハランは逃がしたのか!」

 「すまない、普通の銃よりも反動が大きくてな。」

 男の神装銃がまた神々しく光る。光が消え辺りが見えるようになると、クインテーゼが姿を現した。クインテーゼは転がる死体を見ながら笑う。

 「まあいい、これでふざけた会合ともおさらばだ。」

 そう言って転がってる死体を蹴り飛ばす。床にはぴちゃぴちゃと足音をたてるほど血溜まりができていた。

 なんとか逃げ延びることのできたハランは、神々の園へと戻りクインテーゼの非道な行いを全て話した。

 「奴は禁忌を犯した!即刻処刑するべきだ!」

 ハランが血だらけの状態で神々に訴える。だが評議会の神々は少し面倒くさそうに顔をしかめる。

 「さすればハラン、貴様が最高神になる事が確実になってしまうだろう。それはちと平等性にかけるのではないか?」

 雪のごとき白髭を垂らした老神が問いかける。彼の言葉にハランは正気か?というほどに眉間に皺を寄せる。予想外の返答に言葉を失っていたハランに別の老神が話しかける。

 「じゃが、クインテーゼの行いは無視できないほどの悪行じゃ。現時点でそのような者を最高神にすることはできんじゃろうて。」

 老神は立ち上がり挙手する。それは評議会の多数決の開始を意味する。

 「ワシはクインテーゼの処刑に賛同する。」

 彼に続いて他の神々も立ち上がり挙手を始める。だが多数決は丁度五分五分だった。評議会の神々は皆同じように髭をさわって低い声を唸らせる。
 そこへ1人の若い男が重い扉をあけて入ってくる。その名もゼルド。若くして評議会となった期待の新星…のはずだったが。

 「いやぁ~悪いねぇ。遅れちったよ。」

 素行が荒く、常にルールを縛られない異端児であった。

 「今どんな感じ~?」
 
 「ゼルド、まずは言うことがあろう。」

 ゼルドは頭のてっぺんをポリポリかきながら席に着く。

 「いやさ、悪ぃとは思ってるけどよ…可愛い女神たちが行かないで~って言うもんだからよぉ。」

 「ふむ、貴様が謝る気がないということはよーくわかった。」

 「ほんとに悪いとは思ってるぜ?…で、今何してんの。」

 そう言ってゼルドの視線はハランに向けられる。入った時には気づかなかったが、ハランは血まみれの状態でそこに立ち尽くしていた。

 「クインテーゼの処刑について多数決を行っていた。貴様を除いて票数は半々。つまり貴様の票によってクインテーゼの処罰が決まる。」

 「ははーん、なるほどぉ。どうやら面白い時に来ちまったみたいだ。」

 ゼルドは机に手を乗せ身を乗り出してハランを見つめる。

 「俺は決めてるぜ!あんたを最高神にしたい!」

 「それはつまり…?」

 ゼルドは高々と手を挙げる。ガラス窓から差し込む神聖な光が彼全体を照らす。

 「クインテーゼの処刑に賛同する…!」

 「同意に7票、却下に6票。よって、クインテーゼを処刑処分とする!」

 その言葉を聞いてハランは安堵する。それは自身が最高神になるからではなく、間近で見たあの化け物を止められるという安心感からだった。
 すぐさまクインテーゼの処刑通告は神々の園全域に知らされた。耳にしたクインテーゼ派閥の神々は、次々に評議会へと押し入った。

 「クインテーゼが処刑処分とはどういうことです!?」

 「それではハランが最高神になってしまうだろう!」

 クインテーゼの行いには目を瞑り、彼の派閥の神々は都合のいいことを言い始める。

 「ハランが最高神になりたいが故に自作自演したんじゃないのか!」

 徐々に荒々しくなっていく群衆の元に、1人の男が近づいてくる。彼は薄汚れた翼を広げ声を荒らげる。

 「聞け!皆の者よ!」

 一瞬にして静まり返る評議会前。

 「クインテーゼ様の為に力を使ってくれる者がいるのなら、フルタンの森にて待っている!これは、クインテーゼ様からの伝言だ。」

 その言葉に、クインテーゼ派閥の神々は歓喜の声をあげる。その光景を建物から見ていたハランは、自身が狙われていることを直感する。

 「まずいことになった…」

 恐れていたことが起きるのはそう遅くなかった。クインテーゼは自身の派閥の神々を引き連れ次々と地上を占領していった。
 俺に従えば、下級神と同等の地位を約束しよう──口々にそう言い人々を従え、神をも殺せる兵士、デイヴァナイトを作り出していった。
 評議会の処刑部隊がクインテーゼの元へ向かったが、何週間経っても帰ってくることはなかった。事態の重さに気づいた評議会は、ハランを呼び出す。

 「ハラン、知っているだろうがクインテーゼはとてつもない力をつけ、急速に拡大し続けている。奴め、全ての神々を敵に回す気か…」

 「クインテーゼは神同士の殺し合いという禁忌を避けるため、人間とバディになり間接的に神を殺しています。」

 「ああ、デイヴァナイトだな。」

 「ですから我々も作るべきかと。彼ら人間を守るためにも。」

 クインテーゼは従わない人間がいれば容赦なく殺している。その最期は想像を絶するほどの有様だ。

 「ふむ、そうだな。だが今や奴の軍勢は計り知れないぞ。巻き返せるのか?」

 「おまかせください。その為にも、ぜひお力添えを願いたい。」

 「バディ用の神々だな。であれば評議会に任せるといい。大勢地上に連れていこう。」

 そして神歴2015年の8月、ハランは人間達と神聖安全保障省(H.S.B.)を設立。同時にクインテーゼもD.A.B.を結成し、さらなる戦力拡大へと動いた。
 同年10月、D.A.B.がH.S.B.の施設を攻撃したことをきっかけに、神威代理戦争が幕を開けた。そして10年経った今も、この戦争は激化の一途をたどっている。
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