転生したら村人Dだっただ

流星 ひかり

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第1章 転生したら村人Dだっただ

転生したら村人Dだっただ part4

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「パルパル植えるの私も手伝う!貸してー!」
柵を勢いよく飛び越えてこちらに駆け寄ってくるとリリーは僕の腰にぶら下げていたパルパルの種の袋を指差した。
僕は無言で袋をリリーに差し出した。 
無言だったのは無論リリーが嫌いだったからでは無い。
元々、十数年の引きこもり生活でコミュニケーション力は大幅ダウンしていたと思うが、マジで緊張して喋れなくなる。恐らくこれが一目惚れというやつなのだろう。
胸のドキドキが止まらない。
引きこもりの時アニメにハマっていて、キャラクターの目がハートになってる描写を見てこんなのあり得ないだろと心の中でツッコミを入れていたものだが、あのキャラクターに謝ろう。
多分今の僕も目がハートになっているに違いない。
それ程リリーの可愛さは異常だった。
「どうしたのボーっとしちゃって?」
リリーが首を傾げながら僕の顔を覗き込む。
「えっと、その...。」
「リリー、兄さん頭を打ったらしくて記憶が無くなってるみたいなんだ。」
弟がフォローしてくれた。
会ったばかりだが良く出来た弟だ。
「えー‼︎」リリーは驚くとすぐに気を取り直して僕が記憶を取り戻せるように僕たち兄弟とリリーの思い出話しをたくさん話して教えてくれた。
小さい頃に3人でカルムというカエルに角が生えたような姿をした赤い小型の生物を誰がたくさん捕まえられるか競争をよくした話しや、村の守り神トトン様を讃える夏祭りに毎年一緒に出かける話し、どれも転生した僕は当然知らない話しばかりだったがリリーがあまりにも楽しそうに思い出しながら話すのでその情景が浮かんで来てとても楽しかった。
「きっとすぐに色々思い出すよ。」と言うとリリーはニッコリ微笑みかけてくれた。
マジで天使だと思う。
その後は3人でパルパルの種を植えた後に、近くの丘でピクニックをしてリリーが作ってくれたクラヘンというサンドウィッチのような料理でクーと呼ばれるパンのようなものに僕たちが育てたミルペンという野菜を挟んだ食べ物を食べた。
ミルペンはキャベツやレタスに近いがシャキシャキさと水水しさが更に増したような食感でクーは外はカリカリ、中はふっわふっわで美味し過ぎた。
そうこうしているうちにあっという間に夕方になってしまった。
綺麗な夕日が僕たちを包み込んでいる。
「綺麗な夕日。」
リリーが夕日を見て目をキラキラさせている。
「今日も楽しかったねー!パルパル今年もたくさん出来ると良いね。」
「うん、あとは僕と兄さんの肥料の配分とか腕の見せ所だね。」
「出来るのが本当に楽しみー。また手伝いに行くねー。」
リリーが一日が終わる事が名残惜しそうに手を振る。
本当に楽しかった。
コミニュケーション力の無い僕は相槌ばかりで今日はほとんど2人と話せなかったが、ずっと引きこもり続けていた僕にとって人生で今日は1番楽しい時間だった。
「2人とも今日はありがとう。」
僕がお礼を言うと2人は僕に向かってニッコリ微笑み返してくれた。
転生して僕はどうやら村人Dというモブキャラになったようだけど、救世主とかチート能力者になるよりずっと良いと美しい夕日を見ながら僕は思った。
引きこもりの時には考えられなかった、とても充実して楽しい時間を過ごした僕は、
慣れない畑仕事を早く覚えようと心に誓った。
せっかく転生したチャンスを無駄にせず一日一日を大事にしよう。
この2人と一緒に僕はこの世界で生きていく。
この時の僕はこの幸せな時間がずっと続くと信じていた。

Part5に続く




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