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第1章 転生したら村人Dだっただ
転生したら村人DだっただPart6
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2人の男は旅人の様だ。
ダインの村人以外の人を見るのは初めてだ。
1人は銀色の髪に大きな黒い瞳、痩せているが筋肉質の身体をしていて、いわゆるさわやかイケメンってやつだ。背中に剣を背負っている。
もう1人は赤い髪に鋭い赤い瞳の目、背の高いゴッツイ筋肉質の男で腰にはかなり大きな剣を携えている。
動物は白いオオカミの様な姿だが、白い翼が生えているのが異様だった。
目が美しい金色で、頭に大きな角が一本生えている。
やっぱり異世界には変わった動物がいるものだ。
2人と1匹が村に入ると今まで動きを止めていた村人Aが急に動き出し、旅人に向かって歩き出した。
そして旅人の前に立つとさっきまで無言を貫いていた口を開いた。
「おや、おめえさん旅人かい?珍しいだあ。」
いや、誰やねん!?
僕は声が出せないので心の中で精一杯のツッコミを入れた。
普段標準語で話してる村人Aが明らかにいつもの口調でないなまった喋り方をしていたからだ。
そしてそれだけを言うと村人Aは立ち去り、何処かに歩いて行く。
今度は村人Bが突然動きだし、走りながら
旅人一行に近づく。
「はあ、忙しい!忙しい!畑仕事は大変だあ。」
村人Bもそれだけ言い残して何処かへ走りさっていく。
すると、間髪入れずに今度は村人Cと僕の弟、村の少年Aが旅人一行に近寄る。
「わーいわーい」
僕の弟、村の少年Aが急にはしゃぎ出して旅人一行の周りを走り回りはじめた。
「そんなに走り回ると危ないぞぉぉ。」
それを見ていた村人Cが村の少年Aを優しく注意すると、村の少年Aは返事もせずにそのまま何処かへ走り去っていく。
村人Cも歩いて何処かへ去っていった。
ビリっ!!
また全身が感電したような感覚がして、また僕の身体が勝手に動き出した。
他の村人達と同じように吸い寄せられるように旅人一行の目の前に立たされる。
口に違和感を覚える。歯医者で麻酔をかけられている感覚に似ているような気がした。
「ここはダインの村、ゆっくりしていくと良いだ。」
僕の操られたような身体は唐突にその言葉を旅人一行に言うと、他の村人と同じように何処かへ向かって歩きだした。
まるで訛りが入った台詞を誰かに言わされているようだった。
他の村のみんなも僕と同じで誰かに動かされて台詞を話させられたのだろうか?
僕と村人のさっきの様子はまるでテレビゲームのRPG(ロールプレイングゲーム)に出てくる「村人」そのものだった。
特に意味の無い台詞を旅をする勇者に語るただのモブキャラ。
僕は僕の名前が「村人D」だったことを思い出した。
弟が「村の少年A」だったことも。
この村の村人は皆何かのゲームの世界のモブキャラなのかもしれない。
そして旅人とオオカミがきっと勇者のパーティだったのだ。
僕たちは普段は普通に暮らす事が出来るけど勇者達が来た時は、このダインの村の雰囲気を伝えるためのモブキャラを演じなければならない。
あのビリっとする感覚にそういう風に操られてるんだ。
そう考えると納得がいったが、悟ったところで身体を動かす事が出来ないからどうする事も出来ない。
僕の身体の向かった先は自分の家だった。
弟の少年Aも先に家に着いており、食卓に座ったまま、黙り込んでいる。
僕も食卓に座らされた。どうやらまだ解放されていないようだ。
全く言葉を話す事も出来ない。
いつになればこの現象から解放されるのだろうか。
僕はとても長い時間、僕の弟と無言で向かい合う事になった。
目だけは動かせるので夜を迎え、また朝が来たので何となく丸一日経った事が分かった。
まだこの金縛りのような状態のまま僕と弟は食卓で待機させられている。
もしかして僕達モブキャラは勇者に台詞を吐いた後は用済みで一生このままなんだろうか?
ゲームの世界の裏側ってシビアだ。
そんな事を考えていると誰かがドアを開けて部屋に入って来た。
それは勇者一行と天使、リリーだった。
Part7へ続く
ダインの村人以外の人を見るのは初めてだ。
1人は銀色の髪に大きな黒い瞳、痩せているが筋肉質の身体をしていて、いわゆるさわやかイケメンってやつだ。背中に剣を背負っている。
もう1人は赤い髪に鋭い赤い瞳の目、背の高いゴッツイ筋肉質の男で腰にはかなり大きな剣を携えている。
動物は白いオオカミの様な姿だが、白い翼が生えているのが異様だった。
目が美しい金色で、頭に大きな角が一本生えている。
やっぱり異世界には変わった動物がいるものだ。
2人と1匹が村に入ると今まで動きを止めていた村人Aが急に動き出し、旅人に向かって歩き出した。
そして旅人の前に立つとさっきまで無言を貫いていた口を開いた。
「おや、おめえさん旅人かい?珍しいだあ。」
いや、誰やねん!?
僕は声が出せないので心の中で精一杯のツッコミを入れた。
普段標準語で話してる村人Aが明らかにいつもの口調でないなまった喋り方をしていたからだ。
そしてそれだけを言うと村人Aは立ち去り、何処かに歩いて行く。
今度は村人Bが突然動きだし、走りながら
旅人一行に近づく。
「はあ、忙しい!忙しい!畑仕事は大変だあ。」
村人Bもそれだけ言い残して何処かへ走りさっていく。
すると、間髪入れずに今度は村人Cと僕の弟、村の少年Aが旅人一行に近寄る。
「わーいわーい」
僕の弟、村の少年Aが急にはしゃぎ出して旅人一行の周りを走り回りはじめた。
「そんなに走り回ると危ないぞぉぉ。」
それを見ていた村人Cが村の少年Aを優しく注意すると、村の少年Aは返事もせずにそのまま何処かへ走り去っていく。
村人Cも歩いて何処かへ去っていった。
ビリっ!!
また全身が感電したような感覚がして、また僕の身体が勝手に動き出した。
他の村人達と同じように吸い寄せられるように旅人一行の目の前に立たされる。
口に違和感を覚える。歯医者で麻酔をかけられている感覚に似ているような気がした。
「ここはダインの村、ゆっくりしていくと良いだ。」
僕の操られたような身体は唐突にその言葉を旅人一行に言うと、他の村人と同じように何処かへ向かって歩きだした。
まるで訛りが入った台詞を誰かに言わされているようだった。
他の村のみんなも僕と同じで誰かに動かされて台詞を話させられたのだろうか?
僕と村人のさっきの様子はまるでテレビゲームのRPG(ロールプレイングゲーム)に出てくる「村人」そのものだった。
特に意味の無い台詞を旅をする勇者に語るただのモブキャラ。
僕は僕の名前が「村人D」だったことを思い出した。
弟が「村の少年A」だったことも。
この村の村人は皆何かのゲームの世界のモブキャラなのかもしれない。
そして旅人とオオカミがきっと勇者のパーティだったのだ。
僕たちは普段は普通に暮らす事が出来るけど勇者達が来た時は、このダインの村の雰囲気を伝えるためのモブキャラを演じなければならない。
あのビリっとする感覚にそういう風に操られてるんだ。
そう考えると納得がいったが、悟ったところで身体を動かす事が出来ないからどうする事も出来ない。
僕の身体の向かった先は自分の家だった。
弟の少年Aも先に家に着いており、食卓に座ったまま、黙り込んでいる。
僕も食卓に座らされた。どうやらまだ解放されていないようだ。
全く言葉を話す事も出来ない。
いつになればこの現象から解放されるのだろうか。
僕はとても長い時間、僕の弟と無言で向かい合う事になった。
目だけは動かせるので夜を迎え、また朝が来たので何となく丸一日経った事が分かった。
まだこの金縛りのような状態のまま僕と弟は食卓で待機させられている。
もしかして僕達モブキャラは勇者に台詞を吐いた後は用済みで一生このままなんだろうか?
ゲームの世界の裏側ってシビアだ。
そんな事を考えていると誰かがドアを開けて部屋に入って来た。
それは勇者一行と天使、リリーだった。
Part7へ続く
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