グータラ令嬢の私、婚約す。そしたら前世の記憶が戻った。

さくしゃ

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ミリアside

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(改めて見ると本当にそっくり)

 私が倒れたと聞いて慌てて駆けつけてくれたレオと自室のソファに向かい合って腰掛けていた。

「何?」

 お茶を飲みながらチラチラと見ていたのに、そのわずかな視線に気がついたのか、レオが訝しげな顔をした。

「口の端にクッキーの粉が付いているなぁってチラチラ見てた」

 大雅に瓜二つの顔をしていて気になって見てた。なんて口が裂けても言えない私は、適当に誤魔化す。

「え?!」

 適当に言った私の言葉を信じたレオは、慌てて口の周りをハンカチで拭き始めた。

「お主も純粋じゃのう……うそじゃ!」

 懐から扇子……は、持っていないのでテーブルの上に置いてあったティーカップ用のコースターを顔の前にもってきて髪が靡くように仰ぐ。妖艶に、優雅に見えるように。

「……」

 無言で分かりやすいほどに、カァァと頬を赤く染める、レオ。

(相変わらずわかりやすいなぁ……)

 そんなレオを生暖かい視線を向ける。

(「さやか」だった時も私がからかって単純な大雅がそれに騙される。よくよく思い出してみると前世の頃と変わらない関係、そして思い出したからこそ自覚したレオへの好意……)

 もじもじしながら恥ずかしそうに紅茶を啜るレオを見ていたらその姿が前世の大雅と重なって、愛おしくて懐かしくて涙がこぼれそうになった。

(ああー、やっぱり結ばれるならレオが良かったなぁ)

 心の奥深くにしまった想いが浮上してきて溢れそうになった。それをなんとか抑え込み、再び心の奥へと封じ込めた。

(やっぱりダメ。これ以上一緒にいたら決心が鈍ってしまいそう)

 話し始めて5分しか経っていなかったけど、私はテーブルの上に置かれた鐘を鳴らして侍女を呼んだ。

「ごめんなさい。急に強い眠気が襲ってきちゃったみたいで、すこし眠りたいからまた今度ゆっくりと話しましょう」

「え……あ、うん。わかった」

 私を心配そうに見つめるレオは、頷くとソファから立ち上がり部屋の入り口へと歩き出した。その背に向かって私は、

「ごめんなさい。大雅」

 と、小声で謝った。するとレオはビクッと反応して振り返って、

「え……今、たい」

 と言いかけたところで「失礼します」と侍女が部屋に入ってきた。

「レオを屋敷の入り口まで見送ってあげて。私はすこし疲れたから一度寝るわ」

「かしこまりました」

 と私の指示にカーテシーをした侍女はレオを連れて部屋を出て行った。部屋を出ていく時レオが何か言いたげな顔をしていたけど無言で手を振って見送った。

(大丈夫……前世と変わらない。自分の気持ちを偽るなんて得意だから。大丈夫)
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