グータラ令嬢の私、婚約す。そしたら前世の記憶が戻った。

さくしゃ

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ミリアside

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「おい、昨夜の話って本当か?」

「ああ。第一王子派閥が瓦解して王子は捕縛されたらしいから、国王は第二王子で決まりだ」

「あのこと。ジーニスト侯爵は痕跡を消したと言っていたが本当に大丈夫なんだろうか」

「あの慎重な侯爵のことだ。大丈夫に決まっている」

 ジーニスト侯爵邸大広間、私とメルエムの婚約発表パーティーに、ジーニスト侯爵と懇意にする周辺所領の貴族、商人、代官……総勢100名の来賓が集まり、グラスを片手に仲の良い者同士で話し合う。

「行こう」

 メルエムが手を差し出してきた。私はその手を見て一瞬ためらってしまったけど、メルエムや周囲の人たちにそれを悟られないように、

「ええ」

 笑顔を浮かべて手を乗せた。「グヒッ!」と特徴的な笑い声をあげたから思わず握られた手を離したくなったけどなんとか耐えた。

「あれがミリア様か」

「噂ではお転婆だと聞いていたが」

「美しい……」

 周囲の視線が私に釘付けとなる。とりわけ男性達からの頸や胸元、お尻に集中する視線が気持ち悪くて鳥肌が立ちそうになってしまった。

(でも、誰も私の挙動がおかしいとか疑っている人はいないな。特にメルエム……)

 声援に対して手を振るメルエムをチラリと見た。

「ありがとう」

 緩みきった笑顔、他者に見せつけるように指を絡めた恋人繋ぎ、私を見つめる時の「こいつはもう俺に堕ちてる」という自信に満ちた視線……。

(これでいい。これで)

 予想以上に狙い通りに進む状況に、一度は押し殺したはずの本音が心の奥底から浮上してきてたびたび顔を出して台無しにしようとするけど、自身の心に、
これでいい。これが正しい……と言い聞かせ続けた。

 私とメルエムが壇上に上がって挨拶をしようとした時、

「失礼する!」

 大広間の扉が勢いよく開け放たれた。
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