いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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伝説の力

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 ー勇者sideー

 目と鼻の先に王都が見えるところまで来ていた。

 「気配探知……」

 まずは、状況確認の為に、王都中に風の魔力を流す。

 (東門と西門の方は、あと少しで片がつきそうだ)

 東門では、岩の巨人、西門では、津波により次々にゴブリンの反応が消えていく。

 (劣勢なのは……南門……)

 南門では、エミが先陣を切りオーガ達と戦っていたが、均衡が崩れ、押され始めて隊士達の反応がどんどん消えていっていた。

 (く!)

 日向は縮地を使い、南門へ駆けつける。


 *****************


 ーマーク王国王都南門「紅蓮」隊士sideー

 力尽き地面に座り込む紅蓮の副隊長のエミに、オーガが棍棒を振り上げる。

 「エミ王女!」
 「副隊長!」
 「エミさん!」

 隊士達は叫ぶ。

 誰もが終わったと思った。隊長不在の現状で隊の心の支えとなっているのは、エミだ。どんな絶望的な戦況下でも、いつだってエミが先陣を切って勝てなかったことなんてなかった。厳しいけど、誰よりも努力家で本気で魔王から世界を救おうとしていた副隊長。

 「ダメ!」
 「死なないで!」
 「副隊長!」

 しかし、無情にもオーガの棍棒が振り下ろされる。

 間に合わない……

 駆け出した隊士達が諦めかけた時、空から一本の槍が飛んできて、エミの前にいたオーガを切り裂き、地面に刺さる。その後すぐに、雨のような矢が降り注ぎ、隊士達を襲っていたオーガの胸を次々と貫いていく。

 「遅くなり申し訳ありません。もう大丈夫です」

 日向が姿を現す。

 「「「……ゆ、勇者様!」」」

 その姿を見た隊士達は、日向とエミに駆け寄る。


 *******************


 ー勇者sideー

 「あとは僕に任せて下さい。エミさんを頼みます」
 
 日向は集まって来た隊士の人たちにエミを抱えてもらい門の方まで下がってもらう。

 その間も歩みを止めることなく日向に向けて残りの600体のオーガ達が走り出す。

 (間に合わなかった……)

 日向は、周りに倒れている10数人の動き出した遺体を悲痛な眼差しで眺める。

 (ごめんなさい……僕が間に合わなかったばかりに……でも、あなた方が守ろうとしたものは僕が絶対に守り抜きます。どうか安らかに眠って下さい)

 日向は魔法の弓矢を構え、狙いを定める。

 「風の雨(ウィンドレイン)」

 数百の矢がグールとなった隊士達の胸の核、その後ろから迫り来るオーガの目に向かって飛んでいく。

 「「あア……」」
 「「グア……」」

 風の矢は正確に射抜き、グールとオーガ200が倒れる。

 「「グア!」」

 それでも残りの400のオーガは壁となっている仲間の遺体を吹っ飛ばしながら日向に突撃していく。

 「シ!シ!シ!」

 日向は迫り来るオーガ達に矢を放ちながら、風を操り、隊士達の遺体を門の方へと運ぶ。

 (これで周りを気にせずに戦える……〈限界突破〉の制限時間は、残り1分……なら)

 日向は、右手に槍を持ち、弓を引くように構える。両足を前後肩幅に開き、腰を落とす。左手で照準を合わせ、全身に風を纏う。

 「ふぅ……」

 目を閉じ、呼吸により張り詰めた体を柔らかくする。

 「「グアア!」」

 ドドドドドド!

 オーガの突撃で地面が揺れる。その様は、球場に駆けつけた大観衆が自チームの応援で足踏みをした時に、その振動で激しく揺れるスタジアムのような感じだ。

 普通なら焦って逃げるが、日向は落ち着いていた。

 (まだだ。もう少し……)

 気配探知により、目を閉じていてもオーガ達との距離は正確に把握している。

 (オーガ達が僕に到達するまで……30……20……今!)

 脱力した体に一気に力を込める。限界まで押さえ付けられていたバネが押さえを外した瞬間に、一気に飛び跳ねるように、オーガ達に向かって飛び出す。それと同時に右手の槍を右腕がまっすぐになるように突き出す。

 「一閃」

 先頭のオーガに槍が当たった瞬間に、体に纏う風を吹き荒れさせ、進行方向にいる全てのオーガを吹き飛ばし、真っ直ぐと突き進む。

 「「「グアア!」」」

 オーガ達は吹き荒れる風に上空200mまで飛ばされ、そのまま身動き取れずに落下し、地面に激突。

 「グ……ア」

 絶命し、動く者はいなかった。

 ーー〈限界突破〉使用限界時間です。これより1日のインターバルに入ります。

 日向の脳内にアナウンスが流れると、体を纏っていた緑色のオーラは消え、限界を超えて動き続けていた日向は、疲労からパタンと前のめりに倒れる。
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