いじめられっ子の僕が

さくしゃ

文字の大きさ
43 / 69

対3勇者 ②「リア」

しおりを挟む
 緑豊かな山や森、多種類の生物が存在し共生した広大な湖「豊かな(アバンダンス)」と聖都「ゼロ」……幸せに満ちていた彼の地は、現在、魔人の手によって地獄へと変えられ、残された命は木と小動物達だけとなっていた。

 雄大な自然は懐深く何者をも受け入れる。しかし、そんな自然でさえも魔人に対しついには怒り、久しく降らなかった雨を降らせ、雷がゴロゴロ鳴り響く。

 そんな湖の周りでは激しい戦いが繰り広げられていた。北に勇者と魔人、東にリナとグールとなったジェット、そして西側では……

 「水弾(ウォーターバレット)!」
 「水弾(ウォーターバレット)」
 
 エミとリアによる水の弾丸の撃ち合いが繰り広げられていた。

 ダダダダダダ……

 互いに自身の前で、ガトリングガンのように球を回転、発射し、減った時点から球を作り、装填する。

 「はあ!」
 「……」

 互いの打ち出した水弾がぶつかり、水しぶきが舞う。

 「はあ!は!」
 「……っ!」

 撃ち合いは互角だったが、発射速度を上げたエミが水魔法の最強の使い手のリアを押す展開へと発展する。

 「く!」

 リアもなんとか発射速度を上げて対抗するが、僅かにエミが上回り、中間地点でできていた水たまりがリアに近づいていく。

 (もう少し……)

 水弾のぶつかり合いによる水しぶきがリアの服を濡らす。

 「……水壁!」

 リアは水の壁によってエミの水弾を防ぐ。

 「ち!」

 エミは水弾を放ちながら魔力を練る。

 「水刃(ウォータースラッシュ)!」

 自身の中で魔法効率、燃費が最もよく威力のある三日月の形をした水の刃がリアの上下左右後ろから挟み込むように飛来する。

 「……」

 しかし、リアは慌てることなく魔力を練り上げ、自身の周りに水を出現させる。

 「水獄(ウォータープリズン)」

 魔法は形を成し、リアを水の膜が覆う。その膜に水の刃が衝突する。

 トプン……

 水の刃は水の膜に触れた瞬間に動きを止め、形を崩し、地面に水溜りを作る。

 「リア……」

 ミカはリアを見つめる。

 ーーどう?すごいでしょ!私を覆う水の膜がどんな攻撃でも柔らかく受け止めて、魔法なら水のように溶かしてしまうの!これで私に気兼ねすることなく前衛のサポートに集中できるわよ!

 前衛のサポートばかりに行ってしまうミカはいつもリアを守れないことを気にして落ち込んでいた。そんなミカのためにリアが基本の防御魔法「水牢」を元に進化させたほぼオリジナル魔法。

 「ミカ……」

 思い出がよみがえり、目尻に涙を浮かべるミカに確認するようにエミは名前を呼ぶ。

 「……ふぅ」

 涙を拭い、目を見開く。

 「大丈夫です!」

 ミカは力強い眼差しをエミに向ける。

 「そう……なら、お願い!」
 「はい!」

 今までエミの横に立ち、2人の撃ち合いを眺めていたミカはエミの前に立ち盾を構える。

 ーー1度発動すると5分は解けないし、ほとんどの操作の意識をこの魔法に持っていかれる。だから、あまり攻撃はできなくなるのが難点なの……

 かつてリアが仲間だけに教えてくれた魔法の欠点。

 (ごめんね)

 ミカは心で謝りながら、盾で水弾を防ぐ。

 「ふぅ……」

 その後ろでは、エミが魔力を練ることだけに集中する。

 (今の私ならできる!)

 魔力を練り上げたエミは頭の中で形にする魔法をイメージする。

 (蛇のような体、どんな攻撃も防ぐ硬い水色の鱗、背中には空を飛ぶための羽、鋭い牙……)

 思い浮かべるのは、神話上の伝説の水神……

 「水魔法「水の化神(リヴァイアサン)!」

 湖の水が東洋に伝わる細長い体をした半透明の龍へと姿を変える。その全長は有に30mはあり、意志を持ったように空中を飛び、エミの頭上で止まり敵であるリアを見据える。

 「!」

 口を開き鋭い牙を見せ、喉を震わせるが所詮は水が形を成しただけなので声は出ない。しかし、その眼光からは、水の神たる圧力が伝わり、空気が肌をはす。

 「な!」

 リアはその存在感に圧倒され思わず攻撃をやめて、本能のままに防御の構えを取る。

 「やっと完成した」

 エミは笑う。昔好きだった伝記に出てくる世界を守る神様……ずっと自身の奥義として形にしようとしていた魔法……

 「いくわよ!」

 エミの気合いに、リヴァイアサンも続き声は出ないが、無音の叫びで応える。

 「水神魔法!」

 リヴァイアサンは大きな口を開く。

 ブシュウウウ……

 開いた口に水が集まっていく。

 「水神の咆哮!」

 リヴァイアサンの口から超圧縮された水が放出される。かつてこの世を飲み込もうとする津波を一瞬にして吹き飛ばしたとされる神の一撃……それがリアの胸の核めがけて音を置き去りにし飛んでいく。

 「っ…!」

 「水獄(ウォータープリズン)」にさらに魔力を込めようと行動を始めたばかりのリアの胸を貫く。

 パリィン……

 「……」

 リアは胸を触る。赤く染まった手、徐々に力が抜けていく感覚、そして、胸に感じる痛み……

 「ふふふ」

 リアは笑う。グールの時に感じなかった身体の痛み、心の痛みを感じて……そして、ミカを見て

 「ありがとう」

 その言葉を残して地面に横たわる。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...