いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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対3勇者 ③「ジェット」

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 エミとリアが「水弾(ウォーターバレット)」の激しい撃ち合いを繰り広げている時、東の湖畔では……

 「飛ぶ斬撃(スラッシュ)!……瞬動!」

 斬ると焼くを両立させた燃え盛る斬撃を十字に放ち、高速移動で斬撃を追い越して刀を中段に構えるジェットに上段からまっすぐとロングソードを振り下ろす。

 「ふ!」

 自身の頭部へと迫るリナの剣の刃を狙ってジェットは中断に構えた刀をそのまま突き上げる。

 ギィン!……

 厚さ1ミリのロングソードをそれよりもさらに細い刀の切先で止める。

 「く!」
 「はあ!」

 そのまま押し合いとなるが、「ふん!」とわずかに力、技術で上回るジェットに押し切られリナはロングソードを持ったままバンザイの状態で後ろへ飛ばされる。

 「く!」

 リナは腹筋に力を込めて姿勢を戻し、背筋によってはじかれた手を中段へと構え直し、地面に着地する。

 「はあ!」

 着地早々に再び上段から剣を振り下ろす。

 「ふ!」

 今度は剣の切先を狙った突きではなく喉元を貫く一撃を放つ。

 「……瞬動」

 リナは刀の切先が喉に触れる直前、「瞬動」による高速移動で姿を消す。

 「やはり……」

 リナの行動を読んでいたジェットはそのまま刀の突きを巧みに肩甲骨、筋肉、伸びきっていない関節を伸ばして威力を上げて、飛んでくる十字の斬撃を貫く。

 「は!」

 前方に腕が伸び切ったジェットの背後にリナが現れ、上段から剣を振り下ろす。

 「……」

 ジェットは慌てることなくそのまま全体重を前方にかけて、自身の背後に迫る剣よりも先に地面に倒れ込み、左にゴロゴロ転がる。

 「く!」

 横に転がっていくジェットの腕を数ミリだけ切り裂くが完全に避けられてしまい、そのまま振り抜き地面を切り裂く。

 「ふぅ……」

 転がったジェットは仰向けになるとブリッジをしてそこからバク転で起き上がり、刀をリナに向けて構える。

 (やはり経験は向こうのほうが上で即座に対応されてしまうな……)

 はぁはぁ……とカウンタータイプのジェットの守りを崩す攻撃と攻撃を避け続けたことで先に息が切れてしまった。

 (カウンター攻撃を避けるのも難しくなってきた……さあ、どうする……)

 瞬時に思いついた攻撃も全て試したリナは頭を悩ませる。

 そんな時にふとマウリスの言葉が浮かぶ。

 ーーいいかい。戦場では自分よりも強い敵と対峙することはざらにある。そんな時は自分の優ってるポイントを駆使して戦う。完全に全てで上回れてる場合は……戦う中で相手よりも強くなれ!戦いは常に成長するものだけが生き残り続ける。

 (って父さんはよくいってたなぁ…脳筋の父さんならではの発想だな…)

 リナは呆れつつも笑顔を浮かべる。

 (でも、正しい……速度はこちらの方が少し上だが当たらない。なら、戦いの中で強くなればいいだけ……)

 「ふぅ……」

 まずは基本に立ち返り体の力を抜き、剣を中断に構え、体の軸がぶれないように真っ直ぐと立つ。

 (……あれ?)

 リナの中で何かがカチッとはまり、大きな歯車が回り出す。

 (なんだろう……今まで父さんのように相手が気づかぬ速度で移動して斬り捨てるって戦い方に憧れて鍛錬してきたけど、最近はなかなか速度が上がらずに伸び悩んでいた……けど、久しぶりにいい感じだ…)

 体の力が抜け切ると余分だった強張っていた体は軽くなり、余計な思考もなくなり、視界は敵の筋肉の動きが俯瞰(ふかん)していても見えるほどに感覚が鋭くなっていく。

 「ふぅ……ふっ!」

 前後に足を開き、腰を落とし、剣先を相手に向けて横から突きを放つ姿勢で構え、ふわっ……と霧が朝日に照らされ蒸発して消えていくように姿を消す。

 「……く!」
 
 リナが移動したことを一瞬遅れて気づいたジェットは脱力した体に緊張を走らせて備える。

 (先程までは燃え盛るように力押しが多かったが、急に煌めき焦がすほどの小さな炎に変わり鋭くなった……)

 ふわっ…とジェットの前には揺らめくようにリナが姿を現し、胸の核を狙い突きを放つ。

 「ふっ」

 攻撃を放つ時の声からも力が抜けているのが感じる。しかし、攻撃も速度もどんどん鋭さが増していく。

 ギィン……

 中段に構える刀の横をリナの剣がすり抜けていく。

 「は!」

 刀にリナの剣の腹が当たった音がジェットの耳に届く。その瞬間ほぼ脊髄反射で刀を右横に動かす。

 ギギギイン……

 刀に刃をリナの剣が滑っていく。

 ブシュウウ……

 リナの突きの軌道はそれ、ジェットの首右頸動脈を掠めて行き、血が飛び散る。

 「!……は!」

 しかし、グールなので痛みは感じず、そのまま横へとずらした刀を前に手首だけで動かす。

 刀の切先がリナの右肩口に迫る。

 「ふぅ……」

 ガコっ……と肩の関節を外し、腕をだらんとさせることで剣から強引に手を離し、垂れ下がった腕の横を薄皮一枚分、刀が通り過ぎていく。

 サクッと寄れた部分の服を一部切り裂いていく。

 「瞬動…」

 再びふわっと力を感じさせない速さで移動して距離を取る。

 (ととと……思ったよりも早く動けて反応が遅れる時がある……でも、慣れてきた!それにまだまだ早くなれる!)

 バランスを崩しつつも体勢を整え、上段に剣を構える。

 (まだ速さに体が慣れてき始めたばかりのようだな……これ以上早くなられると対応できん……)

 ジェットは上段に刀を構える。

 何万、何十万、何百万回と振ってきた上段からの振り下ろし。決めると決心した時にだけ見せる必殺の構え。

 「これで決める!」
 「ここで決める!」

 互いに必殺の上段からの構えを取り、5歩踏み込めば互いの剣が当たる距離でしばらく見つめ合う。

 「……瞬動」

 リナが先に動く。

 蜃気楼のような残像を残してジェットの懐へ入る。

 「は!」

 しかし、先程よりも速い動きで仕掛けてくると踏んでいたジェットはリナが現れた瞬間に敏感に風のゆらめきを肌で感じ取り、リナよりも先に剣を振り下ろす。

 「ふ……」

 少し遅れてリナが剣を振り下ろす。

 (とった……)

 ジェットの刀がリナの左肩から右腰にかけて斜めに切り裂く。

 パリィン……バタン……

 敵を見据えていた視線は下を向き、地面を見つめ動かなくなる。

 「はぁ……とんでもなく強い相手だった」

 ジェットの背後から突きを繰り出していたリナは剣を鞘に収める。

 「賭けだったけど残像を切らせる作戦がうまくいってよかった」

 リナは倒れたジェットに手を合わせて歩き出す。
  
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