4 / 12
ギルドへ
しおりを挟む
「ふー美味しかったぁ。ご馳走様」
膨らんだお腹をパンパン叩く。
「お口にあったようで良かったです」
「会うなんてもんじゃなかったよ!すっごく美味しかった!ありがとう」
あたしは紅茶を受け取りつつ微笑む。
飲み方の作法なんてわからないから適当でいいや……何これ!すごく美味しい!
「そんな私なんてまだまだです。もっとアイリス様を喜ばせられるように精進いたします」
「んー謙虚!めっちゃ謙虚!なんだけど誇っていいよ。エーさんの料理番としての腕はかなりのものだよ。今度本当に酷い料理とはどういうものか私が作ってあげよう~」
くくく……深く深く記憶に刻み込まれること間違いなし!と、そんなことはどうでもよくて。
「それより早く行かないとギルドが混み出しちゃう。エーさんが昨日仕留めたオークを解体しない」
「あ、それならもう終わっていて空間魔法にしまってあります」
エーさんは亜空間を出現させて手を突っ込みオークの魔石を取り出す。
「この通りです」
「ああ。そういえばさっき目を覚ました時解体していたねもんね……それより空間魔法も使えるの!」
魔法使いが何十年と修行してようやく習得できる魔法なのに……身体強化を自分へかけられる件とも含めて一体どうなってるの?
「はい。クロード達が支援者と会食している時は宿で1人きりで暇だったので空間魔法を使えればみんなの負担を少しでも減らせると思って覚えました」
話すたびに硬さが取れてきた様子のエーさんは柔和な笑顔を向けてくる。
く!と、尊い!守ってあげたいこの笑顔、
「よし。こんないい子を捨てたクズ勇者はいつかぶん殴ろう」
「?どうかしました?」
首をかじけるエーさん。
「大丈夫。エーさんはもう1人じゃないから。私が幸せにするから勇者のように捨てることなんてしないから安心しな」
心配そうに私を覗き込むエーさんを抱きしめる。
「よくわかりませんがよろしくお願いします」
上目遣いのエーさん。
はふーん!もうめっちゃかわええええ!
「お、遠くに見えるあの外壁はカーティスの街だ」
あれから食器や机を片付けた私とエーさんは森の中を流れる川を下った。
するとやはり私の勘は当たっていたようですぐに森は開け遠くに街壁が見えた。
「ということは街近くにあるこの森ってB級ダンジョン『オーガの森』か」
なるほど。通りでゴブリンとかオークに出会いまくるわけだ。
私達がいる森はオーガが根城とする所で通称「オーガの森」
この世界各地にはダンジョンと呼ばれるものが存在しその種類は3種類。
地下迷宮型、天空型、そしてここのように地上に存在する地上型がある。
しかしダンジョンと言っても稼げる場所はごく稀でそんな場所は国が厳重に管理し限られた冒険者もしくは騎士達に攻略させ続け利益は国主が独占するという理不尽仕様になっている。
そしてここは地上型ダンジョンでも不人気の場所。
素材が高く売れるのはオークとオーガだけ。
それ以外は魔石が少額で取引されている。
それでも数を多く仕留めればそれなりの稼ぎになるとC級冒険者だけにやたら人気の場所。
「それにしてもエーさんってやっぱりかなり強いよね。さっき1人で50匹のボブゴブリンを狩ってたし。というか下手したら私より強くね?」
「いえ。私なんて1人でようやくレッドドラゴンの気を引くことができる程度なのでまだまだです」
照れくさそうに謙遜するエーさん。
私から言わせれば「何言ってんのこの人?」と言いたい。
まずレッドドラゴンは龍族の中でも上から2番に強い属性龍というカテゴリーになる。
A級冒険者でも1人ならすぐにやられてしまうS級モンスター。
それを1人で気を引きつけられるってそもそも相手から脅威だと思われていないとできない芸当となる。
「エーさん!君はもっと自分を誇って良いよ」
「はぁ……よくわかりませんが。もっと誇れるように精進いたします!」
「うん!謙虚!」
エーさんはとっても良い子である。
さて、そんなこんなでいつもウザ絡みしてくる門番をエーさんが蹴散らし街の中心部に程近い場所にある冒険者ギルドへ。
カーティスの街は魔族領が近くにあり毎月のように魔族が攻め込んでくる。
それに近くには高難度ダンジョンが多数存在するため世界で1番冒険者に対する仕事が充実した危険な街。
当然冒険者ギルドもデカく街の真ん中にそびえ立つ領主の城に次ぐ大きさの四角い建物。
建物の一辺は約五十メートルで高さは三十メートルの8階建て。
一階は受付カウンターや酒屋、2階にギルド直営の鍛冶屋、直接指名依頼する場合の会議室、
3階から5階は冒険者用の宿泊施設、それより上はギルド職員寮、最上階にギルマス室がある。
「なあ、ちょっと金に困っててよ。悪いんだけど俺の分の酒代全部払ってくれねえ?」
私とエーさんが入るといつものようにウザ絡みしてくるC級冒険者「腹下しのホイ」
冒険者、特に前衛職である剣士達の中には索敵ばかりで戦闘ではお荷物。と盗賊をよく思わない者が多く、特に自分よりも上のランクにいる盗賊に絡む剣士や戦士は多い。
「そんなお金があるなら今日は休みたいよ」
私はいつものように相手にせずその場を後にしようとするのだが、
「おい!俺より階級が一つ上だからって調子に乗ってんじゃねえぞ!この俺様がわざわざ盗賊のような雑魚に優しくお願いしてんだから素直に金を払えばいいんだよ!痛い目見たくねぇだろ?」
かなり酔いが回っている様子のホイ。
ギルド内にその声は響き渡り受付嬢が慌ててギルマスを呼びに行った。
あーあ、バカだなこいつ。私が穏便に済ませようって気を遣ったのに。
「おい!無視すんじゃねえって言ってんだろう!!」
キレたホイは手にするコップを私に向かって振りかぶる。
「私のご主人様を馬鹿にするのは許せません」
私の隣に立つエーさんは一歩前に出て私に迫るコップを蹴り飛ばす。
そのまま右蹴打の勢いを利用し1回転。
左のバックスピンキックをホイのお腹に炸裂させる。
「グボ!」
腹下しのホイはお腹を抑えてその場に倒れ込む。
「終わりました。それではカウンターへ参りましょう」
「……やっぱりエーさん私より強くね?」
「そんなことはありません。あの位ならば駆け出し冒険者でもできますよ」
またまた謙遜するエーさん。
「「「いや、できんて」」」
私も含めたギルド内にいる者達の声がハモる。
膨らんだお腹をパンパン叩く。
「お口にあったようで良かったです」
「会うなんてもんじゃなかったよ!すっごく美味しかった!ありがとう」
あたしは紅茶を受け取りつつ微笑む。
飲み方の作法なんてわからないから適当でいいや……何これ!すごく美味しい!
「そんな私なんてまだまだです。もっとアイリス様を喜ばせられるように精進いたします」
「んー謙虚!めっちゃ謙虚!なんだけど誇っていいよ。エーさんの料理番としての腕はかなりのものだよ。今度本当に酷い料理とはどういうものか私が作ってあげよう~」
くくく……深く深く記憶に刻み込まれること間違いなし!と、そんなことはどうでもよくて。
「それより早く行かないとギルドが混み出しちゃう。エーさんが昨日仕留めたオークを解体しない」
「あ、それならもう終わっていて空間魔法にしまってあります」
エーさんは亜空間を出現させて手を突っ込みオークの魔石を取り出す。
「この通りです」
「ああ。そういえばさっき目を覚ました時解体していたねもんね……それより空間魔法も使えるの!」
魔法使いが何十年と修行してようやく習得できる魔法なのに……身体強化を自分へかけられる件とも含めて一体どうなってるの?
「はい。クロード達が支援者と会食している時は宿で1人きりで暇だったので空間魔法を使えればみんなの負担を少しでも減らせると思って覚えました」
話すたびに硬さが取れてきた様子のエーさんは柔和な笑顔を向けてくる。
く!と、尊い!守ってあげたいこの笑顔、
「よし。こんないい子を捨てたクズ勇者はいつかぶん殴ろう」
「?どうかしました?」
首をかじけるエーさん。
「大丈夫。エーさんはもう1人じゃないから。私が幸せにするから勇者のように捨てることなんてしないから安心しな」
心配そうに私を覗き込むエーさんを抱きしめる。
「よくわかりませんがよろしくお願いします」
上目遣いのエーさん。
はふーん!もうめっちゃかわええええ!
「お、遠くに見えるあの外壁はカーティスの街だ」
あれから食器や机を片付けた私とエーさんは森の中を流れる川を下った。
するとやはり私の勘は当たっていたようですぐに森は開け遠くに街壁が見えた。
「ということは街近くにあるこの森ってB級ダンジョン『オーガの森』か」
なるほど。通りでゴブリンとかオークに出会いまくるわけだ。
私達がいる森はオーガが根城とする所で通称「オーガの森」
この世界各地にはダンジョンと呼ばれるものが存在しその種類は3種類。
地下迷宮型、天空型、そしてここのように地上に存在する地上型がある。
しかしダンジョンと言っても稼げる場所はごく稀でそんな場所は国が厳重に管理し限られた冒険者もしくは騎士達に攻略させ続け利益は国主が独占するという理不尽仕様になっている。
そしてここは地上型ダンジョンでも不人気の場所。
素材が高く売れるのはオークとオーガだけ。
それ以外は魔石が少額で取引されている。
それでも数を多く仕留めればそれなりの稼ぎになるとC級冒険者だけにやたら人気の場所。
「それにしてもエーさんってやっぱりかなり強いよね。さっき1人で50匹のボブゴブリンを狩ってたし。というか下手したら私より強くね?」
「いえ。私なんて1人でようやくレッドドラゴンの気を引くことができる程度なのでまだまだです」
照れくさそうに謙遜するエーさん。
私から言わせれば「何言ってんのこの人?」と言いたい。
まずレッドドラゴンは龍族の中でも上から2番に強い属性龍というカテゴリーになる。
A級冒険者でも1人ならすぐにやられてしまうS級モンスター。
それを1人で気を引きつけられるってそもそも相手から脅威だと思われていないとできない芸当となる。
「エーさん!君はもっと自分を誇って良いよ」
「はぁ……よくわかりませんが。もっと誇れるように精進いたします!」
「うん!謙虚!」
エーさんはとっても良い子である。
さて、そんなこんなでいつもウザ絡みしてくる門番をエーさんが蹴散らし街の中心部に程近い場所にある冒険者ギルドへ。
カーティスの街は魔族領が近くにあり毎月のように魔族が攻め込んでくる。
それに近くには高難度ダンジョンが多数存在するため世界で1番冒険者に対する仕事が充実した危険な街。
当然冒険者ギルドもデカく街の真ん中にそびえ立つ領主の城に次ぐ大きさの四角い建物。
建物の一辺は約五十メートルで高さは三十メートルの8階建て。
一階は受付カウンターや酒屋、2階にギルド直営の鍛冶屋、直接指名依頼する場合の会議室、
3階から5階は冒険者用の宿泊施設、それより上はギルド職員寮、最上階にギルマス室がある。
「なあ、ちょっと金に困っててよ。悪いんだけど俺の分の酒代全部払ってくれねえ?」
私とエーさんが入るといつものようにウザ絡みしてくるC級冒険者「腹下しのホイ」
冒険者、特に前衛職である剣士達の中には索敵ばかりで戦闘ではお荷物。と盗賊をよく思わない者が多く、特に自分よりも上のランクにいる盗賊に絡む剣士や戦士は多い。
「そんなお金があるなら今日は休みたいよ」
私はいつものように相手にせずその場を後にしようとするのだが、
「おい!俺より階級が一つ上だからって調子に乗ってんじゃねえぞ!この俺様がわざわざ盗賊のような雑魚に優しくお願いしてんだから素直に金を払えばいいんだよ!痛い目見たくねぇだろ?」
かなり酔いが回っている様子のホイ。
ギルド内にその声は響き渡り受付嬢が慌ててギルマスを呼びに行った。
あーあ、バカだなこいつ。私が穏便に済ませようって気を遣ったのに。
「おい!無視すんじゃねえって言ってんだろう!!」
キレたホイは手にするコップを私に向かって振りかぶる。
「私のご主人様を馬鹿にするのは許せません」
私の隣に立つエーさんは一歩前に出て私に迫るコップを蹴り飛ばす。
そのまま右蹴打の勢いを利用し1回転。
左のバックスピンキックをホイのお腹に炸裂させる。
「グボ!」
腹下しのホイはお腹を抑えてその場に倒れ込む。
「終わりました。それではカウンターへ参りましょう」
「……やっぱりエーさん私より強くね?」
「そんなことはありません。あの位ならば駆け出し冒険者でもできますよ」
またまた謙遜するエーさん。
「「「いや、できんて」」」
私も含めたギルド内にいる者達の声がハモる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる