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エミリア視点
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ヴァーンズが屋敷を飛び出す2時間前。
「久しぶりの一人の時間……」
時刻は4時。月が西の空の端っこへ移動し、東から太陽が顔をうっすらと出し空が白み始めた頃。
「最高!」
私は実家ーー世界最難関ダンジョン「神滅領域」を目指して空を飛んでいた。
バーンズ男爵領から北東へ2日飛んだ場所にある湿地帯ーー年中霧が辺りを覆い、太陽の光が差し込むことのない不気味な湿地帯の真ん中に、斜めに傾いた石造りの塔が佇んでいる。その建物が私の実家で生み出された研究施設で、世界最高難度ダンジョン「神滅領域」
「こんなに大きな声を出してもだーれにも注意されない~!」
眼下に広がる森で奏でられる風に揺れる木の葉の音、小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、動物たちの鳴き声……四重奏の旋律にのせて私は叫ぶ。
「なんて楽しいのかしら~」
声を弾ませて……だけど、
「……」
続く言葉が出てこない。かわりに浮かび上がってくるのは昨夜の結婚記念日を祝う席でのこと。
「……」
緊張のしすぎで何もいえず無言で終わった。
"綺麗だ"
その一言がただ欲しかった。
年甲斐もなく華やかなドレスに身を包んだのも、ネックレスで着飾ったのも……
「ただその一言が」
あの頃の、愛し合っていた頃の二人にただ戻りたかった。
ずっと子育てで我慢してきた『女』としての私を認めて欲しかった。
「……」
太陽が完全に顔を出し、私の頬をつたう雫を照らした。
「……ばか」
「久しぶりの一人の時間……」
時刻は4時。月が西の空の端っこへ移動し、東から太陽が顔をうっすらと出し空が白み始めた頃。
「最高!」
私は実家ーー世界最難関ダンジョン「神滅領域」を目指して空を飛んでいた。
バーンズ男爵領から北東へ2日飛んだ場所にある湿地帯ーー年中霧が辺りを覆い、太陽の光が差し込むことのない不気味な湿地帯の真ん中に、斜めに傾いた石造りの塔が佇んでいる。その建物が私の実家で生み出された研究施設で、世界最高難度ダンジョン「神滅領域」
「こんなに大きな声を出してもだーれにも注意されない~!」
眼下に広がる森で奏でられる風に揺れる木の葉の音、小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、動物たちの鳴き声……四重奏の旋律にのせて私は叫ぶ。
「なんて楽しいのかしら~」
声を弾ませて……だけど、
「……」
続く言葉が出てこない。かわりに浮かび上がってくるのは昨夜の結婚記念日を祝う席でのこと。
「……」
緊張のしすぎで何もいえず無言で終わった。
"綺麗だ"
その一言がただ欲しかった。
年甲斐もなく華やかなドレスに身を包んだのも、ネックレスで着飾ったのも……
「ただその一言が」
あの頃の、愛し合っていた頃の二人にただ戻りたかった。
ずっと子育てで我慢してきた『女』としての私を認めて欲しかった。
「……」
太陽が完全に顔を出し、私の頬をつたう雫を照らした。
「……ばか」
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