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値下げの魔王「クミ」②八百屋店主「トシ」
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「値下げの魔王……関係ねぇよ!20度目の対戦……今度こそ俺が勝つ!俺のツンとデレで絶対にKOしてやりますよ!……絶対に負けないんだからね!」
この対決に並々ならぬ覚悟と気合で臨む店主「トシ」!
対するは……
「今日は調理実習があって課題が学園近くの山で取れるものだけで調理って言われたんですけど、面倒だったんでここならいつも安くしてくれるし、店主とも仲が良いから山菜っぽい野菜を買いに来ました」
と、語る私。
果たして!勝負の行方は!
運命の試合が今、始まる!
「おっちゃん!適当に山菜っぽい野菜くれ!」
私はいつものようにおっちゃんに笑いかける。
「ふん!その辺にあるから適当に見ればいいじゃない!」
店主は頭に巻いたタオルを直しつつ、狭い店内の入り口近くにある冷凍魔道具の棚を指差す。
毎回思うけど、なんでこんなにツンツンしてんだ?
疑問に思いながらも
「おっちゃん!ありがとう!」
そっぽを向く店主にお礼を言い、横を通って店内へと入る。
「ふ、ふん!……別にただの独り言よ」
というと、私の元へ来て、
「これがセリ、その隣がふきのとう……なんだからね!」
と丁寧に説明してくれる。
「へー、ねえ?おっちゃんて年齢的に更年期?それでイライラしてんの?」
前から口調がキツくなったり、急に優しくなったり精神的に不安定な店長のことが店に訪れている時だけ気になっていたので聞いてみた。
買い物を済ませた後は忘れちゃってたけど
「……違うわよ。これがこの店の受け継がれてきた接客の仕方……なんだからね!先代にキツく仕込まれたから癖になってる……だけなんだからね!」
店主の周りの空間だけが暗くなっていく。
あー地雷を踏んだっぽいなぁ……私。
「うーん……」
疲れた顔で椅子に腰掛ける店主を見る。
「疲れが原因か?」
そう思った私は店主の頭に手をかざしてヒールをかけてみる。
「……あれ?なんか体が軽い!……んだからね!」
語尾は変わらないがヒールの効果で溜まっていた疲れが取れた様子の店主は、狭い店内を走り回る。
「うっほーい!…んだからね!」
一周して私の元に帰ってくる。
「も、もう!あんたのおかげで恥ずかしい思いしたじゃない!」
私の太ももを思いっきり叩いてくる。
いてぇよ!ジジイ!
イラっとした私は、後ろの店主へと振り返る。
そこには体をもじもじさせて顔を赤らめた店主の姿。
「あ……ありがとう」
意を決したように私にお礼を言ってくる。
「お、おお……とりあえず、その接客やめたほうがもっと客…はいるんじゃない?」
私の一言……
「ぐっ……さすが値下げの魔王だぜ。核心をついてきやがる」
今度は片膝をついて胸を抑える店主。
なんだこいつ……
「それからさぁ……商店街がこんなに赤色だらけでなんか落ち着かないのに、店内まで赤色って……フローリングにするとか、お客が安心する内装にするとか工夫したほうがいいと思う」
店内を見渡して率直に感じたことを伝える。
「た、確かに!…なんだからね!」
驚愕顔の店主……あと語尾!
店主の反応に呆れる私。
「これで100年もやってきたから当たり前だと思ってたんだからね!」
「いや!語尾よ!まずはそれをなんとかしよう……正直、70のじいちゃんがそれをやっても可愛くねぇし、やるんなら女の子だろ」
「た、確かに!……意外性を求めすぎたから…なんだからね?」
店主も自覚があったようで助けてと視線を向けてくる。
正直……めんどくせぇ~後は、自分でなんとかしてほし……
「いや、待てよ……これはチャンスかもしれんぞ」
私の頭に一つのアイディアが空から飛び込んでくる。
ストラーイク!
「ふっふっふっ」
口の端が吊り上がり、黒い笑みを浮かべる。
「……ああ!もしかして!今のままでも逆転できるかもぉ!」
わざとらしく大袈裟に叫ぶ。
「え!何だ!アイデアって!……教えてくれてもいいわよ?」
最後にデレを挟んでくる店主。
「いや!もうジジイのツンデレはお腹いっぱいです!胸焼けしそうなのでやめてください!お願いします!」
丁重に頭を下げてお願いする私。
「好きでやってるんじゃないわよ!幼少期から仕込まれたから癖なのよ!……察しなさいよ。バカ……」
「いや、しらねぇよ!……帰る!」
素晴らしいアイデアを提供してお互いにwin-winな関係になろうっと思ったが、馬鹿馬鹿しくなった私は店内を出る。
「ええ!帰るの!こんな困った私を置いて!本当に帰れるって言うの!」
や、ヤンデレェェェェ!ツンデレがダメなら、ヤンデレで来たよ!…なんてジジイ…
「うぅ……もういいわよ!私に興味なくなったってことでしょ!そうなんでしょ!」
涙を浮かべて床へと崩れ落ち、女座りになる店主「トシ!」(70)
趣味は地下格闘技
「最初から興味ねえよ!」
「うっ……ぐすっ」
「……ああ!もう!わかったよ!泣くなよ!私が悪かったよ!」
涙を流す店主に罪悪感が湧いてきて謝ってしまう私。
なんで、こんなジジイと倦怠期の夫婦みたいなやりとりしなきゃいけねぇんだよぉぉ!
その後、ツンデレ店主とタッグを組み、街一番の八百屋へとなっていくが、それは、また別のお話。
「じゃあ、私のアイデアは伝えたからな!もう泣き崩れるなよ!」
「ありがとう…なんだからね!」
最後まで語尾にツン!が出てしまう店主。
「もういいや……野菜、無料にしてくれてありがとな!ヤンデレジジイ」
「ツンよ!覚えておくといいわ!」
「安心しろ。お前のことは多分、今夜の夢に出てくると思うから……じゃあな!また、くるよ!」
「ご利用ーありがとうございましたぁ!」
最後は普通に喋る店主。
なんだ……あいつ。
店主の相手をするのが疲れた私は無視して、転移で学校へと戻る。
この対決に並々ならぬ覚悟と気合で臨む店主「トシ」!
対するは……
「今日は調理実習があって課題が学園近くの山で取れるものだけで調理って言われたんですけど、面倒だったんでここならいつも安くしてくれるし、店主とも仲が良いから山菜っぽい野菜を買いに来ました」
と、語る私。
果たして!勝負の行方は!
運命の試合が今、始まる!
「おっちゃん!適当に山菜っぽい野菜くれ!」
私はいつものようにおっちゃんに笑いかける。
「ふん!その辺にあるから適当に見ればいいじゃない!」
店主は頭に巻いたタオルを直しつつ、狭い店内の入り口近くにある冷凍魔道具の棚を指差す。
毎回思うけど、なんでこんなにツンツンしてんだ?
疑問に思いながらも
「おっちゃん!ありがとう!」
そっぽを向く店主にお礼を言い、横を通って店内へと入る。
「ふ、ふん!……別にただの独り言よ」
というと、私の元へ来て、
「これがセリ、その隣がふきのとう……なんだからね!」
と丁寧に説明してくれる。
「へー、ねえ?おっちゃんて年齢的に更年期?それでイライラしてんの?」
前から口調がキツくなったり、急に優しくなったり精神的に不安定な店長のことが店に訪れている時だけ気になっていたので聞いてみた。
買い物を済ませた後は忘れちゃってたけど
「……違うわよ。これがこの店の受け継がれてきた接客の仕方……なんだからね!先代にキツく仕込まれたから癖になってる……だけなんだからね!」
店主の周りの空間だけが暗くなっていく。
あー地雷を踏んだっぽいなぁ……私。
「うーん……」
疲れた顔で椅子に腰掛ける店主を見る。
「疲れが原因か?」
そう思った私は店主の頭に手をかざしてヒールをかけてみる。
「……あれ?なんか体が軽い!……んだからね!」
語尾は変わらないがヒールの効果で溜まっていた疲れが取れた様子の店主は、狭い店内を走り回る。
「うっほーい!…んだからね!」
一周して私の元に帰ってくる。
「も、もう!あんたのおかげで恥ずかしい思いしたじゃない!」
私の太ももを思いっきり叩いてくる。
いてぇよ!ジジイ!
イラっとした私は、後ろの店主へと振り返る。
そこには体をもじもじさせて顔を赤らめた店主の姿。
「あ……ありがとう」
意を決したように私にお礼を言ってくる。
「お、おお……とりあえず、その接客やめたほうがもっと客…はいるんじゃない?」
私の一言……
「ぐっ……さすが値下げの魔王だぜ。核心をついてきやがる」
今度は片膝をついて胸を抑える店主。
なんだこいつ……
「それからさぁ……商店街がこんなに赤色だらけでなんか落ち着かないのに、店内まで赤色って……フローリングにするとか、お客が安心する内装にするとか工夫したほうがいいと思う」
店内を見渡して率直に感じたことを伝える。
「た、確かに!…なんだからね!」
驚愕顔の店主……あと語尾!
店主の反応に呆れる私。
「これで100年もやってきたから当たり前だと思ってたんだからね!」
「いや!語尾よ!まずはそれをなんとかしよう……正直、70のじいちゃんがそれをやっても可愛くねぇし、やるんなら女の子だろ」
「た、確かに!……意外性を求めすぎたから…なんだからね?」
店主も自覚があったようで助けてと視線を向けてくる。
正直……めんどくせぇ~後は、自分でなんとかしてほし……
「いや、待てよ……これはチャンスかもしれんぞ」
私の頭に一つのアイディアが空から飛び込んでくる。
ストラーイク!
「ふっふっふっ」
口の端が吊り上がり、黒い笑みを浮かべる。
「……ああ!もしかして!今のままでも逆転できるかもぉ!」
わざとらしく大袈裟に叫ぶ。
「え!何だ!アイデアって!……教えてくれてもいいわよ?」
最後にデレを挟んでくる店主。
「いや!もうジジイのツンデレはお腹いっぱいです!胸焼けしそうなのでやめてください!お願いします!」
丁重に頭を下げてお願いする私。
「好きでやってるんじゃないわよ!幼少期から仕込まれたから癖なのよ!……察しなさいよ。バカ……」
「いや、しらねぇよ!……帰る!」
素晴らしいアイデアを提供してお互いにwin-winな関係になろうっと思ったが、馬鹿馬鹿しくなった私は店内を出る。
「ええ!帰るの!こんな困った私を置いて!本当に帰れるって言うの!」
や、ヤンデレェェェェ!ツンデレがダメなら、ヤンデレで来たよ!…なんてジジイ…
「うぅ……もういいわよ!私に興味なくなったってことでしょ!そうなんでしょ!」
涙を浮かべて床へと崩れ落ち、女座りになる店主「トシ!」(70)
趣味は地下格闘技
「最初から興味ねえよ!」
「うっ……ぐすっ」
「……ああ!もう!わかったよ!泣くなよ!私が悪かったよ!」
涙を流す店主に罪悪感が湧いてきて謝ってしまう私。
なんで、こんなジジイと倦怠期の夫婦みたいなやりとりしなきゃいけねぇんだよぉぉ!
その後、ツンデレ店主とタッグを組み、街一番の八百屋へとなっていくが、それは、また別のお話。
「じゃあ、私のアイデアは伝えたからな!もう泣き崩れるなよ!」
「ありがとう…なんだからね!」
最後まで語尾にツン!が出てしまう店主。
「もういいや……野菜、無料にしてくれてありがとな!ヤンデレジジイ」
「ツンよ!覚えておくといいわ!」
「安心しろ。お前のことは多分、今夜の夢に出てくると思うから……じゃあな!また、くるよ!」
「ご利用ーありがとうございましたぁ!」
最後は普通に喋る店主。
なんだ……あいつ。
店主の相手をするのが疲れた私は無視して、転移で学校へと戻る。
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