私の相棒はモテモテです!

凰雅柚月

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始まり

諦めて

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仕事が終わり渉に連絡するともう少しで終わるからいつものカフェで待っていて欲しいと言われたので会社を出てカフェに向かった。



カフェの扉を開けようとした時に声を掛けられた。

「華村さん!話が有るの」

声をかけて来たのは雛形さんだ。
恐らく私が会社を出て来るのを待っていたのだろう。


「少しだけなら…。どうぞ…」


カフェの扉を開けて入るように促すと雛形さんは無言のまま店の中に入った。
スタッフに案内されて席に着くといつもとは違い直ぐに喰ってかかって来た。


「どう言う事なのよ!斎条さんと別れるって言ったわよね?
なのに…結婚してるって……」

「私は…斎条…渉が貴女を選んだなら潔く身を引くと言いました。
渉は貴女を選ばなかった。
だから…諦めて……?」


「なによ…。バカにしていたの?
私の事…バカにしていたんでしょ!
何故最初に言わなかったのよ!」

「私と渉が結婚している事は渉が専務になるまで伏せるように会長に言われたからです。
その会長の命令を無視する事は出来ません。
その事で雛形さんを傷つけてしまい申し訳ありません」


「なによ…それで勝ったつもり?
アンタが社長の娘じゃ無かったら斎条さんはアンタと結婚何てしなかったわ!
社長の娘だから…結婚して貰えたのよ!」



「それってさぁ、俺が逆玉狙って好きでも無い女と結婚したろくでなしだと言いたいの?」

雛形さんの後ろから渉が冷たく言い放った。


「あっ……、斎条…さん……違っ……あの……これは……」

「あのね、俺と千比絽が知り合ったのはもう10年以上前だし千比絽は後継者でもなかったの。
色々あって結婚する時に婿養子にはなったけど後継者じゃなくても千比絽とは結婚していたよ。
俺の人生に千比絽以外の女は要らない」

渉は喋りながら私の隣に腰を下ろした。

雛形さんは悔しげに顔を歪めて私をじっと睨んだ。

「アンタに…アンタ何かに…負ける…何て…」

雛形さんは水の入ったグラスを持ち上げ私に掛けようとした腕をマスターに捕まれた。

「もう、止めなさい。
君がした事、しようとしてる事は人間として駄目な事なんだよ。
自分の思い通りにならないからと他人を蹴落としたり貶めたりしていたら自分に返って来る。
今なら未だ間に合う。
反省しなさい」


感極まったのか雛形さんはそのままカフェを出ていった。
持ち上げた時に床に零れた水をスタッフがモップで拭いていた。

私達の前にマスターが座るとコーヒーが出された。

「マスター、迷惑掛けてしまってごめんなさい。」

「他にお客さまが居なかったから大丈夫だから気にしないで。
しかし…よっぽど悔しかったのかねぇ。
どんだけ甘やかされてきたんだ?」

「さあね、知りたいと思わない。知りたくもない。
自分の思い通りにならないからと他人を貶めたりする奴の気持ちは解りたくもない。
自分がどれだけ恵まれた環境にいられる事を感謝できない人間はいつか破滅する。
それが奴にとって今だと言う事だ。」

「わっ君、相変わらず厳しいわね~」

「その呼び方は止めてくれ。もう小学生のガキじゃないんだから…。
それにオネエ言葉も……」


「ハッハッハッこれ思いの外ウケるんだぞ。
今度な、常連客とニューハーフの店に行こうと話があるんだ。
チィちゃんも一緒にどうだ?
楽しいらしいぞ」

「行かせない!
千比絽は俺以外の男と出掛けるなんてさせないからな!」

「束縛が酷いとチィちゃんに棄てられるぞ!
うちの常連客でチィちゃん狙ってる奴は結構いるぞ。
チィちゃん、こんな束縛がキツイ奴は棄ててもいいぞ!」

「渉…さんは束縛何てしてないですよ。
家事も手伝ってくれるし……
料理何て私よりも全然上手だし……」


「ハイハイ、御馳走様。」

「じゃあもう行くぞ。今から千比絽とデートなんだ。一ヶ月振り何だから邪魔すんなよ」

渉に手を握られてカフェを出た。
タクシーに乗り予約してあるレストランに連れていかれた。

美味しい料理を頂いた後はホテルのバーに向かう。
そのホテルのバーは夜景をウリにしているだけあり四方をガラス張りにされて宛ら1枚の絵画のように綺麗。

リザーブしてあったのか一番人気があるシートに案内された。

「今日は何だか夢のような 時間ね。」

「久し振りのデートだから張り切ったよ。喜んで貰えて嬉しいよ」


渉はバーボンのロックを私は余り強くないのでアルコールの少ないカクテルを頼んだ。

確かにカフェを出てからは夢のような時間…デートを楽しんでいる。

でも……

雛形さんのような事をされたのは初めてじゃない。
渉と付き合いだしてから何度もあった。

一番最初はいつだっただろうか…?


そう…私が14歳の時だ。

未だ恋に恋をしてる。

そんな夢見る乙女な時代は夢も希望も持てなくなるような事がいっぱいあった。
…。
それでも絶望せずにいられたのは渉が守ってくれたから…。









私は渉と初めて出会った時を思い出していた。
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