いじめの代償

凰雅柚月

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いじめの代償 3

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予め知らされていたのだろう。
いじめグループ達の保護者は誰一人として子供たちに声をかけない。
集められた子供たちは自分の親に視線を向けて声にならない助けを求めている。
それでも助けてくれない親たちに痺れを切らしたリーダーが叫んだ。

『パパ、何とかしてよ!私を助けてよ!』

リーダーの父親がゆっくりと進み出て子供に向かい話しかけた。

『自分のした事がどんなに悪いことか分からないのか?』

『な、何を…』

『分からないのか?お前がした事は犯罪なんだ。警察が介入しなければ話し合いで何とかなったのかも知れないが…
お前は自分の犯した罪の重さを分かってない。』

『何を言ってるの、パパ?叔父様に頼んでよ!叔父様なら助けてくれるでしょ?だって……警視庁の偉い人なんでしょ?』

リーダーは叔父が警視庁のキャリアで階級がかなり上にいるのをいつも自慢していた。
どんな事をしても自分を可愛がってくれる叔父なら助けてくれると…

そんな我が子を見て父親が残念な顔をした。

『いくら警視庁の偉い人でも今回のことは隠せないし助けられない。
それどころかお前がした事で叔父さんは警視庁を辞めなきゃいけないかもしれいんだ。
身内が罪を犯した警察官は辞めなきゃいけないんだ……』

父親の話を聞いたリーダーは力が抜けたようで椅子から滑り落ちた。

他のメンバーもその話を聞いて更に顔色が悪くなった。
そして誰ともなく話始めた。

『バレ無いからって……絶対に…バレたりしない……バレても…おじさんが助けてくれると……』

『そう…だ…よ。警視庁の偉い人…だから……おじさんが助けて……くれる…から……って…』

最後の方は涙声になり聞き取れなかった。
リーダー以外の生徒たちは机に突っ伏して泣き始めた。







落ち着いた頃に話を生徒たちに聞いていった。

今回の事で犯人にすれば皆から責められて嫌われて退学になればいいと思った。

リーダーはもしバレてもおじさんが警視庁の偉い人だから罪にはならないって…

リーダーは彼女が嫌いだった。

どんなに頑張っても勉強も敵わないし先生からの信頼が厚い…

だから…陥れてやりたいと…

彼女の両親が離婚した。

噂で母親が浮気したから出ていったと聞いた…

なのに…彼女は変わらない…

その清ました態度が気に入らなかった……





いじめグループ達の言い分はどれも身勝手なものばかりだ。
保護者たちも一緒に話を聞いた校長や担任教師も警察官も顔を顰めた。


どれも彼女には責任が無いこと…
離婚は彼女のせいではない。
勉強も彼女が頑張って出した結果…
彼女自身が頑張っているのを知ってるからこそ教師も信頼した。



その後…

学校側と保護者で話し合いが持たれた。
勿論、女生徒の保護者も出席した。

警察は学校内で起きた事や未成年が起こした事で捜査を慎重に進めている。



保護者側はどうにか穏便に済ませて欲しいと女生徒の父親に懇願した。

だが…、父親は今回のこと荒立てるつもりは無いが許す事は出来ない。
いじめグループ達を無罪放免にはしない。


話し合いは中々進まなかった。
その間、いじめグループ全員は無期限の停学になっていた。



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