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2話
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齢《よわい》にして十かそこらか。儚げな雰囲気の少女が公園の大木の下に横たわっていた。
無論、幻覚ではない。自分の紙袋から落ちたイラストを生身の少女と思い込んでいるわけでもない。俺は多分まだ正気のはずだ。
正真正銘、それは本物の女の子だった。
しかも、白いブラウスだけを身につけている。肌が透けて見えるほど生地は薄い。
「うぅっ……」
少女は片目を薄く開け、苦しそうに声を漏らした。
俺の手が少女の腹を押していたのだ。慌てて手を離すと、さらに少女は「うっ」と、小さく声を漏らした。
「な、なぁ、大丈夫か?」
わざわざそう訊いたのも、俺の手のせいで少女が苦しんでいるわけではないことに気がついたからだ。
少女ははぁはぁと小刻みに呼吸を繰り返し、うなされるように喘いでいる。
「お、おい。しっかりしろ。何か話せるか?」
肩を揺すってみた。身体はかなり熱を持っている。それに比して顔は夜明けのように青白かった。
これは間違いない。この少女は木陰に寝ていたわけでなく、倒れていたのだ。
ひと目で異常だとわかる。
熱中症だろうか。
「飲みものいるか? い、いるよな。えぇと、飲みもの飲みもの……しまった!」
間の悪いことに、手持ちの水分は電車に乗る前に捨ててしまっていた。
「びょ、病院、行くか? 救急車……」
引きこもりである俺は携帯電話など持たない。公衆電話はないかと、周囲を見渡し。でもそこで躊躇ってしまった。
そもそもなぜこんなところに少女がいるのだろうか。
公園だからというのは良い理由にはなりそうになかった。
この子の着ているものと言えば、白のブラウスのみ。大人ものだろうか、裾の丈は長いし、肩幅とかもぜんぜん身体のサイズにあっていない。
「ごくり……」
俺はブラウスの下から伸びる脚に釘付けになっていた。
黄色人種ばなれした青白さだ。
日本人でない?
毛先だけ少しカールした長い髪も栗毛色をしているし、目鼻立ちもどこか東洋人ぽくない。
細く通った鼻筋。目を閉じていても大きいと分かる目。睫毛は突き刺さりそうほど長い。
毛穴一つ見当たらない肌なんか、見つめていると本当に人間なのかという疑問さえ湧いてくる。
例えるなら人形にそのまま魂を吹き込んだようだ。
はっきり言って、違和感とか、もっといえば恐怖を感じるほどに美しい。完璧な造形。この世のものなのかという疑問が湧いてきて、ぞっと恐ろしくなる。
「大丈夫か? 言葉……通じない?」
「うぅ……」
少女は悶えるように腰をひねり、内股ぎみに重ねていた太ももを上下入れ替えた。
すそがはだけ、太ももの付け根がひときわ露わになる。
息を飲み込んでいた。少女の白い太ももの色が俺の脳を乳白色に染めていく。
まるで操られるように、俺の視線は徐々に低くなっていた。
ブラウスの下へと視線を滑らせたところで、はっとして顔を上げた。
「は、は、は、はいてない……⁉」
脳みそがどろっと耳穴から溶け出る気がした。
「なんてこった……」
俺は舌打ちをして、周囲を見回した。こんなとこもし人に見られたら、どう言い訳すりゃいいんだ。
それに救急車を呼んだところで、この状況をどう説明する?
間違いなく警察は呼ばれるだろう。
事情を聞かれるはめになる。
上手く説明できなけりゃ、濡れ衣を着せられるんじゃないか。
いやいや、と俺はぶんぶん頭を振った。
━━そんなこと心配している場合か⁉
救急車は呼ぶべきだ。
それから自販機でスポーツドリンクを買って水分補給。
「助けるため、助けるためだ……」
そう心に決めて、立ち上がろうとした時だった。
「私のことは心配しなくていい」
かすれるような声だったが、少女は確かにそう言った。俺にもわかる日本語だ。声質は少女のそれだが、口調に違和感がある。
俺は口をぱくぱくしながら、ようやく、
「ど、どうみても大丈夫じゃないだろ」
引きつった声で返す。
少女は立ち上がろうとする俺の腕を掴み、
「君は行け」と小さく顎をしゃくってみせた。「厄介事に巻き込まれる前に……」
「はっ? 厄介事?」
意味深な言葉に思考が一瞬鈍る。
「ほっておけってか? 死んでもいいなら行くぞ」
「あぁ、そうするといい」
少女はどこか老成したような語気で言うと
、力ない手で俺の背中を押した。
するとまた苦痛に顔を歪め、平らな胸を上下させて息を繰り返していた。
どうみても華奢な身体だ。腕は小枝のように細いし、腰なんか手で押したらすぐに折れてしまいそうだ。
無論、幻覚ではない。自分の紙袋から落ちたイラストを生身の少女と思い込んでいるわけでもない。俺は多分まだ正気のはずだ。
正真正銘、それは本物の女の子だった。
しかも、白いブラウスだけを身につけている。肌が透けて見えるほど生地は薄い。
「うぅっ……」
少女は片目を薄く開け、苦しそうに声を漏らした。
俺の手が少女の腹を押していたのだ。慌てて手を離すと、さらに少女は「うっ」と、小さく声を漏らした。
「な、なぁ、大丈夫か?」
わざわざそう訊いたのも、俺の手のせいで少女が苦しんでいるわけではないことに気がついたからだ。
少女ははぁはぁと小刻みに呼吸を繰り返し、うなされるように喘いでいる。
「お、おい。しっかりしろ。何か話せるか?」
肩を揺すってみた。身体はかなり熱を持っている。それに比して顔は夜明けのように青白かった。
これは間違いない。この少女は木陰に寝ていたわけでなく、倒れていたのだ。
ひと目で異常だとわかる。
熱中症だろうか。
「飲みものいるか? い、いるよな。えぇと、飲みもの飲みもの……しまった!」
間の悪いことに、手持ちの水分は電車に乗る前に捨ててしまっていた。
「びょ、病院、行くか? 救急車……」
引きこもりである俺は携帯電話など持たない。公衆電話はないかと、周囲を見渡し。でもそこで躊躇ってしまった。
そもそもなぜこんなところに少女がいるのだろうか。
公園だからというのは良い理由にはなりそうになかった。
この子の着ているものと言えば、白のブラウスのみ。大人ものだろうか、裾の丈は長いし、肩幅とかもぜんぜん身体のサイズにあっていない。
「ごくり……」
俺はブラウスの下から伸びる脚に釘付けになっていた。
黄色人種ばなれした青白さだ。
日本人でない?
毛先だけ少しカールした長い髪も栗毛色をしているし、目鼻立ちもどこか東洋人ぽくない。
細く通った鼻筋。目を閉じていても大きいと分かる目。睫毛は突き刺さりそうほど長い。
毛穴一つ見当たらない肌なんか、見つめていると本当に人間なのかという疑問さえ湧いてくる。
例えるなら人形にそのまま魂を吹き込んだようだ。
はっきり言って、違和感とか、もっといえば恐怖を感じるほどに美しい。完璧な造形。この世のものなのかという疑問が湧いてきて、ぞっと恐ろしくなる。
「大丈夫か? 言葉……通じない?」
「うぅ……」
少女は悶えるように腰をひねり、内股ぎみに重ねていた太ももを上下入れ替えた。
すそがはだけ、太ももの付け根がひときわ露わになる。
息を飲み込んでいた。少女の白い太ももの色が俺の脳を乳白色に染めていく。
まるで操られるように、俺の視線は徐々に低くなっていた。
ブラウスの下へと視線を滑らせたところで、はっとして顔を上げた。
「は、は、は、はいてない……⁉」
脳みそがどろっと耳穴から溶け出る気がした。
「なんてこった……」
俺は舌打ちをして、周囲を見回した。こんなとこもし人に見られたら、どう言い訳すりゃいいんだ。
それに救急車を呼んだところで、この状況をどう説明する?
間違いなく警察は呼ばれるだろう。
事情を聞かれるはめになる。
上手く説明できなけりゃ、濡れ衣を着せられるんじゃないか。
いやいや、と俺はぶんぶん頭を振った。
━━そんなこと心配している場合か⁉
救急車は呼ぶべきだ。
それから自販機でスポーツドリンクを買って水分補給。
「助けるため、助けるためだ……」
そう心に決めて、立ち上がろうとした時だった。
「私のことは心配しなくていい」
かすれるような声だったが、少女は確かにそう言った。俺にもわかる日本語だ。声質は少女のそれだが、口調に違和感がある。
俺は口をぱくぱくしながら、ようやく、
「ど、どうみても大丈夫じゃないだろ」
引きつった声で返す。
少女は立ち上がろうとする俺の腕を掴み、
「君は行け」と小さく顎をしゃくってみせた。「厄介事に巻き込まれる前に……」
「はっ? 厄介事?」
意味深な言葉に思考が一瞬鈍る。
「ほっておけってか? 死んでもいいなら行くぞ」
「あぁ、そうするといい」
少女はどこか老成したような語気で言うと
、力ない手で俺の背中を押した。
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