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10話
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「いやぁ、いい湯じゃったのぉ」
風呂に行ったトリエステだったが、一時間ほどするとバスタオルで頭をごしごしさせながら俺の部屋に戻ってきた。
「長風呂だったな……って、おい! ちゃんと服来てから上がって来いよ!」
目のやり場に困った俺は、さっとパソコンに視線を戻した。
カタカタとキーボードを打ちはするが、トリエステの裸体が横目にちらついて仕方がない。
「主水、風呂は入らないのか?」
「風呂は朝だ。家族の者が出払った後でな。服は着替えたし文句ないだろ」
「文句ならいくらでも」
「どうぞ」
「ほんときったない部屋じゃ」
トリエステは、床に散乱する空のペットボトルや空き缶やゴミの山を片足で蹴散らしながら近づいてきた。しまいには俺の背中にぴったりと身体をくっつけてくる。
「何やっとるんじゃ?」
興味津々という風にトリエステが身を乗り出してきた。
背中に押し付けられる膨らみかけの胸の感触が俺の意識を食い破り、かき乱す。
石鹸の匂い。かすかに湿った肌の質感。
まぎれもなく、これは本物だ。
腹の底から何か熱い質量を持ったものが湧き上がるような気がして、俺は全身を震わした。
「パソコンだよ、見ればわかるだろ」俺は一寸遅れてから、口を尖らして答えた。「友とチャット会議するんだ」
「主水のクズ仲間か」
「あぁ、そうだよ。悪いか?」
「それで会議ってのはなんじゃ?」
「別にいいだろ。ただの反省会だよ」
「これまでの人生を反省するわけじゃな」
「コミケの反省会に決まってるだろ。人生を振り返ったところで手遅れだ」
「さぁ、それはどうじゃろな」
「その後はMMO内で集会もある。とにかく朝まで忙しいんだ。コミケで乱れた生活リズムをまた夜型に戻さなくちゃならんからな」
盛んにキーボードを打つ俺だったが、トリエステの意味ありげな視線をこめかみの辺りにちくちくと感じた。
脅しには屈しない。
「それより服着ろって。わからないのか?」
あえて小馬鹿にしたように訊いてみた。
トリエステは何かを探すように部屋中を見回した。
何か言いたいことがあるらしい。
俺はだぼだぼになった自分の寝間着を摘んで、手前にひっぱった。
「何と言われようが、これは服だ。正確には服として機能していた、今朝まではな」
「私のせいだとでも? おまけに私のせいで死にかけたと?」
「そんなことは言ってないが」俺は口ごもりつつも、「とにかくだ。隠すもんは隠せてるだろ。それで十分だ」
確かに裸一貫で俺ん家に来たトリエステに自前の服を期待する方がおかしいのか。
とはいえ妹の昔の服などとっくに他所の家にあげただろうし。俺の服はサイズオーバーすぎる。俺が今着てるものさえ、誰が見ても寝間着には見えない。
汗で黄ばんだよれよれのタンクトップなど、まるで失敗した湯葉だ。巨大湯葉を身体に巻きつけているのと大差ない。
つまり彼女の言いたい事は、
「しまむらなら来る途中にあったぞ。わし専用の寝間着が欲しいんじゃ」
「行きたいなら一人で行けよ。俺はこの服に不満はない」
「わしの服の心配はせぬのか?」
「トリエステ、お前はバスタオルでも身体に巻いておけ。夏場だしそれで問題ないだろ?」
俺はため息を吐いた。
「やはり引きこもりの俺を外に連れ出そうという魂胆だったんだな。そうはさせないぜ。ここは俺の城だ。そして俺は城の王。助言は聞くが命令は不要だ」
そんな風に俺が意志を固め直し、どしりと椅子に座りなおした時、部屋の外から階段をどしどしと登って来る音が聞こえてきた。
まさか、あり得ない。家族の者が部屋まで上がって来ることなど未だかつてなかったはずだ。
俺は即座に立ち上がり、駆けた。
だが、ドアノブを握ろうとした瞬間、勢いよく開いた扉が俺の鼻頭を激しく打った。
俺は真後ろに弾き飛ばされて、尻もちをついていた。
風呂に行ったトリエステだったが、一時間ほどするとバスタオルで頭をごしごしさせながら俺の部屋に戻ってきた。
「長風呂だったな……って、おい! ちゃんと服来てから上がって来いよ!」
目のやり場に困った俺は、さっとパソコンに視線を戻した。
カタカタとキーボードを打ちはするが、トリエステの裸体が横目にちらついて仕方がない。
「主水、風呂は入らないのか?」
「風呂は朝だ。家族の者が出払った後でな。服は着替えたし文句ないだろ」
「文句ならいくらでも」
「どうぞ」
「ほんときったない部屋じゃ」
トリエステは、床に散乱する空のペットボトルや空き缶やゴミの山を片足で蹴散らしながら近づいてきた。しまいには俺の背中にぴったりと身体をくっつけてくる。
「何やっとるんじゃ?」
興味津々という風にトリエステが身を乗り出してきた。
背中に押し付けられる膨らみかけの胸の感触が俺の意識を食い破り、かき乱す。
石鹸の匂い。かすかに湿った肌の質感。
まぎれもなく、これは本物だ。
腹の底から何か熱い質量を持ったものが湧き上がるような気がして、俺は全身を震わした。
「パソコンだよ、見ればわかるだろ」俺は一寸遅れてから、口を尖らして答えた。「友とチャット会議するんだ」
「主水のクズ仲間か」
「あぁ、そうだよ。悪いか?」
「それで会議ってのはなんじゃ?」
「別にいいだろ。ただの反省会だよ」
「これまでの人生を反省するわけじゃな」
「コミケの反省会に決まってるだろ。人生を振り返ったところで手遅れだ」
「さぁ、それはどうじゃろな」
「その後はMMO内で集会もある。とにかく朝まで忙しいんだ。コミケで乱れた生活リズムをまた夜型に戻さなくちゃならんからな」
盛んにキーボードを打つ俺だったが、トリエステの意味ありげな視線をこめかみの辺りにちくちくと感じた。
脅しには屈しない。
「それより服着ろって。わからないのか?」
あえて小馬鹿にしたように訊いてみた。
トリエステは何かを探すように部屋中を見回した。
何か言いたいことがあるらしい。
俺はだぼだぼになった自分の寝間着を摘んで、手前にひっぱった。
「何と言われようが、これは服だ。正確には服として機能していた、今朝まではな」
「私のせいだとでも? おまけに私のせいで死にかけたと?」
「そんなことは言ってないが」俺は口ごもりつつも、「とにかくだ。隠すもんは隠せてるだろ。それで十分だ」
確かに裸一貫で俺ん家に来たトリエステに自前の服を期待する方がおかしいのか。
とはいえ妹の昔の服などとっくに他所の家にあげただろうし。俺の服はサイズオーバーすぎる。俺が今着てるものさえ、誰が見ても寝間着には見えない。
汗で黄ばんだよれよれのタンクトップなど、まるで失敗した湯葉だ。巨大湯葉を身体に巻きつけているのと大差ない。
つまり彼女の言いたい事は、
「しまむらなら来る途中にあったぞ。わし専用の寝間着が欲しいんじゃ」
「行きたいなら一人で行けよ。俺はこの服に不満はない」
「わしの服の心配はせぬのか?」
「トリエステ、お前はバスタオルでも身体に巻いておけ。夏場だしそれで問題ないだろ?」
俺はため息を吐いた。
「やはり引きこもりの俺を外に連れ出そうという魂胆だったんだな。そうはさせないぜ。ここは俺の城だ。そして俺は城の王。助言は聞くが命令は不要だ」
そんな風に俺が意志を固め直し、どしりと椅子に座りなおした時、部屋の外から階段をどしどしと登って来る音が聞こえてきた。
まさか、あり得ない。家族の者が部屋まで上がって来ることなど未だかつてなかったはずだ。
俺は即座に立ち上がり、駆けた。
だが、ドアノブを握ろうとした瞬間、勢いよく開いた扉が俺の鼻頭を激しく打った。
俺は真後ろに弾き飛ばされて、尻もちをついていた。
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