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34話
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急いで杏の家に戻ると、すうすうと寝息が聞こえていた。
見ると、杏は課題のノートに頬を押し付けて眠っていた。
とりあえず彼女の隣に腰を下ろす。
そのまま五分ほど時間が経った。
一向に杏が目覚める気配はない。
俺は頭を掻き、杏の顔を覗き込んだ。
子どものように邪気のない顔で眠っている。
ほっぺたを指で突くと、ぷにっと弾かれた。
「うぅむ」
俺は腕組みをして、唸った。
もう一度、杏の顔を覗き込む。
我慢できず、今度は桜色の唇を指で触れてしまった。柔らかい。
……あれ? なにやってんだ、俺⁉
「う、うぅん」
杏は寝返りをうつように、顔を反対側に向けた。
俺は息を呑んだ。心臓がばくばくしている。
「こ、これは……」
少し日に焼けたうなじが汗で光っていた。
それにだ。
俺が上に行っている間に彼女は制服のブラウスを脱いでいたのだ。
今は、白いTシャツ一枚にゆったりしたスカート、そして裸足というかなり無防備な姿になっている。
異性に免疫がない者ほど意外とガードの甘い部分があるという話は聞いたことがある。
彼女からしてみれば色気がないから大丈夫と判断して白シャツと裸足になっているのかもしれないが、俺からすれば何よりもぐっとくる。
そんなシャツの首元が扇風機の風にぱたぱたとなびいている。
俺は鼻の下を伸ばして、襟を覗き込んだ。
ちくしょう。見えそうで見えない。だがそれがいい。
……何考えてんだよ、俺⁉
「だめだだめだ」
俺はぶるぶる首を振った。
惑わされるな。
宿題をやりに来ただけなのだ。
やましいことなんてひとつもない。ノートをうつして、静かに帰ろう。
俺はなるべく起こさないようにと慎重になりつつもノートを掴んだ。
くいくいとノートを引っ張る。
「ちょっ……」
予想外のことがおきている。
三センチノートを引くと彼女の身体が三センチ手前に近づいた。
さらに引っ張ると、さらに杏が近づく。
「お、おぉ?」
それにとどまらず、杏が徐々に寄りかかってきて、気づいたら俺の腕を掴んでいた。
ぐっと引き寄せられ、腕に抱きつかれる形になる。寝ぼけて抱きまくらか何かと勘違いしているのだろうか。
杏のほぼ存在しない谷間に挟まれ、身動きできない。直に熱い体温が伝わってくる。
「なるほど。脂肪は冷えるからな。乳がないということはそれだけ体温があるというわけだ」
大袈裟に言ってみるも反応がない。
本当に眠っているようだ。
いや、待てよ。この感触と温度。まさかブラをしていないのか。考えられる可能性は━━
→学校から帰って息苦しいから脱いだ。
→そもそも必要ないから装着していない。
ど、ど、ど、どっちだ。
「って、うわっと。うぇぇ⁉」
余計な事を考えている状況ではなかった。杏の体重がかかってきて押し倒されたのだ。
俺は仰向けになり、その上に杏が乗っかっている。
杏のやわらかい頬がぐにぐにと俺の唇に押し付けられる。
……どうなってんだこれ⁉
まさか起きてるんじやないよな?
俺はゼロ距離から杏を睨みつけた。
━━ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「すぴぃ、すぴぃ……」
しかし、寝息は確実に聞こえている。
俺は一息ついてから腕を伸ばし、杏の指を掴んだ。俺のシャツをぎゅっと握りしめているからだ。
……ほどけない。すごい力だ。
「くっ、この!」
俺が力を加えすぎたからだろうか。杏がむにゃむにゃと言い出した。
いま目覚められたらやばい。
それだけは避けなくては。
しかし、俺の願いもむなしく、杏の瞼が微かに震えだし、それからゆっくりと目が開かれた。
俺は千年に一度だけ開く花と出会った時のように息を止めた。
彼女はふぁとあくびをしながら、「眠っちゃった」と呟いた。
信じられないがまだ俺の存在に気がついてないらしい。寝ぼけるにもほどがある。
「……えっ、どういうこと?」
杏は怪訝な表情を浮かべ、俺の股間を下敷きにしていることも知らずに、身体を起こした。
━━ドッドッドッドッド
神経を疑いたくなる。杏は俺の股間の上で割り座をしていた。いわゆる女の子座りというやつだ。
俺のズボンの中ではとっくに野獣が目覚めだしている。制御しようとしてもできるものではない。
「なんか固いのがある……」
彼女も違和感を感じているのか、俺の上でもぞもぞと腰を動かした。
……まだ気付かないのか⁉
しかし、もう手遅れだ。後はできるだけ彼女を刺激しないようにしなければ、
「杏……? 杏ちゃん? 落ち着け」
「えっ、なに……? 古路里くん……?」
杏は下にいる俺にまだ気づいてない。
はっとして、前後左右をキョロキョロ見回している。
「杏、下だ。俺は君の下にいる」
嫌な予感がするのか杏は顔を曇らせると、スローモーションですすすと視線を落とした。
「杏、いい子だから急に叫ぶなよ。これにはちゃんとした理由があっ━━」
「きゃああああああぁぁぁ」
夜空にまで轟く杏の悲鳴。
間髪入れず、ぱーんと鋭い張り手━━なら可愛げもって良かったのだが。
それは弧拳という。内側に折り曲げた手首の固い部分を打ち付ける空手の技だ。
それが容赦なく俺の鼻っ柱を襲った。
「へぶっ!」
ごっと鈍い音がした。
鼻から血しぶきが舞う。
ただでさえ血が足りないのに、鼻の奥で鉄のようなにおいがぱあっと広がって、急速に俺の意識は遠のいていった。
見ると、杏は課題のノートに頬を押し付けて眠っていた。
とりあえず彼女の隣に腰を下ろす。
そのまま五分ほど時間が経った。
一向に杏が目覚める気配はない。
俺は頭を掻き、杏の顔を覗き込んだ。
子どものように邪気のない顔で眠っている。
ほっぺたを指で突くと、ぷにっと弾かれた。
「うぅむ」
俺は腕組みをして、唸った。
もう一度、杏の顔を覗き込む。
我慢できず、今度は桜色の唇を指で触れてしまった。柔らかい。
……あれ? なにやってんだ、俺⁉
「う、うぅん」
杏は寝返りをうつように、顔を反対側に向けた。
俺は息を呑んだ。心臓がばくばくしている。
「こ、これは……」
少し日に焼けたうなじが汗で光っていた。
それにだ。
俺が上に行っている間に彼女は制服のブラウスを脱いでいたのだ。
今は、白いTシャツ一枚にゆったりしたスカート、そして裸足というかなり無防備な姿になっている。
異性に免疫がない者ほど意外とガードの甘い部分があるという話は聞いたことがある。
彼女からしてみれば色気がないから大丈夫と判断して白シャツと裸足になっているのかもしれないが、俺からすれば何よりもぐっとくる。
そんなシャツの首元が扇風機の風にぱたぱたとなびいている。
俺は鼻の下を伸ばして、襟を覗き込んだ。
ちくしょう。見えそうで見えない。だがそれがいい。
……何考えてんだよ、俺⁉
「だめだだめだ」
俺はぶるぶる首を振った。
惑わされるな。
宿題をやりに来ただけなのだ。
やましいことなんてひとつもない。ノートをうつして、静かに帰ろう。
俺はなるべく起こさないようにと慎重になりつつもノートを掴んだ。
くいくいとノートを引っ張る。
「ちょっ……」
予想外のことがおきている。
三センチノートを引くと彼女の身体が三センチ手前に近づいた。
さらに引っ張ると、さらに杏が近づく。
「お、おぉ?」
それにとどまらず、杏が徐々に寄りかかってきて、気づいたら俺の腕を掴んでいた。
ぐっと引き寄せられ、腕に抱きつかれる形になる。寝ぼけて抱きまくらか何かと勘違いしているのだろうか。
杏のほぼ存在しない谷間に挟まれ、身動きできない。直に熱い体温が伝わってくる。
「なるほど。脂肪は冷えるからな。乳がないということはそれだけ体温があるというわけだ」
大袈裟に言ってみるも反応がない。
本当に眠っているようだ。
いや、待てよ。この感触と温度。まさかブラをしていないのか。考えられる可能性は━━
→学校から帰って息苦しいから脱いだ。
→そもそも必要ないから装着していない。
ど、ど、ど、どっちだ。
「って、うわっと。うぇぇ⁉」
余計な事を考えている状況ではなかった。杏の体重がかかってきて押し倒されたのだ。
俺は仰向けになり、その上に杏が乗っかっている。
杏のやわらかい頬がぐにぐにと俺の唇に押し付けられる。
……どうなってんだこれ⁉
まさか起きてるんじやないよな?
俺はゼロ距離から杏を睨みつけた。
━━ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「すぴぃ、すぴぃ……」
しかし、寝息は確実に聞こえている。
俺は一息ついてから腕を伸ばし、杏の指を掴んだ。俺のシャツをぎゅっと握りしめているからだ。
……ほどけない。すごい力だ。
「くっ、この!」
俺が力を加えすぎたからだろうか。杏がむにゃむにゃと言い出した。
いま目覚められたらやばい。
それだけは避けなくては。
しかし、俺の願いもむなしく、杏の瞼が微かに震えだし、それからゆっくりと目が開かれた。
俺は千年に一度だけ開く花と出会った時のように息を止めた。
彼女はふぁとあくびをしながら、「眠っちゃった」と呟いた。
信じられないがまだ俺の存在に気がついてないらしい。寝ぼけるにもほどがある。
「……えっ、どういうこと?」
杏は怪訝な表情を浮かべ、俺の股間を下敷きにしていることも知らずに、身体を起こした。
━━ドッドッドッドッド
神経を疑いたくなる。杏は俺の股間の上で割り座をしていた。いわゆる女の子座りというやつだ。
俺のズボンの中ではとっくに野獣が目覚めだしている。制御しようとしてもできるものではない。
「なんか固いのがある……」
彼女も違和感を感じているのか、俺の上でもぞもぞと腰を動かした。
……まだ気付かないのか⁉
しかし、もう手遅れだ。後はできるだけ彼女を刺激しないようにしなければ、
「杏……? 杏ちゃん? 落ち着け」
「えっ、なに……? 古路里くん……?」
杏は下にいる俺にまだ気づいてない。
はっとして、前後左右をキョロキョロ見回している。
「杏、下だ。俺は君の下にいる」
嫌な予感がするのか杏は顔を曇らせると、スローモーションですすすと視線を落とした。
「杏、いい子だから急に叫ぶなよ。これにはちゃんとした理由があっ━━」
「きゃああああああぁぁぁ」
夜空にまで轟く杏の悲鳴。
間髪入れず、ぱーんと鋭い張り手━━なら可愛げもって良かったのだが。
それは弧拳という。内側に折り曲げた手首の固い部分を打ち付ける空手の技だ。
それが容赦なく俺の鼻っ柱を襲った。
「へぶっ!」
ごっと鈍い音がした。
鼻から血しぶきが舞う。
ただでさえ血が足りないのに、鼻の奥で鉄のようなにおいがぱあっと広がって、急速に俺の意識は遠のいていった。
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