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第二章
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「当然じゃ。商人はどんな時でも損得勘定を忘れてはいかんのよ」
俺は肩をすくめた。
「さて、手間を取らせたな。それじゃあ改めてアルフレッドを探すとしよう」
「そうじゃな。この扉の向こうにいてくれるといいのじゃが」
バーン翁はすぐちかくの扉に近づくと、すかさずドアノブを掴んで回し開けた。
部屋の中を覗き込んだバーン翁は、少しだけがっかりした表情を見せた。
「おらんの」
「だがまた奥に扉がある。行ってみよう」
俺たちは部屋の中に入り、さらに奥にある扉の前まで早足でいった。
そしてその扉の前に立つと、バーン翁はドアノブを回した。
ガチャリという金属音が鳴り、次いでギイーという木製のきしむ音が聞こえた。
その扉の向こうには、まだ数か月しか経っていないにもかかわらず、もうすでに懐かしさを感じる顔があった。
「アルフレッド!」
俺より先に、バーン翁が叫ぶように言った。
アルフレッドは信じられないようなものを見たような顔を浮かべた。
「じいちゃん!」
「おお、アルフレッド、無事か!?」
アルフレッドは金属製の格子の向こうで、後ろ手に縛られた状態ながらも元気そうにうなずいた。
「ああ、問題ないよ。大して怪我もしていないしな」
バーン翁は安心した表情を浮かべながら、鉄格子を握りしめた。
「よし。ならば……」
バーン翁は両手に力を込め、握りしめた鉄格子をぐにゃりと曲げた。
「相変わらず凄い怪力だな。俺には到底真似できない」
アルフレッドが呆れたように笑いながら言う。
バーン翁は呵々と笑った。
「いずれ出来るようになるかもしれん。それより、早いところそこから出ろ」
「わかった」
アルフレッドは短く答えると、膝を立てて立ち上がった。
その際、怪我の影響か、少しだけ唸り声を上げるも、なんとか立ち上がって牢屋を出た。
「ほれ、後を向くがよい」
アルフレッドは素直に後ろを向いた。
バーン翁は、アルフレッドの自由を奪っている手錠に手をかけた。
そして先ほど同様に力を込めた。
だが結果は先程とは違っていた。
「むう、手錠に魔法で封印が施されているわい」
バーン翁が腹立たしげに言った。
「それも、かなり高度なものじゃ。こいつは手ごわいぞ」
バーン翁が言うくらいだ、相当なものなのだろう。
するとそこで、アルフレッドが初めて俺の顔を見て、怪訝な表情を見せた。
「じいちゃん、一緒にいるのは誰だ?見たことないけど、商会の者か?」
俺は思わず苦笑を漏らし、バーン翁は肩をすくめた。
「ま、そうなるわな。この者は商会の者ではないぞ。それどころか、お前もよく知る人物じゃ」
俺は肩をすくめた。
「さて、手間を取らせたな。それじゃあ改めてアルフレッドを探すとしよう」
「そうじゃな。この扉の向こうにいてくれるといいのじゃが」
バーン翁はすぐちかくの扉に近づくと、すかさずドアノブを掴んで回し開けた。
部屋の中を覗き込んだバーン翁は、少しだけがっかりした表情を見せた。
「おらんの」
「だがまた奥に扉がある。行ってみよう」
俺たちは部屋の中に入り、さらに奥にある扉の前まで早足でいった。
そしてその扉の前に立つと、バーン翁はドアノブを回した。
ガチャリという金属音が鳴り、次いでギイーという木製のきしむ音が聞こえた。
その扉の向こうには、まだ数か月しか経っていないにもかかわらず、もうすでに懐かしさを感じる顔があった。
「アルフレッド!」
俺より先に、バーン翁が叫ぶように言った。
アルフレッドは信じられないようなものを見たような顔を浮かべた。
「じいちゃん!」
「おお、アルフレッド、無事か!?」
アルフレッドは金属製の格子の向こうで、後ろ手に縛られた状態ながらも元気そうにうなずいた。
「ああ、問題ないよ。大して怪我もしていないしな」
バーン翁は安心した表情を浮かべながら、鉄格子を握りしめた。
「よし。ならば……」
バーン翁は両手に力を込め、握りしめた鉄格子をぐにゃりと曲げた。
「相変わらず凄い怪力だな。俺には到底真似できない」
アルフレッドが呆れたように笑いながら言う。
バーン翁は呵々と笑った。
「いずれ出来るようになるかもしれん。それより、早いところそこから出ろ」
「わかった」
アルフレッドは短く答えると、膝を立てて立ち上がった。
その際、怪我の影響か、少しだけ唸り声を上げるも、なんとか立ち上がって牢屋を出た。
「ほれ、後を向くがよい」
アルフレッドは素直に後ろを向いた。
バーン翁は、アルフレッドの自由を奪っている手錠に手をかけた。
そして先ほど同様に力を込めた。
だが結果は先程とは違っていた。
「むう、手錠に魔法で封印が施されているわい」
バーン翁が腹立たしげに言った。
「それも、かなり高度なものじゃ。こいつは手ごわいぞ」
バーン翁が言うくらいだ、相当なものなのだろう。
するとそこで、アルフレッドが初めて俺の顔を見て、怪訝な表情を見せた。
「じいちゃん、一緒にいるのは誰だ?見たことないけど、商会の者か?」
俺は思わず苦笑を漏らし、バーン翁は肩をすくめた。
「ま、そうなるわな。この者は商会の者ではないぞ。それどころか、お前もよく知る人物じゃ」
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