【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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56 信用

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「もちろんだ。協力させてもらおう」

 ジトー侯爵はそう言ってゆっくりと腰を下ろした。
 
 だがその表情はいまだ憤怒の色が濃かった。

 俺はその様子を見て、ジトー侯爵を信用した。

「ありがたい。貴方の協力があれば、色々と動けそうだ」

 ジトー侯爵は口をきつく結んでうなずくと、厳しい表情で俺に問い質した。

「未遂ということは、リリーサは無事なのだな?」

「ああ。かすり傷一つないよ」

 ジトー侯爵はそれを聞くと、ホッと一息漏らした。

「そうか。君がリリーサを護ってくれたのか?」

「俺だけじゃないけどね」

「それはそうだろう。警護の者もいることだしな。だが護ってくれたのだな。ありがとう」

「いや、そんな大袈裟なものじゃないし。どうってことないよ」

 俺はそう言いつつ、ちょっと照れた。

 ジトー侯爵は俺のそんな様子を見て微笑を浮かべていた。

 だがすぐに厳しい表情に戻すと、問い掛けてきた。

「それで、何故わたしが怪しいと思ったのかね?」

 俺は一応情報源を秘匿することにした。

 もう俺の中ではジトー侯爵の容疑は完全に晴れていたが、念のためネルヴァからの情報だとは言わなかった。

「そういう情報があったものでね」

「心外だな。確かにわたしは放蕩者だが、犯罪的なことは何一つしていない。よって疑われる要素などないはずだぞ」

「確かに。人物的には評判良いしね」

 ジトー侯爵の評判は、俺が聞き込みをした限り、かなり良かった。

 それを言うと、ジトー侯爵が少しだけ得意げにあごをクイッと上げた。

「当然だ」

 俺は少しだけ苦笑した。

 ジトー侯爵にもこういうところがあるんだな。

 ちょっとリリーサと似ているかも。

「本当のところ、貴方の場合、そもそも嫌疑は薄いんだ」

「だが嫌疑は掛かっているのだろう?」

「まあね」

「それが納得いかない。何処だ?わたしの何処を見て、怪しいと思ったのだ?」

 ジトー侯爵はどうやらかなり心外だったらしい。

 少しだけだが怒り口調で俺に言った。

 なのでここは正直に言った。

「借金だよ。結構な額の借金があるって話じゃない?だからさ」

 するとジトー侯爵が眉根を寄せた。

「ちょっと待て。確かにわたしは借金をしてはいるが、大した額ではない。わたしの持つ莫大な資産からしたら微々たるものにすぎん」

「いや、そっちこそちょっと待ってよ。莫大な資産があるんだったら、なんで借金なんてする必要があるのさ?そんなのおかしいじゃないか」

 だがジトー侯爵はゆっくりと首を横に振った。

「おかしくはない。わたしが借金をしているのは、別段金に困っているからではないぞ」

「金に困ってないだって?そんなことあるわけないじゃないか。困ってもいないのに、どうして借金をする必要があるって言うのさ?」

 するとジトー侯爵が軽くため息を吐いた。

 そして俺の顔を下から舐めるように見ると、ゆっくりと口を開いたのだった。

「情報収集のためさ。金貸しというのは、かなり良い情報網を持っている。無論それは彼らが食いっぱぐれないためなのだがね。だからわたしは、そんな彼らに多少の金子を借りることによって繋がりを持っているんだよ。彼らの情報網を利用するためにね」

 俺はにわかには信じられなかった。

「ホントに~?ホントにそんな理由で借りているの?だって金を借りたからって、金貸しの情報網なんてどうやって利用出来るって言うのさ?」

「完全に情報網を使えるわけではない。だが、ちょこちょこと金を借りて仲良くなっていれば、それなりに情報を取れたりするのさ。金貸しといえども所詮は人間だからな」

「ちょこちょこなの?大金じゃないの?」

「大金を借りたことはない。いつもギャンブルで金が尽きたときに、ちょこっと当座の金を借りるだけだ」

「ホントに~?ホントにホント~?」

「ずいぶんと疑うのだな。いいだろう。それならばわたしの家の財務状況を余すところなく見せてやろう。徹底的に調べるといいぞ」

 財務状況を調べろって言われてもねえ。

 俺にそんな知識はないし。

 ネルヴァなら、出来そうだな。

「俺以外の人間が調べてもいい?」

 するとジトー侯爵が少しだけ、考え込んだ。

「その人間は、信用出来る者なのか?」

 俺は大きく自信たっぷりにうなずいた。

「間違いなく信用出来るよ」

 するとジトー侯爵が大きくうなずいた。

「それならばいいだろう。好きにするといい」

 あっさりと承諾か。

 俺は少々いぶかしんだ。

 いくらなんでも、知らない人間に財務状況を調べさせるかな?

「ホントにいいの?何か急に俺のこと深く信用してない?」

 するとジトー侯爵が、苦笑を漏らしながら言ったのだった。

「お前の目には偽りがない。わたしは王の最終護衛者という仕事柄、色んな人間を見てきた。だから自信がある。お前は言っていないことはあっても、嘘はついていない。そうだろう?」
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