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81 拷問
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しばらくしてメイデン王子が目を覚ました。
「……ぐ……うぅ……」
だがメイデンはまだ痛みがあるのか、しばらくの間うめき声を上げ続けた。
俺はそんなメイデンの様子をソファーに座って見下ろし、哀れむように見ていた。
するとメイデンが俺の視線に気付いた。
「……貴様、何者だ。俺の部下を幾人も……子どものくせに、なんなんだあの強力な魔法は……」
メイデンが苦しそうに股間をもだえながら問い掛けてきた。
俺は、そのあまりにも可哀想な状況に、素直に答えてやろうと思った。
「一応魔導師。リリーサの護衛みたいなものかな」
「護衛だと?くそっ!」
「ところでさ、今のうちに黒幕の名前言っちゃった方がいいよ?でないと、またリリーサの拷問が始まると思うし」
俺は声を潜めて、親切心から言った。
決して駆け引きをしたつもりはない。
だってあんなの見ちゃったらさ、そうなるよ。
するとメイデンが震え上がった。
顔が青ざめ、額から汗が噴き出した。
「黒幕だと?何のことだ」
メイデンが吐き捨てるように言った。
俺は肩をすぼめた。
「いるでしょ?あんたにリリーサ暗殺を吹き込んだ奴がさ」
「知らんな」
メイデンはにべもなかった。
だが額の汗は噴き出し続けている。
どうやら恐怖と戦っているらしい。
リリーサという名の恐怖と。
俺は、出来れば先程の光景をもう見たくはないため、メイデンの説得に力を注いだ。
「言いたくないのはわかるけどさ。たぶんリリーサってドSだよ?黒幕の正体吐くまでやり続けると思うよ?だって見た?あの時の表情」
「あの時の表情だと?」
メイデンが眉根を寄せて言った。
「ああ、そうか。白目剥いていたもんね。見てないよね。いや、二度目に股間を蹴った時なんだけどね、もの凄い表情していたんだよ。もうなんていうかさ、愉悦というか恍惚の表情をさ。あれは完全に楽しんでるよ」
俺は脅しをかけているわけじゃない。
ただ本心から言っている。
それくらい、あの時のリリーサの顔はおっかなかった。
すると、その俺の真摯な気持がメイデンに通じた。
「あ、あいつは、子どもの時からそうだった。あいつは、俺を……」
子どもの時ね。なるほど。
今に始まったことじゃないのね。了解。
で、俺をどうしたって?
するとメイデンが大きくごくりと生唾を飲み込み、さらに言葉を紡いだ。
「俺を、階段から突き落としたことがある」
…………。
物騒な話だ。
普通階段から突き落としたりしない。
何があった?
「ねえ、何をやらかしたのさ?リリーサに」
するとメイデンが俺を睨み付けながら言った。
「ちょっとしたイタズラだ。俺はただ、あいつのおもちゃの剣を隠しただけだ。それなのにあいつは激怒して、俺を階段から突き落としたんだ」
なるほど。それはひどい。
それにしても、おもちゃの剣か。
リリーサは、子どもの時からそんなもので遊んでいたのか。
そりゃ、ああなるよな。
「なるほどね。リリーサならやりかねないな」
「何をのんきに言っていやがる。いいか?俺は七カ所も骨折したんだぞ?死にかけたんだぞ?」
「え?マジで?階段から落ちただけでそんなになる?」
「場所が王城の大階段だったんだ。大階段は大理石で出来ている。そんなところを何十段も転げ落ちれば、骨の七本くらい簡単に折れる!」
ひどい話だ。大理石で出来た階段で突き落とすとは。
想像するだけで痛い。
なんて恐ろしいんだリリーサは。
あらためて俺は、恐怖に身が縮んだ。
「ならさ、なおさら吐いちゃいなよ。でないと今度は骨折じゃ済まないと思うよ?そもそも、ここからあんたに逆転の目はない。あんたの部下はさっきの連中で全部だろう?だったらさ、無駄に拷問を受ける必要ないよ。そうだろう?」
するとメイデンが無言となった。
ああ、そうだ。考えてくれ。
俺だって、あんな光景はもう見たくないんだ。
あんたが黒幕の正体さえ吐いてくれれば、見ずに済む。
さあ、観念してくれ。
するとメイデンが、ゆっくりとその重い口を開いたのだった。
「メラルダだ。あの女が、俺に吹き込んだんだ」
俺は慌てて身体を起こし、前のめりとなって言った。
「メラルダって、キーファー侯爵の夫人の?」
メイデンはもはや観念したように言った。
「そうだ。あの女狐が、俺にリリーサ暗殺を吹き込んだ張本人だ」
俺はメイデンの目をじっくりと見た。
その目の奥に何かが隠されていないか、慎重に観察した。
だがその目の奥には何もなかった。
これは真実だ。
少なくともメイデン自身にとっては、紛れもない真実だ。
俺は大きくうなずくと、言ったのだった。
「わかった。悪いようにはしないよ」
「……ぐ……うぅ……」
だがメイデンはまだ痛みがあるのか、しばらくの間うめき声を上げ続けた。
俺はそんなメイデンの様子をソファーに座って見下ろし、哀れむように見ていた。
するとメイデンが俺の視線に気付いた。
「……貴様、何者だ。俺の部下を幾人も……子どものくせに、なんなんだあの強力な魔法は……」
メイデンが苦しそうに股間をもだえながら問い掛けてきた。
俺は、そのあまりにも可哀想な状況に、素直に答えてやろうと思った。
「一応魔導師。リリーサの護衛みたいなものかな」
「護衛だと?くそっ!」
「ところでさ、今のうちに黒幕の名前言っちゃった方がいいよ?でないと、またリリーサの拷問が始まると思うし」
俺は声を潜めて、親切心から言った。
決して駆け引きをしたつもりはない。
だってあんなの見ちゃったらさ、そうなるよ。
するとメイデンが震え上がった。
顔が青ざめ、額から汗が噴き出した。
「黒幕だと?何のことだ」
メイデンが吐き捨てるように言った。
俺は肩をすぼめた。
「いるでしょ?あんたにリリーサ暗殺を吹き込んだ奴がさ」
「知らんな」
メイデンはにべもなかった。
だが額の汗は噴き出し続けている。
どうやら恐怖と戦っているらしい。
リリーサという名の恐怖と。
俺は、出来れば先程の光景をもう見たくはないため、メイデンの説得に力を注いだ。
「言いたくないのはわかるけどさ。たぶんリリーサってドSだよ?黒幕の正体吐くまでやり続けると思うよ?だって見た?あの時の表情」
「あの時の表情だと?」
メイデンが眉根を寄せて言った。
「ああ、そうか。白目剥いていたもんね。見てないよね。いや、二度目に股間を蹴った時なんだけどね、もの凄い表情していたんだよ。もうなんていうかさ、愉悦というか恍惚の表情をさ。あれは完全に楽しんでるよ」
俺は脅しをかけているわけじゃない。
ただ本心から言っている。
それくらい、あの時のリリーサの顔はおっかなかった。
すると、その俺の真摯な気持がメイデンに通じた。
「あ、あいつは、子どもの時からそうだった。あいつは、俺を……」
子どもの時ね。なるほど。
今に始まったことじゃないのね。了解。
で、俺をどうしたって?
するとメイデンが大きくごくりと生唾を飲み込み、さらに言葉を紡いだ。
「俺を、階段から突き落としたことがある」
…………。
物騒な話だ。
普通階段から突き落としたりしない。
何があった?
「ねえ、何をやらかしたのさ?リリーサに」
するとメイデンが俺を睨み付けながら言った。
「ちょっとしたイタズラだ。俺はただ、あいつのおもちゃの剣を隠しただけだ。それなのにあいつは激怒して、俺を階段から突き落としたんだ」
なるほど。それはひどい。
それにしても、おもちゃの剣か。
リリーサは、子どもの時からそんなもので遊んでいたのか。
そりゃ、ああなるよな。
「なるほどね。リリーサならやりかねないな」
「何をのんきに言っていやがる。いいか?俺は七カ所も骨折したんだぞ?死にかけたんだぞ?」
「え?マジで?階段から落ちただけでそんなになる?」
「場所が王城の大階段だったんだ。大階段は大理石で出来ている。そんなところを何十段も転げ落ちれば、骨の七本くらい簡単に折れる!」
ひどい話だ。大理石で出来た階段で突き落とすとは。
想像するだけで痛い。
なんて恐ろしいんだリリーサは。
あらためて俺は、恐怖に身が縮んだ。
「ならさ、なおさら吐いちゃいなよ。でないと今度は骨折じゃ済まないと思うよ?そもそも、ここからあんたに逆転の目はない。あんたの部下はさっきの連中で全部だろう?だったらさ、無駄に拷問を受ける必要ないよ。そうだろう?」
するとメイデンが無言となった。
ああ、そうだ。考えてくれ。
俺だって、あんな光景はもう見たくないんだ。
あんたが黒幕の正体さえ吐いてくれれば、見ずに済む。
さあ、観念してくれ。
するとメイデンが、ゆっくりとその重い口を開いたのだった。
「メラルダだ。あの女が、俺に吹き込んだんだ」
俺は慌てて身体を起こし、前のめりとなって言った。
「メラルダって、キーファー侯爵の夫人の?」
メイデンはもはや観念したように言った。
「そうだ。あの女狐が、俺にリリーサ暗殺を吹き込んだ張本人だ」
俺はメイデンの目をじっくりと見た。
その目の奥に何かが隠されていないか、慎重に観察した。
だがその目の奥には何もなかった。
これは真実だ。
少なくともメイデン自身にとっては、紛れもない真実だ。
俺は大きくうなずくと、言ったのだった。
「わかった。悪いようにはしないよ」
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