【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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80 愉悦か、恍惚か

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「どうやら目を覚ましたようね?」


 リリーサが、床の上に簀巻きにされているメイデンを、ソファーに座りながら傲然とあごを上げて見下ろしながら言った。


「ぐ……き、貴様……」


 メイデンは後ろ手に縄で縛られた上、身体を何重にもぐるぐる巻きにされているため、ほとんど身動き取れない中で、首を巡らして声の主を睨みつけた。


「誰が貴様よ。お前にそんな風に呼ばれる筋合いはないわよ」


 兄妹だと思うんだけどなあ。


 王家の人たちってあんまりそういうの関係ないのかなあ。


 でもリリーサも、マールやファルカンとは仲が良いよな。


 ジトー侯爵とも良い関係性みたいだし。


 何でこの二人は見るからに仲が悪いんだろう。


 大体メイデンは、リリーサ暗殺を企てたくらいだし。


 俺がそんなこんなを思っていると、リリーサがスッと立ち上がった。


 そして、二歩三歩と前に歩み出でて、その足でメイデンの顔を踏みつけた。


「ぐっ!」


 うわ~、これは嫌だ。


 そっちの趣味でもない限り、これほど屈辱的なことはない。


 まあ自業自得ではあるけれど。


「ほうら、ほうら、言ってごらんなさい。あんたの後ろに控えている黒幕の名前を!」


 これじゃあ王女様っていうより、女王様だな。


 いや、なんのと問われると困るのだけれど。


「き、貴様~!お、覚えておけよ!俺はこの仕打ちを生涯忘れぬぞ!」


 メイデンが身体をワナワナと震わせながら言った。


 だがリリーサには何処吹く風であった。


「あんたが忘れようと忘れまいとどうでもいいわ。わたしが聞きたいのは、あんたの後ろに潜んでいる奴の名前よ。さあ、さっさと吐き出しちゃいなさいよ!そうすれば楽になるわよ!」


 リリーサは先程よりも力を込めて、メイデンの顔をぐりぐりしている。


 ああ、哀れだ。


 敵とはいえ、これは哀れを誘う光景だ。


 俺は、リリーサだけは今後敵にはすまいと心に誓った。


「ほうら、さっさと言わないと、いつまでも続くわよ~?」


 ぐりぐりが続く。


 果てしなく続いている。


 だがメイデンは屈辱に耐え、口を割ろうとはしなかった。


 そのため、リリーサがついに足をメイデンの顔からどけた。


 俺はなんだかホッとした気分となった。


 だが次の瞬間、俺のそんな気分は無残にも吹き飛んだのだった。


「ぐはっ!!!」


 メイデンが肺腑の中の空気を、一瞬で全て吐き出した。


 そして苦悶の表情を浮かべ、額には玉のような汗が噴き出している。


 俺は、恐る恐る視線をメイデンの下腹部へと移動させた。


 すると、案の定というか予想通りというか、リリーサの足の先がメイデンの股間に強烈にめり込んでいたのだった。


 俺は思わず顔を背けた。


 そして俺まで苦悶の表情を浮かべてしまったのであった。


「くっ!……ぐっ……くぅ……」


 メイデンが声にならない叫び声を上げる。


 判る。


 判るよ。


 つらいよな?


 息が出来ないよな?


 だが、地獄は続く。


 俺の視界に、再び足を思いっきり振り上げるリリーサの姿が。


 俺は思わず目を瞑って、身体をよじった。


 すると次の瞬間、ドスッという鈍い音が、俺の閉じられていない耳に飛び込んできた。


 俺はその瞬間、息を呑み、生唾を飲み込んだ。


 そして恐る恐る目を開け、メイデンの大事な部分をチラ見した。


 すると、やはりというか当然というべきか。


 リリーサの右脚のつま先部分が消えるほどに、メイデンの股間にめり込んでいたのだった。


「…………」


 だがメイデンからはうめき声が聞こえなかった。


 俺はゆっくりと視界を上へと上げていった。


 下腹部から胸に、そして顔へ。


 見ると、メイデンは完全に白目を剥いていた。


 ついでに言うと、口からは泡を吹いている。


 恐ろしい。


 なんて恐ろしい光景だ。


 俺はもう一度ごくりと生唾を飲み込むと、ゆっくりリリーサの顔をのぞき見た。


 すると、リリーサの顔が何やら不思議な表情となっていた。


 傲然とあごを上げてメイデンを見下ろし、目の端をつり上げながら、口の端もつり上げた表情。


 それは何と表現したら良いのだろうか。


 愉悦に浸っているというべきか、それとも恍惚の表情とでもいうべきか。


 するとその悪魔的に歪められた口から、女王様のお言葉が発せられたのだった。


「ふん、気絶したようね。仕方がないわ。また後にしましょう。また後で、たっぷりと楽しませてもらおうじゃない。ねえ、アリオン?」


 リリーサは、そう言って俺を見た。


 俺は一瞬で震え上がり、思わず何度もうんうんと大きくうなずいた。


 するとリリーサは満足げに微笑み、ゆっくりと歩いて移動し、部屋を出ていった。


 残された俺は、恐ろしげな表情で気を失っているメイデンを見下ろし、ただただ震え上がるのであった。
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