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第四十八話 ダロスの現状
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1
「ふん!ちっとはましな面構えになったじゃないか!」
「まあそりゃ、あれだけしごかれたら、少しは精悍な良い男の顔つきにもなるってもんですよ」
「あたしゃそこまでいってないよ!なに自分で良いように言い換えてるんだい!」
「大して違いはありませんよ」
「ふん!口の減らない小僧だね!まあいいさ。どうやら、ようやくアッバスに到着したようだしね」
ガイウス一行が遠くエルムールを旅立ってから、すでに二ヶ月もの月日が流れていた。
この間、ガイウスはカルラによるとてつもなく強烈な魔法訓練と、それに較べればだいぶ優しめなロデムルによる剣術指南を受け、ずいぶんとたくましく成長していた。
そして今、まさに彼らの眼下には、待ち望んでいたアッバスの街並みがはるか遠くまで広がっていた。
そんなアッバスの港町特有の匂いが漂う中、彼らが二ヶ月もの間身を任せていた巨大な商船が、ついに岸壁に接岸した。
ガイウスは居ても立ってもいられず先陣を切って飛び出し、大地をしっかと踏みしめた。
「ひゃあ~、久しぶりの陸地だ~」
ガイウスはそう言って両腕を高く上げると、気持ち良さそうに大きく伸びをした。
彼の後ろから悠然と桟橋を下りたカルラは、いつもの不機嫌そうな顔つきで言う。
「なに言ってんだい!一週間前にも、どこぞの町に寄港したばっかりだったじゃないか!」
「一週間も前ですよ!一週間も!大体僕は訳もわからずあなたに連れてこられて、二ヶ月間も船に揺られ続けたんですよ!熟練の船乗りならともかく、僕はいたいけな六歳児なんですからね!」
「ずいぶんと生意気な口を利くようになったじゃないか!いいかい、よく聞きな!ヴァレンティンの男たちはね、皆若い頃から波に揺られて生きると相場が決まっているんだよ!それを情けないったらありゃしない!恥ずかしいとは思わないのかい!」
「若すぎるにも程があるでしょう!何度も言いますが、僕は六歳児なんです!」
ガイウスはこの二ヶ月あまりの間に、だいぶカルラに対しても物が言えるようになっていた。
(負けてられるか!せめて口では勝たないと、今後何をやらされるかわかったもんじゃない!)
ガイウスは心の中で、そう固く誓いを立てていた。
2
「みんな、あまり顔は明るくないけど、忙しそうに働いているね」
ガイウスはアッバスの街並みと、忙しく立ち働く人々を交互にきょろきょろと眺めながら言った。
ロデムルはそんなガイウスの背後から、低く落ち着いた声音で答えた。
「いくらダロスが古い停滞した国だと申しましても、庶民は皆忙しく立ち働かなければ生活できませんので」
「まあ、そうだよね。ところでダロスの経済力ってどうなの?」
「あまり思わしくありません。なにせ様々な仕組みや、制度がどれも古いままでございます。色々と規制が厳しいようでして、なかなか活発な商取引とは参らぬようです。また貿易に関しましても、様々な障壁を抱えて、四苦八苦しているようでございます」
「それじゃあ、いくら庶民がこうやって一所懸命に働いても、得られる賃金は他国よりも少ないってこと?」
「はい、おっしゃる通りです。経済が活発な国であれば同じように働くことで、多くの賃金を得られますが、ダロスのように停滞した国では少ない賃金しか得られません」
「ダロスは大国のはずなのに。領土がいくら広くても、経済が停滞していたら国民は貧しい思いをするってことか」
「経済力だけではありません。政治力も、そして軍事力もまた同じでございます」
そこでガイウスは突然はたと立ち止まり、眉根を寄せた驚きの顔つきとなって叫んだ。
「もしかして!ダロスって、もはや大国じゃない!?」
ロデムルは、恭しく首を垂れた。
「ご明察にございます」
ガイウスは、思いもかけないダロスの凋落を目の当たりにして、愕然とした表情で立ちすくんだ。
「ふん!ちっとはましな面構えになったじゃないか!」
「まあそりゃ、あれだけしごかれたら、少しは精悍な良い男の顔つきにもなるってもんですよ」
「あたしゃそこまでいってないよ!なに自分で良いように言い換えてるんだい!」
「大して違いはありませんよ」
「ふん!口の減らない小僧だね!まあいいさ。どうやら、ようやくアッバスに到着したようだしね」
ガイウス一行が遠くエルムールを旅立ってから、すでに二ヶ月もの月日が流れていた。
この間、ガイウスはカルラによるとてつもなく強烈な魔法訓練と、それに較べればだいぶ優しめなロデムルによる剣術指南を受け、ずいぶんとたくましく成長していた。
そして今、まさに彼らの眼下には、待ち望んでいたアッバスの街並みがはるか遠くまで広がっていた。
そんなアッバスの港町特有の匂いが漂う中、彼らが二ヶ月もの間身を任せていた巨大な商船が、ついに岸壁に接岸した。
ガイウスは居ても立ってもいられず先陣を切って飛び出し、大地をしっかと踏みしめた。
「ひゃあ~、久しぶりの陸地だ~」
ガイウスはそう言って両腕を高く上げると、気持ち良さそうに大きく伸びをした。
彼の後ろから悠然と桟橋を下りたカルラは、いつもの不機嫌そうな顔つきで言う。
「なに言ってんだい!一週間前にも、どこぞの町に寄港したばっかりだったじゃないか!」
「一週間も前ですよ!一週間も!大体僕は訳もわからずあなたに連れてこられて、二ヶ月間も船に揺られ続けたんですよ!熟練の船乗りならともかく、僕はいたいけな六歳児なんですからね!」
「ずいぶんと生意気な口を利くようになったじゃないか!いいかい、よく聞きな!ヴァレンティンの男たちはね、皆若い頃から波に揺られて生きると相場が決まっているんだよ!それを情けないったらありゃしない!恥ずかしいとは思わないのかい!」
「若すぎるにも程があるでしょう!何度も言いますが、僕は六歳児なんです!」
ガイウスはこの二ヶ月あまりの間に、だいぶカルラに対しても物が言えるようになっていた。
(負けてられるか!せめて口では勝たないと、今後何をやらされるかわかったもんじゃない!)
ガイウスは心の中で、そう固く誓いを立てていた。
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「みんな、あまり顔は明るくないけど、忙しそうに働いているね」
ガイウスはアッバスの街並みと、忙しく立ち働く人々を交互にきょろきょろと眺めながら言った。
ロデムルはそんなガイウスの背後から、低く落ち着いた声音で答えた。
「いくらダロスが古い停滞した国だと申しましても、庶民は皆忙しく立ち働かなければ生活できませんので」
「まあ、そうだよね。ところでダロスの経済力ってどうなの?」
「あまり思わしくありません。なにせ様々な仕組みや、制度がどれも古いままでございます。色々と規制が厳しいようでして、なかなか活発な商取引とは参らぬようです。また貿易に関しましても、様々な障壁を抱えて、四苦八苦しているようでございます」
「それじゃあ、いくら庶民がこうやって一所懸命に働いても、得られる賃金は他国よりも少ないってこと?」
「はい、おっしゃる通りです。経済が活発な国であれば同じように働くことで、多くの賃金を得られますが、ダロスのように停滞した国では少ない賃金しか得られません」
「ダロスは大国のはずなのに。領土がいくら広くても、経済が停滞していたら国民は貧しい思いをするってことか」
「経済力だけではありません。政治力も、そして軍事力もまた同じでございます」
そこでガイウスは突然はたと立ち止まり、眉根を寄せた驚きの顔つきとなって叫んだ。
「もしかして!ダロスって、もはや大国じゃない!?」
ロデムルは、恭しく首を垂れた。
「ご明察にございます」
ガイウスは、思いもかけないダロスの凋落を目の当たりにして、愕然とした表情で立ちすくんだ。
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