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第四十九話 三大国
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「もしもダロスがすでに大国とは呼べないほどに凋落しているとしたら、世界のバランスは崩れているってこと?」
「はい、おっしゃる通りですが、正確に申しますと、崩れかけているというところでございましょう。現在のところはまだぎりぎりのバランスを保って、ローエングリン教皇国、レイダム連合王国、ダロス王国の三カ国による三国鼎立状態といえますが、このままダロスの凋落が続きますと、いずれは……」
「そうだったのか。まったく気付きもしなかったよ」
「ですが、こうやって実際に現地を視察しますと、より理解が深まることかと存じます」
「うん、そうだね。この港で働く人たちの顔つきや、ずいぶんと古びた港湾施設や建物なんかを見ると、確かによく納得できるね」
「経済とは簡単に申せばお金が回る仕組みのことですが、どこかでそれが滞れば、次いで至る所で同じように止まり始め、終いにはまったく回らなくなってしまいます。今、この港の状態はそれに近いのかもしれません」
「あの建物なんか、今にも全体が崩れそうだものね。たぶん作り直すお金はもちろん、修繕するお金すらもないんだろうね」
ガイウスは、彼らの斜め前にある、何階建てなのか不明なほど上部が崩れたレンガ造りの建物を指して言った。
「一応立ち入り禁止のテープが貼ってあるようでございますが、建物が崩れてしまえば、周辺の人たちも怪我をしてしまうと思われます。ですが、恐らくは建物を壊すお金もないのでしょう。危険があると判っていても、無い袖は振れませんので」
「酷いもんだね。これじゃあ確かに大国とは言えないね。ところで僕は行った事ないけど、ローエングリンやレイダムはどうなの?」
「ローエングリンは最強国の名に相応しい威容を誇っていると申せましょう。首都オーディーンのみならず、各地方都市も大変に活気にあふれ、国全体が富み栄えている印象がございます。対するレイダムは比較的若い国であるためか、全体的に進取の気鋭に富み、次々に新しい改革を断行しているといったイメージがございます。ローエングリンのような十全な国家体制という訳ではありませんが、非常に上り調子な印象を受けます」
「レイダムは、ダロスの真逆って感じかな?」
「そうですね。まさにそういった印象です」
「そして我等がヴァレンティン共和国はといえば、三大国の顔色を常に窺いつつ、交易に精を出して荒稼ぎ、といったところかな?」
ロデムルは苦笑しつつ、ガイウスの言葉を認めた。
「ええ、そうですね。大きく間違ってはおりません」
「まあ、しょうがないよね~。領土せまいもんね~。でも、海軍力はあるんでしょ?」
「それは世界屈指でございます」
「不思議だよね。なぜ三大国は、海軍力を高めようとはしなかったんだろう?」
「必要に迫られたのが、陸軍力だったからではないでしょうか?三大国はメリッサ大陸を大きく三分割し、互いに領土を接しております。ですのでまずは陸軍力を、と強めていった結果、海軍力強化については疎かにされた、ということでしょう」
「なるほどね。おかげで世界屈指の海軍力を持つヴァレンティンの対外的発言力が、意外なほどに高まるってわけだから、まあありがたい話だよね」
「国際社会における発言力とは、軍事力に比例します。軍事力なき国家などには、発言権などありませんので」
ロデムルの言葉に、ガイウスは神妙な顔つきで深くうなづいた。
今後自分が成長し、どのような仕事に就くのかは判らないものの、ヴァレンティンに対する愛国心が芽生えてきつつあるガイウスにとっては、ロデムルの言葉はとても重く心に響いた。
「はい、おっしゃる通りですが、正確に申しますと、崩れかけているというところでございましょう。現在のところはまだぎりぎりのバランスを保って、ローエングリン教皇国、レイダム連合王国、ダロス王国の三カ国による三国鼎立状態といえますが、このままダロスの凋落が続きますと、いずれは……」
「そうだったのか。まったく気付きもしなかったよ」
「ですが、こうやって実際に現地を視察しますと、より理解が深まることかと存じます」
「うん、そうだね。この港で働く人たちの顔つきや、ずいぶんと古びた港湾施設や建物なんかを見ると、確かによく納得できるね」
「経済とは簡単に申せばお金が回る仕組みのことですが、どこかでそれが滞れば、次いで至る所で同じように止まり始め、終いにはまったく回らなくなってしまいます。今、この港の状態はそれに近いのかもしれません」
「あの建物なんか、今にも全体が崩れそうだものね。たぶん作り直すお金はもちろん、修繕するお金すらもないんだろうね」
ガイウスは、彼らの斜め前にある、何階建てなのか不明なほど上部が崩れたレンガ造りの建物を指して言った。
「一応立ち入り禁止のテープが貼ってあるようでございますが、建物が崩れてしまえば、周辺の人たちも怪我をしてしまうと思われます。ですが、恐らくは建物を壊すお金もないのでしょう。危険があると判っていても、無い袖は振れませんので」
「酷いもんだね。これじゃあ確かに大国とは言えないね。ところで僕は行った事ないけど、ローエングリンやレイダムはどうなの?」
「ローエングリンは最強国の名に相応しい威容を誇っていると申せましょう。首都オーディーンのみならず、各地方都市も大変に活気にあふれ、国全体が富み栄えている印象がございます。対するレイダムは比較的若い国であるためか、全体的に進取の気鋭に富み、次々に新しい改革を断行しているといったイメージがございます。ローエングリンのような十全な国家体制という訳ではありませんが、非常に上り調子な印象を受けます」
「レイダムは、ダロスの真逆って感じかな?」
「そうですね。まさにそういった印象です」
「そして我等がヴァレンティン共和国はといえば、三大国の顔色を常に窺いつつ、交易に精を出して荒稼ぎ、といったところかな?」
ロデムルは苦笑しつつ、ガイウスの言葉を認めた。
「ええ、そうですね。大きく間違ってはおりません」
「まあ、しょうがないよね~。領土せまいもんね~。でも、海軍力はあるんでしょ?」
「それは世界屈指でございます」
「不思議だよね。なぜ三大国は、海軍力を高めようとはしなかったんだろう?」
「必要に迫られたのが、陸軍力だったからではないでしょうか?三大国はメリッサ大陸を大きく三分割し、互いに領土を接しております。ですのでまずは陸軍力を、と強めていった結果、海軍力強化については疎かにされた、ということでしょう」
「なるほどね。おかげで世界屈指の海軍力を持つヴァレンティンの対外的発言力が、意外なほどに高まるってわけだから、まあありがたい話だよね」
「国際社会における発言力とは、軍事力に比例します。軍事力なき国家などには、発言権などありませんので」
ロデムルの言葉に、ガイウスは神妙な顔つきで深くうなづいた。
今後自分が成長し、どのような仕事に就くのかは判らないものの、ヴァレンティンに対する愛国心が芽生えてきつつあるガイウスにとっては、ロデムルの言葉はとても重く心に響いた。
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