転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第六十五話 プロメテウス

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 均衡は、突如として破られた。

 横合いからガイウスが、猛然とした速度で飛び込んで来たためだ。

 ガイウスはグラシャ=ラボラスを射程圏内に捉えると、すぐさまブレーキをかけて中空で立ち止まり、カルラ同様に自らの眼前で両手を合わせて合掌した。

 するとグラシャ=ラボラスを包み込む暗黒の楕円が、さらに猫の目のように縦長に大きくひしゃげ始めた。

 グラシャ=ラボラスはさらに苦しげに悲鳴を上げて、必死にもがき始めた。

 だが暗黒の楕円は、万力で締め上げるかの如く、ゆっくりとだが確実に形を変えていった。

 楕円は徐々にその形を薄くしていき、ついにグラシャ=ラボラスは断末魔の声を上げ始める。

 どこまでも甲高いグラシャ=ラボラスの叫び声が、地下貯水場に響き渡った。

 ガイウスたちはこれで最後、とばかりに合掌する手に力を込めた。

 すると突然、ゴムが弾ける時のような音が響き渡ったと同時に、楕円は一気に線となった。

 そして線は緩やかにその色を薄くし、次第に虚空へと消え失せた。

「ぶっ!ふうっ~~~」

 カルラは長い時間に渡って全身に込め続けていた力を、一息に抜いた。

 ガイウスもまた同様に、力を抜いてホッと一息ついた。

「まさかグラシャ=ラボラスみたいな上級悪魔を呼び出すなんて、あのシグナスという男、あなたの兄弟弟子だと言っていましたけど?」

 ガイウスの問いに、カルラは何度も深呼吸をして息を整えてから答えた。

「確かに兄弟弟子だね。だがその前に言っておくが、あれはグラシャ=ラボラス本体ではないぞ」

「どういう意味です?」

「本体は地獄の底に今もいるってことさ。中級以下と違って上級ともなると、力が強すぎるあまり、そうは簡単に地上へとお出ましにはなれないのさ。だからさっきの奴は分身みたいなものさね。その証拠にあいつ、喋らなかったろう?」

「確かに、動物みたいな叫び声は上げていたけど、喋ったりはしていなかったか」

「所詮分身に過ぎないからね。喋れないのさ」

「分身であれっていうことは、本体なら――」

「あたしら二人じゃ勝ち目なんてないね。上級悪魔ってのは、中級以下とは次元が違うんだ。それもグラシャ=ラボラスなんて、アスタロト同様最上級クラスだからね。ひとたまりもないさ」

「なるほどね。ではグラシャ=ラボラスのことはいいとして、シグナスの方はどうなんです?」

 ガイウスはそこで肝心な話の方に切り替えた。

「どうもこうもないさ。さっき言ったとおりの兄弟弟子さ。かつては共に机を並べて魔法を学んだ仲さ」

「誰の元で学んだんですか?」

 ガイウスの間を溜めた言い方に、カルラは眉をひそめた。

「何が言いたいんだい?」

「シグナスが言っていましたよ?偽書を作ったのは自分たちの師匠だと」

 ガイウスは、単刀直入にカルラに切り込んだ。

 カルラは眉根を寄せてガイウスを軽く睨みつけた後、鼻を一つ鳴らした。

「ふん!おしゃべりな奴だね、まったく。だがまあいいさ。その通り、偽書を作成したのはあたしらの師匠の、プロメテウスさ」
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